if〜もしあなたが、お医者さまの妻になったら…(リアルバージョン)


12月6日放映分の「if〜もしあなたが、お医者さまの妻になったら…」を観て
(参考リンク:「if」の番組ホームページ

 ああ、この番組を観ていて、僕もお医者さんと結婚したくなりましたよ全く。
 30代で年収4000万とか2000万ですか、そうですか。
 患者さんからは感謝の手紙がたくさんですか、そうですか。
 江戸時代から続く医者の家系ですか、へぇ〜、ポルシェにアルファロメオ?
 33歳で法医学に病理学?
 普段着はブランドもののオーダーメイド?
 ゴールドカードで買い物し放題?

 お医者さまと結婚して良かったと思う妻の割合・16/16!

 えーっと、この番組には、根本的な誤りがあります。
 タイトルを「もしあなたが(ごくひと握りのものすごくリッチな)お医者さまの妻になったら…」に変えてください。
 ハッキリ言おう、こんなヤツらは、少なくとも僕の周りにはほとんどいない!
 確かに、この番組に出ているような「開業医の御曹司」というドクターはいます。ただね、ごくごく一部ですよ。
 それに、医者の妻だから幸せ、なんてことはないです、絶対に。

 他の職種より収入が多い、と思われるかもしれませんが、開業医は銀行に借金がたくさんあったりするのが当然ですし。本当に使えるお金はそんなにたくさんはないですよ。満足率100%というのも、バカバカしい話で、明日にも離婚しそうな妻が、こんなアンケートに答えるはずもないわけで。

 それに、医者というのはサービス業ですから、勤務医ならともかく(それでも、田舎だと厳しい)開業医の妻というのは近所づきあいも大変です。そんなに実入りが良くないにもかかわらず、見栄だけは張らないといけません。医者の奥様どうしの付き合いもけっこう厳しいですよ。ブランド物に身を固めているのは、「そうしないと周りにバカにされる」という悲しい現実の裏返しでもあるのです。
 患者さんからは感謝の手紙ばかりが来ればいいのですが、クレームの電話もありますし、夜中でも診察依頼の電話や病棟からの連絡がかかってくることもあります。
 僕の知り合いの先生は、「ポケベルの音で子供が起きると大変だから、いつも離れた部屋でひとりで寝ている」そうです。
 感謝されることも多い一方、恨みをかうことも多い仕事でもありますし。
 事あるごとに「あなたの家はお医者さまだから…」なんて言われて嬉しいのは最初だけです。
 そういう「旧くからの医者の家系」なんてのは、親戚なんかも、ことあるごとに「うちは代々医者の家系で…」なんて言い出す人が多いようです。そういうのに慣れていない人は、とても辛い環境みたいですよ。

 勤務医だったらいいかというと、夫は仕事仕事で家庭を顧みず、夜も当直で家を空けることも多い(しかも、本当に当直しているかなんて、わかりませんから)のです。患者さんにとって「いい医者」であればあるほど、家族にとっては「良い家庭人」でいることが難しいという矛盾。
 それに、こう言ってはなんですが、「33歳で法医学、病理学を…」なんて聞いたら、「それって、ちょっと腰かけで研究生かなんかでいたくらいなんじゃないの?」とか思いますしね。少なくとも、そのくらいの経験で「専門家」みたいに言うのはおこがましいのではないかなあ。テレビ的な演出なんでしょうけど。

 まあ、ひらたく言えば、「医者だからといって、いろんな人がいるし、表面上の条件の良さにばかり騙されてはいけませんよ」ということなのです。
 自分のことを「条件がいい」なんて思っている人間と結婚とかすると、大変みたいですよ本当に。

 などと、31歳(もうすぐ32)、年収300〜400万くらい、趣味インターネット、イケメンからは程遠い、先祖代々の医者でもなく、臨床から離れて研究生をやっている僕は思うのです。
 結婚に必要なのは、条件ばかりじゃなくて、やっぱりお互いの愛情と信頼なのではないかなあ。逆に、条件だけなら、「お医者さまの妻」なんて、やってられないと思う。
 だいたい、僕の知っている「普通の医者」たちは、みんな「普通の家庭」を持っていますよ。夫婦喧嘩もすれば、将来のためにと節約するように、きつく奥さんに言われたりもしているのです。

 まあ、「医者狙い」とかなら、くれぐれも、僕のような条件の悪い「お医者さま」にひっかからないように気をつけてくださいね!
 ほんと、同じ「お医者さま」でもピンキリだからさ。