東京女子医大病院「特定機能病院取り消し」への雑感。



東京女子医大病院が「特定機能病院」の指定を取り消されるそうです。
僕自身は東京女子医大に行ったことは一度もないのだけれど、実際に女子医大で研修した人の話は聞いたことがあるんです。

研修医にとっては、非常にハードな職場。外科なら、週に一回家に帰れればラッキー、内科でも、夜遅くまでの病棟の仕事と真夜中からの文献調べやカンファレンスの準備。
それでも(まあ、そういう環境が「職場」として適切かどうかの議論はおいといて)、研修医にとっては、すごく勉強になるし、力がつく場であることは間違いない。そこでは、最先端の医療が行われており、若手は、みんな技術や知識を身につけるために頑張っているとのこと。
まあ、女子医大という特殊性のため、学生や研修医と指導医が仲良くなっちゃったりしやすいというような話も、たまに耳にはしたのですが。

ちなみに「特定機能病院」とは(以下、読売新聞のサイトから引用させていただきました)

【1992年の医療法改正で制度化され、高度医療の提供、開発を担う病院と位置づけられている。現在、全国の大学病院など82病院が厚生労働相の承認を受けている。

 承認要件は、500以上の病床や10以上の診療科があり、医師や看護師の人員配置が一般病院より多いことなど。無菌の病室など設備面の整備も求められる。その一方で、入院診療料などで一般病院より加算を受けられるという診療報酬上のメリットがある。

 安全管理体制に問題が生じた場合には、厚労省の社会保障審議会医療分科会が承認の是非を検討することになっている。99年に患者取り違えを起こした横浜市立大医学部付属病院以降、今回の東京女子医大病院まで7病院が審議対象となっている。】

ということです。

 要するに、設備やスタッフ、研究の成果が求められる代わりに、診療報酬や研究費といった点において、他の病院より優遇されるということなのです。
裏を返せば、今回の「特定機能病院の指定取り消し」によって、病院の診療報酬は同じ治療内容でも(たぶん2〜3割程度、報道によると月額約2700万円)減ってしまい、研究費も大幅な削減は避けられない。

 そして、最先端の医療をやる病院としてみとめられなくなれば、そこで勉強しようという若い医者も激減する可能性が高いです。
いまや、国公立の病院といっても赤字体質は赦されないし、ましてや競争の激しい都会、今後の女子医大は、経営的にも厳しくなっていくことでしょう。つぶれることはないとは思いますが…

 経済的な理由から人員削減が行われることになれば(自発的に辞める人もかなり出てくるはず)、残っている人たちの負担増は避けられず。今後、またミスが出てくるかもしれません。
  いっそのこと、そんな悪い病院、つぶしてしまえ!というご意見もおありでしょうが、あの病院で身を粉にして働いている同業者たちのことを思うと、なんだかとても辛いです。

 「悪い医者」は確かにいましたし、彼らは厳しく断罪されるべきです。
 でも、今回のことで「悪い病院」と後ろ指をさされ続けるのは、今回のミスとはまったく関係のない身を削って働いているスタッフたちの気持ちを考えると、同業者としていたたまれない気がします。

 ああ、もし自分が女子医大のスタッフだったとしたら、面識もない他の科の先生の悪事でこんな目にあったら、とてつもなくやりきれないだろうなあ。