『ブラックジャックによろしく』第6巻感想



 ドラマは一応終わってしまった「ブラックジャックによろしく」だが、モーニングでは絶好調連載中。で、今回はマンガ版の6巻「ガン医療篇2」が出た。コンビニ(僕が行ったのはセブンイレブン)に積み上げてあったくらいだから、売れているんだろうな、と思う。僕も時流に乗り遅れまいと読んでみたわけでです。

 で、感想(以下ネタバレあり)。

 混合医療ができないところとか、抗がん剤の効果が、基本的に「延命治療」でしかない、というところとか。抗がん剤による治療はキツイ(ように見える、だって僕だって抗がん剤を使われたことはないから)し、必ずしも効果があるとは限らない。
 でも、効果があったとしても、癌を根治できるわけではない。
 医者なら誰でも、この治療に意味はあるのか?と考えたことはあるはずだ。

 僕だって、あの抗がん剤の真っ赤な注射をしたり、青色の点滴をつないだりするとき、効いてくれと願いつつも、無力感にさいなまれるのだ。

 前に実習で回ってきた学生に「その治療に意味はあるんですか?」と問われたことがある。正直、かなりムカついた。僕に聞かないでくれ、って感じだ。
 お前は傍観者じゃないか!と言いたくなった。
 結局、今の僕たちには、他の選択肢はない。

 なんとかできませんか?と問われたら、少しでも可能性のある方法を模索してみたくなるではないか。何もしない、というのは、すごく辛い。家族も辛い(ただし、高齢者の場合は、周りも「寿命でしょう」という結論に至ることもある)、そして、本人も辛い、と思う。

 実際、延命できる時間と副作用に苦しむ時間を考えると、抗がん剤は使わずに鎮痛剤をたくさん使ったほうが、いいのかもしれない。

 ただし、これは書いておかなくてはいけないけれど、抗がん剤は必ずしも無力ではない。
 癌の種類、部位によっては、劇的な効果をもたらす場合だってあるのだ。
 ツール・ド・フランス総合5連覇に向けてひた走っている自転車のランス・アームストロングは、‘96年に睾丸癌の診断を受けて、その時点で肺や脳への転移もみられていた。
 しかし、彼は抗がん剤治療に耐え抜いて、その上プロスポーツ選手として奇跡的な復活をとげた。
 たぶん、抗がん剤がなければ、彼は死んでいただろう。

 もちろん、抗がん剤の効きやすい癌、効きにくい癌というのは、ある程度データがある。
 でも、実際は、少なくとも一般的に使われている抗がん剤には、どんなに抗がん剤が効きにくい癌にも「劇的に効いた症例」というのが存在するのだ。確率的には非常に低いとしても。
 僕たちは、その「すばらしく効いた例」を頼りに、その迷宮に迷い込む、というわけだ。

 このマンガの中にも書いてあったけど、抗がん剤というのは、正常な細胞まで攻撃してしまう。しかし、正常な細胞は絶対に攻撃しないという薬を作ろうとすれば、残念ながらがん細胞をたくさん生き延びさせてしまうことになるだろうし。

 まあ、この「がん治療篇」については、このシリーズが終わってから、またあらためて書きたい。マンガの最初にも「衝撃的な情報が多々含まれますが、どうか、がん編の最後までお読みになってご判断ください」って書いてあるしね。

 でも、斉藤みたいな研修医もいないけど、皆川さんみたいな看護師だっていないよなあ、と思うんだけど。「泊まってっても、いい?」なんて言われたことないよボクは。

 ところで、前に「ブラックジャックによろしく」は、斉藤先生は狂言回しで、本当は、彼をときには助け、ときには彼に責められる、「普通の医者たち」が主人公の物語だと書いたけれど、どうも最近のこのマンガ、極端なキャラばっかりで、ちょっと引いてしまうような気がするのですが。

 それにしても、最近つくづく思う。

 人間はみんな、余命何ヶ月という現実をつきつけられると、「あと何ヶ月かを大切に生きよう」と感じるものだ。でも、今の僕のように無為に過ごしている時間にも、きっと同じ価値を持たせることができるはずだ。
 頭では理解しているつもりでも、現実には、時間をムダに過ごしているばかり。
 僕は本当に弱い人間だなあ、と悲しく、寂しくなることばかりだ。
 自分に言い訳することばっかり、上手くなってしまったような気がする。。

 関係ないこと書いて、ゴメン。