第90夜 永遠のお辞儀野郎!「カラテカ」


 1985年、まだ対戦格闘ゲームもそんなに流行していなかった頃、
ファミコンで発売された対戦(?)格闘ゲームが、この「カラテカ」です。
 確か、海外ゲームの移植だったという記憶があるのですが。
 主人公のカラテカは、さらわれたマリコ姫を救出するために
己の肉体と技を駆使して闘うのですが、技は上・中・下段の突きと蹴りのみ。
ジャンプなどもできません。格闘中の移動も、すり足。

 このゲーム、最初の画面は、波(らしい)音が聞こえる岸壁から
スタートするのですが、そこで十字キーを右に入れると
主人公は崖から落ちて即死するという裏技(?)がありました。
この即死パターンは、人生の虚しさを僕たちに教えてくれます。
 そして、もうひとつ個性的なのが、
このゲームが武道の「礼」を大切にしていること。

 敵は悪い人たちなのに、一定の間合いで「お辞儀ボタン」を押すと、
カラテカと敵はゆっくりと一礼します。
 しかも、それ以上近づかないかぎり、お辞儀ボタンを押すと、
向かい合って一礼、の繰り返し。
その気になれば、マリコ姫のことは放っておいて、
永遠に頭を下げあっていることもできるのです。
さすがに、鷹はお辞儀してはくれませんが。
 
 このゲームの難関として、敵の基地の途中で出てくる「柵」がありました。
 この柵は、カラテカが通りすぎようとすると落ちてきて、
歴戦のつわものであるはずのカラテカは、柵にはさまれて即死してしまいます。
 ギリギリのところまでゆっくり近づいて、
目の前で柵が落ちて上がってくる間に通りぬけるというテクニックが必要。

 しかしながら、当時のゲームですから、
セーブや直前のステージからのコンティニューがあるわけでもなく、
苦労して敵の基地までたどり着いても、柵にはさまれたら最初から。
 情けなくて泣けてきます。
 迂回しろよ!と何度画面に向かって叫んだことか。

 しかし、このシンプルかつ理不尽なゲーム、
結局クリアするまでやったのですから、
意外とやめられない魅力があったような気もするのです。
 あのデロレロデロレロ…というおどろおどろしいBGMも、
なんとなく記憶に残ってますし。
 名曲だったからじゃなくて、あまりにワンパターンだったからかもしれないけど。

 それにしても、お辞儀なんかしてる場合じゃないだろ!
とかアメリカ人は思わなかったのかな…