第137夜 金田少年(弱)の事件簿「アキラ」
参考リンク:ポップ・コラム[No.0091]ファミコン版『AKIRA』
僕がこの「アキラ」という作品にはじめて遭遇したの中学校の帰りに寄った友達の家だったのですが、当時の流行に敏感だった同級生の部屋は、僕が聴いたこともないような洋楽が流れ、レコードのジャケットにはなんだか女性みたいな格好をした人たちが写っていたのに驚きました。ちなみに、歌っていたのは、カルチャー・クラブ。
そして、いつも読んでいる週刊少年ジャンプとマガジン、たまにみかけるちょっとHな月刊少年マガジンくらいにしか縁がなかった僕にとって、その「アキラ」というマンガの世界観は、かなり強烈なインパクトがあったのです。
だって、読んでも何がなんだか、よくわからかかったのだから。「アキラ」って何なのか、読んでもサッパリわからないし。
そして、あまりに緻密でちょっと気持ち悪くなるくらいの、あの大友克洋の絵。
当時の僕は子どもなりに自分の「読解力」みたいなものに自信を持っていましたから、「マンガのくせに、僕にわからないような話なんてありえん!」と思いつつも、その「わからなさ」にものすごく魅かれて、その部屋にあった「アキラ」を何度も読ませてもらった記憶があるのです。そういう意味では、カルチャークラブと「アキラ」というのは、僕にとっての通過儀礼みたいなものだったのかもしれません。
しかしながら、その後は寮に入ったりもしていて、「アキラ」がどうなったかも忘れかけていたころ、作者自身による「アキラ」の映画化と、ファミコンゲーム化の話を聞いたのです。結局、映画が公開されたのは1988年で、ゲームは同年の12月24日に発売されました。
この映画化のとき話題になったのは、「アニメ映画史上初!画面のキャラクターの唇の動きと声優のセリフのシンクロ!」だったような記憶があるのですが、これは、今までのアニメの場合、「とりあえず画面上のキャラが喋るときは口をパクパクさせる」という処理だったものを「喋る言葉の間や唇の動きをキャラクターで再現する(本当に人間が喋っているように)」というシステムでした。まあ、実際の映画を観た感じでは、「すごい!…んだよねこれ…」というくらいなんですけど。
僕にとって、この映画「アキラ」というのがなぜか鬼門で、今まで4回くらい観ているにもかかわらず、エンディングまで眠らずに通して観た記憶がないんですよね。ファン失格も甚だしいのですが、なんだか、そういう相性というのもあるみたい。
さて、例のごとく前置きが長くなったのですが、ゲームの「アキラ」の話。
参考リンクを見ていただければ理解していただけると思うのですが、このファミコン版「アキラ」は、本当にグラフィックが素晴らしいゲームでした。タイトル画面とか、いま見ても、「これがファミコン?」と驚いてしまうくらい。バイクやキャラの描き込みもすごかったし。おまけにかなり絵も動きました。ほんと、グラフィックだけなら、ファミコンとしては「メタルスレイダー・グローリー」(HAL研)と双璧と言えるのではないでしょうか。
でも、この「アキラ」見た目は本当に凄いんですけど、アドベンチャーゲームとしては、ちょっと問題点も多くて、ストーリーが映画どおりなのはともかく、あまりにもそのままのストーリー展開で、少しでも道を外れようとすると即死!という一本道アドベンチャーの王道だったのです。
だって、道を右に曲がっただけとかで、「かねだしょうねんはしにました」だよ。いくらなんでもそりゃなかろう。金田弱すぎ!まるでスペランカーです。当時は、そんなゲームが珍しくはなかったとはいえ、期待していただけに落胆も大きくて。「グラフィックだけでメモリと労力を全部使い切ってしまったに違いない!」と友達と呆れていたものです。
で、枝葉の要素はほとんどありませんから、一応エンディングが2つあるとはいえ、コマンド選択式でもあったし、すぐ飽きて(終わって)しまうという難点があったのです。
ああ、おそるべし「アキラ」!!
とかいいつつ、映画のDVDも持ってるし、やっぱり好きなんですけどね、「アキラ」。
やっぱり、あのファーストインパクトは忘れられない!
新世代ゲーム機で、どこかもうちょっと本当の「ゲーム化」してくれないものでしょうか……