第124夜 「α(アルファ)」を買えなかった本当の理由
参考リンク:「α」の画面写真(アニメも一部見られます!) from 曹さんの華北電脳帝国
あの「ファイナルファンタジー」が世に出る前のスクウェアは、マイコンゲームソフトを細々と(というほど小さなメーカーでもなかったのですが)作っている中堅メーカー、という感じでした。マイコンゲーム界は、最初は文字だけのテキストアドベンチャーの時代があって、次に線画、続いて静止画の時代がやってきました。その「絵」も、最初は一画面が表示されるのに何分もかかるような状況だったのが、次第に表示にかかる時間は短縮されるようになり、「総画面数何百!」というような売り文句が増えてきたのです。
そして、アドベンチャーゲームが次に向かった先は、当然「アニメーション」。
スクウェアは、「WILL」というアドベンチャーゲームで、「まばたきをするヒロイン・アイシャ」をタイトル画面に登場させ、このジャンルでのトップランナーとしての地位を築いたのです。今の感覚からすると、登場人物がまばたきするアニメなんて、誰も一瞥もしないのですが(かえって煩わしく思えるくらい)、当時は、大げさでもなんでもなく、その「まばたき」が画面あらわれるたびに、ギャラリーたちは「おおーっ!」という感嘆を漏らしていたものです。もちろん、当時まだX1のテープ版しか持っておらず、フロッピーディスクでないと遊べない「超高速アドベンチャーゲーム」に憧れていた僕も、そのうちのひとりだったのですが。
そんな中、「WILL」の系譜を継ぐものとしてスクウェアから発売されたのが、この「α(アルファ)」というアドベンチャーゲームでした。パッケージデザインは、当時から人気があった、いのまたむつみさんで、まばたきどころではないアニメーション(上記リンク先では、そのアニメーションの一端を見ることができます。懐かしすぎて涙が出そう)とSF風のストーリーが売りで、大ヒットしたゲームです。ちなみに、発売日は1986年7月1日。
ストーリーは、【地球からの移民を乗せて惑星アルファへと向かう世代交替型恒星間宇宙船ダイダロス。数世代に渡る旅で人々は無気力と化し、コンピュータによって支配され管理される世界。名前以外の全てを無くしてしまった記憶喪失の少女、主人公クリス。現状を打破しようと革命を起こそうとする青年キースから伝えられる真実とは・・・・】
というもので、プレイヤーは、この少女クリスとなって冒険をする(というか、巻き込まれる、という感じ)のです。
このゲームの特長といえば、なんといっても全編に満載されたアニメーション!クリスが銃を撃つシーンは、本当に当時としてはスゴイアニメーションで、僕も「マイコンでここまでできるとは!」と驚愕しました。メッセージは全部カタカナ表示で、コマンドも選択式じゃないので激烈に難しいゲームだったのですが、「次のアニメが見たい!」という欲望のために、泣きそうになりながら、コンピューターが受け付けてくれる言葉を必死に探したものです。
でも、このゲームには大きな難点がありました。
それは、「主人公は露出の高い格好の女の子で、いわゆる『美少女ゲーム』にしか見えないパッケージ」ということ。多感な時期の僕としては、そんな「イヤラシイ人と思われそうなゲーム」をレジに持っていく勇気はなかったのです。もちろん18禁とかではありませんでしたが、警備ロボットに捕まったらクリスは持ち物を没収され、裸で牢屋に吊るされるなど、ちょっと親には見せられないシーンもありましたし。
というわけで、僕はこのゲームを友達の家で途中までしかやっていないのですが、最後はどんなエンディングだったのか、今でもちょっと気になります。
でもなあ、やっぱりあの頃は「α」をレジに持っていくのは、僕にとってはゲームの内容以上の冒険だったなあ…