第15夜 ハイパーオリンピックの夏。

 先日、「炎のランナー」という映画を観ていたら、このテーマ曲、どこかで聴いたことがあるなあ、という気がした。よく考えてみたら、「ハイパーオリンピック」に使われてたんですね。というか、ハイパーオリンピックが使ってたんだけど。

このゲームがゲームセンターにデビューしたときには、僕は中学生だったのだが、ゲームセンターは不良の巣窟!というレッテルが貼られていて、ちょっとデパートの屋上で遊んでもいようものなら、キミ、どこの学校?という歪んだ正義感に燃えた指導員のおばちゃんが、近づいてくるような状況だった。というわけで、アーケード時代はほとんど遊べなかったのだが、ファミコン版がハイパーショットという3つボタンの専用コントローラーとともに発売されるとロス五輪でのカール・ルイスの活躍での陸上競技ブームもあって、うちの中学校でも大ブレイク。
クラスでは当時、机の端からせり出した定規の端を指ではじいて、ビヨヨーン、ビヨヨーンと振動させるというのが流行っていた。これが、いちばん早くボタンを叩ける方法と言われていたのだ。休み時間は(あるいは授業中も)ビヨヨーン、ビヨヨーン。ちなみに、鉄の定規のほうがいいタイムが出せるという説もあり、そちらを愛用しているものもいた。
家庭用では、定規が使いにくかったため、まず、指が腫れ、コスリで指の爪が削れ、安い黒ボールペンの末端の部分でカスだらけになった。
二階でやっていたので、ウチの親は、ネズミが暴れているんだと思っていたらしい。
しかし、その記録へのあくなき執念も、「ジョイボール打法」にて終焉してしまった。
これは、当時ハル研から出ていた「ジョイボール」というジョイスティックのスティックがボール状になっているコントローラーの連射機能をつかったもので、ただボタンを押しっぱなしにしているだけで、100メートル7秒台とか、驚異的なタイムが叩き出せるというものであった。
リアルなタイムが出るのが売りのこのゲームで、この攻略法の存在は、なんとなく興をそぐものであった。
と同時に、やっぱり人間の努力はドーピングにはかなわない、という教訓を子供心に植え付けられたものでした…

それにしても、よくうちにあったもんだ、ジョイボール。