第168夜 オンラインゲーム挫折体験記「ダービーオーナーズクラブ・オンライン」


参考リンク:「ダービーオーナーズクラブ・オンライン」公式サイト

 僕はいままでオンラインゲームというものをやったことはなかったのですけど(ゲームセンターでも、対戦格闘ゲームで知らない人がやっているところに「乱入」することすら怖くてできなかったし)、新しいパソコンを買ったのと、引越しによってネット環境が改善されたため、ついに、オンラインゲームデビューすることにしたのです。しかし、いろいろ調べてみたら、多くのオンラインゲームというのはグラフィックボードとかの制約がけっこう厳しいのですね。あやうく、「オンラインゲームにはついていけないデスクトップ機」を買ってしまうところでした。

そして、僕にとっては、初のオンラインゲームが、この「ダービーオーナーズクラブ・オンライン(DOCO)」だったのです。

もともと競馬ゲーム好きで、ゲームセンターで遊んだこともあるセガの競馬ゲームのオンライン版ということで、グラフィックも綺麗で、始まってそれほど時間が経っているわけでもなかったので、「まずはこれ!目指すはオンライン競馬界のモハメド殿下だ!」などと思いつつゲームスタート。このゲームでは、まず最初に一頭の馬と自分のキャラクターで世界に放り出されるわけなのですが、まず、収入を得るために、2種類の「ジョブ」を選ぶことになります。僕は「釣り師」と「料理人」というかなりベタなパターンを選んだのですが、とにかく最初は波乱の船出でした。

自分と馬のあいだには「愛情度」というのがあるのですけど、それを上げる方法がわからずに四苦八苦。「虫が邪魔なようです」とか「蹄の汚れが気になるようです」なんていうメッセージの場合、だいたいの対処法はわかるのですが、「なんだかそわそわしています」なんていう曖昧な「悩み」なんて、なかなかわかりません。おまけに嫌いな食べものをあげてしまうと蹴飛ばされるし、最後には愛情度ゼロになって、馬に乗せてもらうことすらできなくて、泣きながら馬を引いて広いマップの端から端まで移動するような羽目になってしまいました。あの頃の僕を見て、周りの人たちは、「あっ、初心者!」と、さぞかし嬉しかったに違いありません。

そして、最初の頃の馬ではレースにそんなに勝てるわけもありませんから、とにかく延々と「ジョブ」にいそしむことになります。「ジョブ」って言っても、「釣り師」の仕事というのはただひたすら川の前でマウスのボタンをクリックし続けるという、地味なこと極まりないもので(そして、他のジョブでも、同じようなもの)、時々レアなものが釣れたりもするのですが、まあ、率直に言うと「めんどくさくて、ヒマ」なんですよね。それでもそうやって地道にお金を稼いだほうが、レースをやるよりはるかに高収入だったりするんだよなあ。

まあ、そうこうしてお金をためて馬を買ったり種付けをしたりして、調教を積んでレースに出すのですが、これがまた自分の馬が泣きたいほど弱いのです。いや、正確に言うと、他の人の馬が強すぎ!新馬戦(初めて出走する馬だけのレース)に出すときなどは、「頼むから、人間プレーヤーは参加してこないでくれ…」と祈るような気持ちでした。でも、そんなときにかぎって、締切時間直前になって、「よろしくー」とか言いながら、強豪馬が参戦してくるのです。そして、このパドックでの「よろしくー」とか、レース後の「おめでとう」とかの挨拶も、負け続けてくると、まるで接待ゴルフのような気分になって、どんどん嫌になってきます。おまけに、平日はせいぜい数時間、週末もゲーム漬けというわけにはいかない僕にとっては、少々頑張ったところで、G1レースを勝っているようなプレイヤーたちには到底歯が立たず、仲間を作ろうにも、どうやって声をかけていいのかわからず、なんだかずっとひとりでディスプレイの前で、「またお前か!」とか、嘆くばかりの日々でした。それでも、1ヵ月くらいは、けっこう一生懸命やっていたんですよね。お金が勿体ないってこともあって。

しかし、やればやるほど、オンラインゲームというのは時間があるほうが有利で、仲間がいないと楽しくもなんともない、ということがわかってきました。そして、馬の成績が頭打ちになってきたこともあり、僕はいつのまにかDOCOから離れていきました。

もちろん、やっていて「楽しい」と思うところもあったから1ヵ月も続けていたのですけど、離れてみると、淋しくなったというよりむしろ、「呪縛から解放された」ような気がします。いや、中途半端な時間と気合がなくて、コミュニケーション好きでもない人間にとっては、向かないよオンラインゲームって。やればやるほど、上級プレイヤーに搾取されているような気分になってくるものなあ。結局そこは、「もうひとつの現実」でしかないわけで。

僕にとっては、オンラインゲームよりも、スタンドアローンのRPGとかのほうが、はるかに向いているみたいです。このゲームにハマる人がいるっていうのもよくわかるんだけど、僕にとっては、「負けるためにやらされてる」感が強いのですよね結局。「モノポリー」の最後のほうで、破産させられるためだけにプレーを続けているような、そんな世界。

他に面白いオンラインゲームもあるのかもしれませんが(ちなみに、「エバークエスト2」は、2週間で挫折)、僕にはどうも、向いていないゲームみたいです。

「ゲームの進化系が、オンラインゲームだ」みたいな論調も一時はあったみたいですが、もともと「ひとりで遊べるところ」がコンピューターゲームの革命的なところだったのだし、オンラインゲームはオンラインゲームとして、これからも独自の進化を続けていくことになるのでしょうね。いつか、僕にも楽しめるようなオンラインゲームができるときが、来るのだろうか……