第99夜 これは「ゲーム」じゃなくて「ロマン」なの!「電車でGO!」
はじめてこのゲームを見たときの衝撃は、忘れられません。
男だったら(いや、男に限らないのかもしれないけど)、「大きな乗り物を自分で動かしてみたい」と思ったことが一度はあるのではないでしょうか?
それまでも、フライトシミュレーター(飛行機の操縦席を再現)は世にたくさん出ていて、「自由に空を飛びまわりたい」という欲望をかなえてくれたのですが(もっとも、難しすぎて何をやったらわからない、というマニア向けのものも多かった)、自動車とバイク、飛行機以外の乗り物は、ほとんど取り上げられていなかったのが実情なのです。
この「電車でGO!」は、電車の運転席がかなり忠実に再現されており、加速は「マスコン(マスターコントローラー)」と呼ばれるレバーをまわすことによって行われ、ブレーキレバーで減速できます。基本的にはスピードの調節と駅に停車するときのブレーキのタイミングだけのゲームなのですが、しかしまあ、車以上に電車は急に止まれないので、この運転というヤツが簡単そうに見えて大変。
このゲームを嬉々として僕がやっていると、女の子は必ず「このゲームって、どこが面白いの?」と聞いてきたものです。
「だって、駅から駅まで神経使ってスピードの調節しているだけで好きに運転できないし、制約ばっかり多いし、全然楽しくなさそう」って。
そうなんですよね。このゲーム、「いかにダイヤを守って運転するか」「いかに駅の停止線にピッタリのところで停まるか」など、プレイヤーの自由度は、かぎりなく低い。
ちょっとしたことで、すぐ減点になってゲームオーバー。
でも、僕はあのマスコンを握って、運転席の前を流れていく街の風景を眺めたり、踏切の音を聴いているだけで、けっこう幸せだったのです。
「電車でGO!」はけっこう難しくて、なかなかうまくいかなかったけど、逆に、その難しさがこのゲームの説得力だったような気もするんですよね。
電車の運転手っていうのは、大変なんだなあ、って。
たぶん、このゲームのおかげで運転士への尊敬度は、圧倒的に上がったと思います(一部では、本物の電車の運転は、今はかなりコンピューターで制御されていて、こんなに難しくないという話もありましたけど)。
結局、「電車でGO!」専用コントローラまで買ってプレステでもやりました。
他の用途に使えないことに関しては、X68000の「アフターバーナー」専用の「サイバースティックと双璧って感じですが。
そういえば、「キーボードマニア専用コントローラー」ってのも凄かったなあ。
このシリーズ、続編が続々と出ましたが、やっぱり第一作に尽きると思います。
「時間通りに来て当たり前」の乗り物なのにねえ。
ちなみに、開発時には「地味すぎる」ということで周囲は否定的で、開発者ですら「こんなにヒットするとは思っていなかった」そうですよ。