第125夜 ビアンカとフローラの12年間の葛藤!「ドラゴンクエスト5」


 僕が最初に「ドラゴンクエスト5」をやったのは、大学生の頃でした。
 スーパーファミコンになって最初の「ドラゴンクエスト」で、
キャラクターが大きくなり、グラフィックも美しくなった最新作をワクワクしながら
プレイしたものです。
 当時20歳くらいだった僕にとっては、「結婚」というテーマは
今ひとつ非現実的なような、それでいて甘酸っぱいような印象ではありましたが。
 記憶を辿ってみると、当時は、「せっかくのスーパーファミコンなのに、
『ファイナルファンタジー』に比べてグラフィックはかわりばえしないなあ、
なんて内心感じてもいたんですけどね。

 「ドラゴンクエスト5」は、まぎれもなく「家族」の物語です。
 主人公は最初は「パパス」という強い父親に守られた無力な子供として
登場するのですが、敵の謀略で父親を失い、辛い日々を過ごした後に
ようやく自由の身となり、最愛の伴侶を得てやっと幸せに…と思ったとたんに
今度はまた家族と引き裂かれ…という、山あり谷ありというよりは、
断崖絶壁だらけの人生。
 ゲームをやっている最中に考えてみたのですが、この主人公のゲーム中で語られる半生のうち、
幸せな時間というのは、子供の頃と解放されてからのわずかな日々だけだったような気がします。

 ところで、「ドラクエ5」といえば、まず思い浮かぶのは「結婚イベント」。
 幼なじみの美しいビアンカと、清楚で貞淑な(ほんとはこの娘、
ものすごく気が強いんじゃないか、と思われるようなエピソードもありますけど)フローラ。
 今回PS2版をあらためてやってみて気がついたのは、
あれだけ「幼なじみで昔から結びつきが強かった」という記憶があったビアンカは、
子供の頃にちょっとだけ一緒にお化け屋敷を冒険したことしかなくて、
子供の頃はほとんど接点がなかったような印象があったフローラが、
けっこう要所要所で登場していることでした。
 遊びながら、「これなら、フローラを選んでもいいんじゃないかな…」なんて考えてみたり。
 おそらく、これが現実であれば、オーディエンスの70%くらいは
フローラと結婚すると思うのですが、ゲーム内では大部分の人がビアンカ派のようです。
 もちろん僕もそうなのですが。
 あの結婚相手を決める前の夜に、「私のことは心配しないで、
フローラさんと結婚しなさい」というビアンカを捨てるようなヤツは、人間失格だぜ、
とすら思います。
 ただし、僕の周りの女性には、「あれは、ビアンカの捨て身の戦略」
という意見があったのも事実です。
 むしろ、何も言わずにぐっすり眠っているフローラのほうがピュアなんじゃない?って。
 まあ、どちらにしても「贅沢な悩み」には違いありませんけど。
 優柔不断な僕だったら、そんな選択肢をつきつけられたら、
どっちも選べずに2人とも逃げられてしまいそう。

 そして、このゲームには、「時間の経過」とか「世代交代」というテーマが込められています。
 HPがちょっと減ったくらいでホイミをかけてくれるパパスに対して、
最初は「お父さんありがとう」という気持ちでいっぱいだったのですが、
次第に「そんなにいちいちホイミかけなくても死なないって!テンポ悪くなるんだよなあ」
とうざったく感じるようになり、今度は自分が子供の親になってみると、
まだHPが低い子供たちに、ついついホイミをかけたくなるんですよね。
「ここで1ポイント差で死んだら大変だ」とか考えてしまって。
 まさに「子を持って知る親心」ってやつなのでしょう。

 仲間にできるモンスターも個性的。でも僕は最初のころ、
「成長限界」があるっていうことを知らなくて、一生懸命エビルアップルとかを育てていたのですが
「途中で『もうここまで』と言われたときには、本当に哀しくなりました。
メタルスライムは、結局最後までパーティのダメージを吸収し続けてがんばってくれたのですが。

 あと、戦闘シーンも静止画では目立ちませんが、ものすごく進化しています。
 なんといっても、すごくテンポが良くて、「かいしんの一撃」で敵が吹っ飛んでいくのも気持ちいい。
 そして、自分のレベルが上がっていくと、
ギガデイン+イオナズン+メラミの連続攻撃で、モンスターがあっという間に全滅、
という爽快感も味わえます。
 いままでのシリーズでは、呪文もひとつ終わったら、また次の呪文が表示されて…
という感じだったのだけれど、この「5」での、
いくつかの呪文が立て続けに画面を埋め尽くす光景は、まさに「強い!」という感じで。

 やや理不尽な謎解きもありますが(というか、「天空のよろい」は、今回も見つかりませんでした)、
「ドラゴンクエスト5」は、本当に名作です。12年前のゲームなのですが、
初めての人は新鮮な気持ちで遊べますし、12年ぶりの人は、
12年経って変わった自分と変わらない自分を発見できるのだから。

【ドラゴンクエスト5雑感(ネタバレ)】
(1) 僕の中では、最大の敵はゲマだったので、ミルドラースに対しては
「で、君は誰?」って感じでした。
(2) 結局、モンスターを仲間にできても、最後のほうはあんまり出番がなかったなあ。
(3) ビアンカと結婚したあとのフローラの割り切りっぷりにはムカつくし、
フローラと結婚したあとのビアンカは、あまりにかわいそう。
 「誰かの願いが叶うとき」だな。
(4) しかし、ドレイ10年、王様1日、石8年、浮き沈みの激しい人生だ
(というか、ほとんど沈んでる)
(5) 12年経ったけど、妖精の村も天空のよろいも見つからなかったよ。
(6) やっぱり、操作性の良さっていうのはすごく大事。
(7) 「いつか必要なときのために」取っておいて、結局いつも使えない世界樹の葉
(8) 小さなメダルの発見というのは、「そんなに大事じゃないけど、
プレイヤーをがっかりさせない宝箱」の開発にとって革命的だと思う。
(9) それにしても、この12年間に「6」と「7」しか出ていないわけか…
オリンピックよりも出ないドラクエシリーズ…