第166夜 戦慄の冷戦ゲーム!「バランス・オブ・パワー」
参考リンク:「バランス・オブ・パワー」(MSX2版)
このゲーム、今から20年前の1986年にマッキントッシュで発売されているのですが、これを当時のゲーム雑誌の海外ゲーム紹介コーナーで初めて見たときには、かなりの衝撃を受けたものでした。このシミュレーションゲームのテーマはなんと、「冷戦下の米ソの対立」で、【世界情勢の流れを読みながら、如何に大統領(または書記長)として、核戦争を避けながら、思想的領土を拡張していく】という「ゲーム」なのです。いやほんと、こんなゲーム作っていいのか?と中学生くらいだった僕はかなり驚愕してしまいました。ゲームの中で、どこかの国に紛争が起こったりして、介入すると、相手国からクレームが来ます。それでも介入すれば、紛争へと発展。最終的にはどちらかが降りるか、核戦争で世界が破滅するかというゲームなのですが、これがまたうまくできていて、要するに「ある程度相手の要求に対して突っ張らなければ『威信値』というポイントを得ることができないけれども、ひたすら突っ張り続けると核戦争が勃発してゲームオーバー、しかしながら、この紛争でお互いが引かないまま対立が深まっていくと、その紛争による『威信値』が大きくなっていくのです。要するに、「お互いに意地の張り合いになればなるほど、どんどん「引くに引けなくなっていく」のです。ここで降りたら負け、でも、ここで引かなければ核戦争……
ほんと、偉い人もラクじゃありません。
しかも、このゲームのマップは、まさに「世界地図」。ほんと、よくこんな危険なゲームが作れたなあ、と感心してしまいます。もっとも、僕は残念なことに、リアルタイムでこのゲームに触ることはできずに、ゲーム雑誌の海外ゲームの記事を読んで、ひたすら感動し、「いつかこんなゲームで遊んでみたいなあ」なんて夢見るくらいが関の山だったんですけどね、まさか、あの時代は「ニンテンドー」が世界の標準語になるなんて、思ってもみなかったから。
このゲーム、オリジナルのマッキントッシュ版だけではなく、後に日本語化され、NECのPC98やMSX2にも移植されました。当時は、MSX2のディスク版なんて、誰がやるんだ?とかちょっと思っていたのも事実ですが。
また、このゲームのゲームデザイナーである、クリス・クロフォードという人が、このゲームのシステム理論についた本「バランスオブパワー・デザイナーズノートという本は、一時、ゲームデザイナー志望者のバイブルとされていました。僕もパラパラとめくってみたことはあるんですが、正直、難しくてよくわかりませんでしたけど。
ちなみに、クリスさんの「デザイナーズノート」はいまだに有名なんですが、彼自身が作ったゲームそのもので商業的に成功したのって、この「バランス・オブ・ゲーム」だけらしいです。なんだか、ゴダールの映画みたいな話だなあ。