抗がん剤「イレッサ」の副作用を恐れる国、効果を尊重する国


共同通信の記事より。

【米食品医薬品局(FDA)は5日、日本で200人以上の副作用死が出た肺がん新薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の米国内での使用を承認したと発表した。
 FDAは「216人を対象にした臨床試験で、がんを縮小させる効果が認められた」として、化学療法の効果がない、進行した非小細胞肺がん患者へのイレッサの使用を認めた。
 イレッサは日本のほか、オーストラリアでも最近承認されており、使用が認められたのは3カ国目。
 当初は昨年秋にも承認の見通しだったが、日本で間質性肺炎の死者が多数報告されたため、FDAは審査期間を約3カ月延長し、日本の事例や米国内での臨床試験結果を検討。「肺炎の発生率は日本の2%に対し、米国では0・3%。このうちほぼ3分の1が死亡したが、この副作用はイレッサの使用によって得られる効果を上回るものではない」と結論付けた。】

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 抗がん剤「イレッサ」の副作用としての間質性肺炎は、医療業界では常識になっています。一時期の日本国内の報道では使用禁止になるのではないかと言われていたくらいですから、このアメリカでの新規採用には、けっこう驚きました。 

 この「イレッサ」という薬(一般名ゲフィチニブ)は、進行した肺がん患者216人を対象とした臨床試験で、腫瘍(しゅよう)が1カ月以上にわたって50%以下に縮小する患者が約10%いたことから、FDAの抗がん剤諮問委員会は昨年9月、承認を勧告したということです。
 ちなみに、標準的な肺がん治療薬とイレッサとの併用については、「臨床試験で効果がないことが確かめられた」として、単剤投与を求めているそうです。

 もともと「イレッサ」という薬は、手術もできない、抗がん剤による化学療法、放射線療法も効果がないとされてきた、かなり進行した肺がんに対して「効くこともある」とされてきた薬でした。

 もちろん、そのほかの抗がん剤による治療もあるのですが、イレッサという薬の特徴は、「使用する回数・副作用が一般的な抗がん剤に比べて少なく、外来での治療も可能」ということでした。

 末期の癌の治療が外来で可能で、患者さんにとっては自宅で過ごせる(もちろん、最終的には入院が必要な状態がやってくるとしても)というのは、薬の効果とともに大きなメリットだったのです。

 でも、今回の間質性肺炎という副作用の報告のために、日本では使用することに慎重になっているところなのですが。

 

 今回の報道を聞いて、僕が驚いたのは、「この薬には副作用があっても、メリットのほうが上回る(場合も多い)という理由で、アメリカで承認されたことです。

 たしかに、日本でも、末期の癌の患者さんであれば、副作用の可能性があっても、自宅で過ごせるというメリットがあれば…と思った医者も多かったのではないかと思うのですが、現実にはそれを大声で言いにくいところもある。

 アメリカという国では、それをメリット、デメリットでドライに判断して採用するんだなあ、ということに、僕はちょっと感動したのです。

 「選択肢は、多いほうがいいじゃないか」という徹底した合理主義。

 もちろん、用法は限定されてはいるし、日本での臨床成績に比べてアメリカ国内では間質性肺炎の発症率は低いという要素もあるのですが。

 

 ちなみに、「厚生労働省によると、4月22日時点で、イレッサは日本で約2万8300人の患者に使用され、間質性肺炎などの副作用が616例発生、246例が死亡している」(毎日新聞)ということです。ただ、これは使用している患者さんが末期がんの方であるということを考慮に入れないといけないけれど。