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美術展へ行かなければ 2008
2008年11月23日
巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡
PICASSO : From the Collection of the Musee National Picasso, Paris
国立新美術館

◆ 主な出展作品・・・(全てパブロ・ピカソ Pablo Picasso の作品)
● 二人の兄弟 Les deux freres (1906年)
遠めに見るとラフに描いているようだが、近くで見ると入念に制作されたことを思わせる。いわゆる「バラ色」の時代の作品。ピカソの画歴の中でも非常に短い時代区分がなされているが、日本で開催の展覧会を見た中でも相当の点数があった。この展覧会でもそうだが、ピカソの作品の点数はとにかく膨大で、彼の短くない人生の大部分が作品制作に費やされていたのが分かる。しかも、どの作品からも圧倒的な芸術的なエネルギーが感じられる。
● 木陰の三人の人物 Trois figures sous un arbre (1907-1908年)
「アビニョンの娘たち」の人物のような顔を持つ3人の図。アフリカ美術の作品の影響があからさまに現れている。
● 肘掛け椅子に座るオルガの肖像 Portrait d'Olga dans un fauteuil (1918年)
妻を魅惑的に描いた作品として完成されるハズだったのが、人物だけリアルに描いて背景は描かずに放置されいている・・・。
● 手紙を読む La lecture de la lettre (1921年)
新古典的手法で描かれた、例によって指の太い、珍しく二人の青年。男性像になると、くっきりした顔立ちと、骨太の佇まいが、ピカソ本人に似てくる。
● 大きな水浴の女 Grande baigneuse (1929年)
もはや人間には全く見えない、極端にピカソ的なオブジェのような像。このまま立体的に作って箱根の美術館の庭に置いておきたい。
● ドラ・マールの肖像 Poetrait de Dora Maar (1937年)
● マリー=テレーズの肖像 Poetrait de Marie-Therese (1937年)
この二人の女性の肖像が相前後して描かれている・・・。タッチも似ている。

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2008年11月23日
岡本太郎
"明日の神話"
11月17日より恒久展示

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2008年11月9日
ジョットとその遺産展
Il lascito di Giotto
損保ジャパン東郷青児美術館

◆ 西洋絵画の父とまで呼ばれるジョット・ディ・ボンドーネが活躍したのは13世紀から14世紀にかけて。今回の展覧会ではジョットの代表作であるスクロヴェーニ礼拝堂壁画の写真が展示されていて、現代の我々でさえ目を見張る劇的な表現方法を見れば、ジョットが後世に残した大きな成果を理解する事ができる。しかし、ジョットの作品は当時としては先鋭的な芸術作品だったにしても、新宿の高層ビルの42階で700年前という古い絵画作品を鑑賞するという行為は、相変わらず極めてシュールな体験。
◆ 主な出展作品・・・
● ジョット・ディ・ボンドーネ Giotto di Bondone
聖母子 Madonna col Bambino (1295年頃)
聖母の顔にほんの僅かな傾きが認められるが、これは人物描写の革新的な表現であるとされている。
● マルティリの磔刑図の画家 - 中部イタリア、フェッラーラ(14世紀半ば)
Maestro della Crocifissione alle Martiti - Italia Centrale, Ferrara (Secolo XIV, meta)
嘆きのマリアたち Le Marie Delenti
現代人から見て、当時における「嘆く人間」の表情の描写はまだまだ未完成。マリアたちの目つきと口元が、何だか凄いことになってしまっている。当時の鑑賞者の視点から見れば、リアルだったんだろうか?

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2008年10月18日
英国ヴィクトリア朝絵画の巨匠 - ジョン・エヴァレット・ミレイ展
John Everett Millais
Bunkamura ザ・ミュージアム

◆ 主な出展作品・・・(全てジョン・エヴァレット・ミレイ John Everett Millais の作品)
● ギリシア戦士の胸像 Bust of a Greek Warrior (1838-39年頃)
ミレイの10歳の時のデッサン、驚くべき早熟さ。これだけの才能があれば、どんなスタイルの画家にもなる事が可能であろう。その彼が進んだ道とは・・・。
● 両親の家のキリスト (「大工の仕事場」) 'Christ in the House of His Parents' or 'The Carpenter's Shop' (1849-50年)
「ラファエル前派兄弟団」の一員であるミレイが、非常にリアルな人物と空気感を実現させた高い技術と、若さゆえの極めて鋭角的な前衛性と芸術的なイマジネーションを遺憾なく発揮して描いた、21世紀の現在でさえ感じるある種の衝撃性を備えた作品。この「奇妙な宗教画」を描かざるを得なかったミレイの表現に対する欲求の深さは、我々凡人の想像だにできないものである。
● マリアナ Mariana (1850-51年)
腰に両手をあてて苦悩する女性のポーズは、不自然スレスレの絶妙さ。ステンドグラスに用いられた赤と、女性のドレスの紺色、植物の淡い緑が、それぞれにコントラストを与えている。ウィリアム・マイケル・ロセッティによれば、女性に好評な作品であったという。
● オフィーリア Ophelia (1851-52年)
早熟の天才が早くも成し遂げた、一つの芸術的頂点への到達。水面に仰向けに浮かぶ少女によって、人間の生命のはかなさを表現している。
● 安息の谷間「疲れし者の安らぎの場」 The Vale of Rest 'Where the weary find repose' (1858年)
夕暮れの墓地に二人の尼僧、一人はシャベルで穴を掘り、一人はこちらを向いて腰掛けている。作品のテーマとしてはかなり微妙なものだが、鑑賞者の意識を引き入れて何かを考えさせる深遠な作品であるのは間違いない。しかしこの頃になると、ラファエル前派としての極端な前衛性は見られなくなっている。
● 姉妹 Sisters (1868年)
自分の3人の娘を、ひたすら美しく描いている。ミレイの技量は肖像画家としては理想的なものであり、特に女性の子供の肖像画に関してそれは顕著で、制作依頼は途切れる事がなかったであろう。
● ローリーの少年時代 The Boyhood of Raleigh (1869-70年)
海辺で、漁師らしい男の話を聞き入っている二人の少年。ミレイの著名な作品、さすがに見事な表現力だが、テーマとしてはかなり分かり易くなってきている。

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2008年8月13日
フェルメール展
光の天才画家とデルフトの巨匠たち
Vermeer and the Delft Style
東京都美術館

◆ 主な出展作品・・・
● 「絵画芸術」、出品中止
フェルメールの名作中の名作である「絵画芸術」が、輸送中の破損が懸念されるとの事で、出品中止となってしまった。しかし個人的には2004年に既に観ているので、代替で「手紙を書く婦人と召使い」が展示されるというのは、逆に極めて有り難い状況。
● ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
マルタとマリアの家のキリスト Christ in the House of Martha and Mary (1655年頃)
フェルメールの初期の作品とされる。縦 160cm の大画面だが、高いデッサン力によって3人の人物がリアルな立体感を持って描かれている。簡略化された女性の顔の陰影は、確かに後年のフェルメールの作品中の人物を思わせる。所有している図版で見るのとは違い、素晴らしい作品。
● ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
ディアナとニンフたち Diana and Her Nymphs (1655-56年頃)
フェルメール唯一の神話画。人物の顔が、陰になったり俯いていたりして明確でないのはナゼか?なお、この作品は真作でないとの説がある。同時期の作品であるはずの「マリアとマルタの家のキリスト」とは質感がかなり異なっており、本当に真作でないのかも、と思わせる。
● ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
小路 The Little Street (1658-60年頃)
当然と言えば当然なのであるが、これも図版とは比較にならないくらい素晴らしい。観続けても飽きることもない。特に、上部のレンガの色と雲が浮かぶ空の色とのコントラストが、とてつもなく素晴らしい。
● ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
ワイングラスを持つ娘 The Girl with the Wineglass (1659-60年頃)
窓枠とステンドグラス、室内空間の見事な表現。娘の手を取って意味ありげな微笑を浮かべる男の意図やいかに。
● ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
リュートを調弦する女 Woman with a Lute (1663-65年頃)
例によって左の窓から差し込む光、壁に掛けられた地図、家具と女性。くすんだ色調で統一された室内。この作品も実物は圧倒的に素晴らしく、室内の空気感に独特のリアリティと神秘性がある。
● ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
ヴァージナルの前に座る若い女 A Young Woman Seated at the Virginals (1670年頃)
縦 25.2cm の小品。作品の大小にかかわらず、画面上のバランス感覚は見事。

● ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
手紙を書く婦人と召使い A Little Writing a Letter with her Maidservant (1670年頃)
「絵画芸術」の代替出展作品だが、その芸術的価値と素晴らしさは勝るとも劣らないと見るべきであろう。左の窓から差し込む光は精緻を極めている。珍しく左側手前に下げられた黒いカーテンが、作品に安定感を加えている。手紙を書く女性とテーブルの表現も、屈指の出来。背景に立つメイドがナゼか窓の外を意味ありげに見ているのには、フェルメールの窓と光への強いこだわりを表しているのか?とてつもなく精緻なこの作品を完成させるのに、フェルメールはどの位の時間を費やしたのあろうか。
● カレル・ファブリティウス Carel Fabritius
歩哨 The Sentry (1654年頃)
建物の壁の下で、疲れて眠るように腰掛けて座っている兵士、その前に座って兵士を見つめる黒い犬。退廃的とも見えるが、哀愁と独特の風情を湛える作品。

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2008年7月21日
モスクワ市近代美術館所蔵 - シャガールからマレーヴィチまで - 青春のロシア・アヴァンギャルド
The Springtime of Russian Avant-Garde from the Collection of the Moscow Museum of Modern Art
Bunkamura ザ・ミュージアム

◆ 主な出展作品・・・
● マルク・シャガール Marc Chagall
家族 Family (1911-12年)
男女を一つの人物像に合体させた、シュールな作品ではあるが平和的な印象を与える図像。キュビズムの影響と夢想的かつ素朴なイメージを見事に融合させた、シャガールの画歴の中でも芸術的な一つのピークを迎えていた時期の作品。
● ニコ・ピロスマニ Niko Pirosmani
祝宴 Feast (1910年代)
グルジアのアンリ・ルソーとも呼ぶべき、素朴で独特な画風。素朴ではあるが、自分の絵画が素晴らしいという確信を持って堂々と描いていることろに好感が持てる。人物の表情が特にルソー的だが、衣装が東欧的。
● ニコ・ピロスマニ Niko Pirosmani
小熊を連れた母白熊 White She-Bear with Cubs (1910年代)
どこが熊なんだ!と叫びたくなる、不思議な動物の図像。一度見なら忘れられない、微妙なユニークさ。
● カジミール・マレーヴィチ Kazimir Malevich
刈り入れ人 Peaper (1912-13年)
ロシア・アヴァンギャルドと言えばこの人。立体未来派の影響も強く感じられる作品。マレーヴィチの作品は非常に構築的で、前衛的で難解な作風でもあるが、作者の意図がはっきり分かる明快さも併せ持つ。円筒形の集合体の中に、親切に顔・手・足を描きこんでいる。

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2008年6月21日
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 光と追憶の変奏曲
COROT : Souvenirs et variations
国立西洋美術館

◆ 主な出展作品・・・
● ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot
ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸 La maison Cavassud, Ville-d' Avray (1835-40年)
縦35cm 横26.5cm と小さな作品だが、坂道の登り下りがダイナミックに捉えられていている。
● ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot
鎌を手にする収穫の女、あるいは鎌を持つ女 Moissonneuse tenant sa faucille ou La femme a la faucille (1838年)
人物を客観的にドライに描くコローの作品としては、女性の表情が異例に明確に表現されている。時代を超えて非常に現代的な感じ。
● ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot
ホメロスと牧人たち Homere et bergers (1845年)
コロー特有の柔らかく描かれた木々の中に配された、ルネッサンス絵画に出てきそうな人物像。ミスマッチに見えるが、妙に印象的。
● ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot
真珠の女 La Femme a la perle (1858-68年)
ダ・ヴィンチのモナリザとさえ比較される、余りにも有名な女性像。コローは存命中、この作品を売却する事はなかった。
● ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot
幸福の島 L'ile heureuse (1868-69年頃)
何点か展示されていた大作のうちの一点、高さが 188cm 。大作だと木々の描き方がより一層堂々としているが、コロー特有の葉の表現の柔らかさはそのまま。
● ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot
ヴィル=ダヴレーの思い出、森にて Souvenir de Ville-d' Avray. La clairiere (1872年)
鬱蒼とした森の中から辛うじて見える人物と青空。コローという画家が、いかに木々を描く事に執着していたかを表しているかのよう。
● ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste Camille Corot
青い服の夫人 La dame en blue (1874年)
コローの最晩年の作品だが、晩年とは思えないエネルギッシュな作品。青いドレスが大胆で眼に鮮やか。
● アンドレ・ドラン Andre Derain
ウッソンのロワール海岸の風景 Paysage sur les bords de la Loire a Ousson (1930年)
20世紀のフォーヴィスムの画家による風景画。当展覧会での配置の具合で、唐突に現れたように思わされたが、全くフォーヴィスム的でない風景画で、ここで鑑賞できたのはそれはそれで良かったかも。
● クロード・モネ Claude Monet
木の間越しの春 La printemps a travers les branchages (1878年)
木の間から建物が透けてみえているという表現のユニークさ。モネの視点の近代性と独自性に感嘆させられる。

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2008年5月18日
アメデオ・モディリアーニ展
Amedeo Modigliani et le Primitivisme
国立新美術館

◆ 主な出展作品・・・
● 帽子をかぶった裸婦 Nu au chapeau (1907-1908年)
初期の作品。独特の荒い筆致に、爆発寸前の芸術的エネルギーが蓄積されているのを感じさせるが、あのモディリアーニの特徴的な表現方法へは到っていない。
● カリアティッド Cariatide (1913年)
カリアティッドの連作が展示されていた。アフリカ・プリミティヴィスムからはピカソなども影響を受けたが、モディリアーニへの影響は本質的で直接的なものであった。この影響が、明らかにあのモディリアーニ的人物像に連なっている。今回はモディリアーニのアフリカ的な彫刻作品は展示されておらず、残念。
● ライモンド Raimondo (1915年)
完成したモディリアーニ的人物像。これ以降の人物画は一つの様式にはめ込まれ、縦長で、首と鼻は縦に引き伸ばされ、一見すると表情は消されている。しかしか、一作品一作品を記憶していく事が可能なくらいにそれぞれ非常に個性的な作品で、モデルの特徴が十分に捉えられているように思える。それぞれの作品に特有の魅力があり、何分見ていても飽きる事がない。
● 画家マニュエル・ウンベール・エステーヴの肖像 Portrait du peintre Manuel Hunbert Esteve (1916年)
特に同業者である画家は、モディリアーニ的な手法で描かれた自分の肖像画をどのように見たのだろう?「非常に素晴らしい作品だが、自分には似ていない」とでも言ったのであろう。
● 女の肖像(通称:マリー・ローランサン) Portrait du femme (dite Marie Laurencin) (1917年)
美人を美人に描いた少ない作品?
● ブロンドの若い娘の肖像 jeune fille blonde en buste (1919年)
先入観かもしれないが、最晩年の作品では、それまでのギラギラした強烈な表現が、やや薄くなっているような気がする。

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2008年5月4日
ルノワール+ルノワール展
Renoir + Renoir exposition organisee avec le Musee d'Orsay
Bunkamura ザ・ミュージアム

◆ 主な出展作品・・・
● ピエール=オーギュスト・ルノワール Pierre - Auguste Renoir
ぶらんこ La Balancoire (1876年)
ぶらんこに乗った女性と周辺の人物の群像。ルノワール的な印象主義の素晴らしい結実。
● ピエール=オーギュスト・ルノワール Pierre - Auguste Renoir
田舎のダンス La Danse a la campagne (1882-1883)
嬉々としてダンスに耽る、例によって極端に丸顔の、生き生きとした女性。踊る一組の男女が縦長の画面一杯に描かれているが、入念にデッサンされており、バランス感覚が素晴らしい。
● フレデリック・バジル Frederic Bazille
ピエール=オーギュスト・ルノワール Pierre - Auguste Renoir (1867年)
1870年の普仏戦争から戻ることのなかったバジルが描いた、友人であるルノワールの肖像。人物画の表現に独特のドライさを感じさせるバジルの才能は、戦争がなければどのように開花したであろうか。

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2008年5月3日
ウルビーノのヴィーナス - 古代からルネサンス、美の女神の系譜
La "Venere di Urbino". Mito e immagine di una Dea dall'antichita al Rinascimento
国立西洋美術館

◆ 主な出展作品・・・
● メイディアスの画家 Pittore di Meidias
アッティカ赤像式ヒドリア(水瓶)「アフロディアとファオン」 Hydria attica a figure rosse (前420-400年)
ギリシア文明最盛期の頃の、見事な絵柄が施された陶磁器。優雅な線で描かれた写実的な人物像。西欧文明の源泉に、ほんの僅かながら近づく事が出来たように思えた。
● ティツィアーノ・ヴェチェッリオ Tiziano Vecellio
ウルビーノのヴィーナス La Venere di Urbino (1538年)
ヴェネツィア派の巨匠中の巨匠であるティツィアーノによる、あまりにも著名なヴィーナス像。なぜこの作品が今日まで多大な名声を保ち続けているのかと問えば、当然ながら、鑑賞者が普遍的な価値を見出しているからに他ならない。横たわるヴィーナス(?)のデッサンと、構図のバランスが絶妙で、全く無駄がなくシンプルという印象を受ける。この作品の持つ完璧さは、計算されたものなのか?ある種の偶然の産物なのか?
● ルカス・クラーナハ(父) Lucus Cranach il Vecchio
パリスの審判 Giudizio di Paride (1530-35年頃)
ルネッサンスが生み出した芸術的な成果は、この頃ではまだ、ルカス・クラーナハの活躍する北方には完全に到達しきってはいないという事実を、この作品が示している。しかし、21世紀的現代的視点で鑑賞してみれば、 この作品の持つアンバランスさやシュールさもまた芸術的であり、「ウルビーノのヴィーナス」の完璧さが表す芸術性と全く対等なのである。

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2008年4月29日
モーリス・ド・ヴラマンク展
Exposition de Maurice de Vlaminck
損保ジャパン東郷青児美術館

◆ 主な出展作品・・・
● 静物 Nature morte (1906年)
ここにも、セザンヌの影響を大きく受けたアーティストが。この後、フォーヴィズムの時代を経て、ヴラマンクはセザンヌへ回帰して行く。
● ル・アーヴル、港の停泊所 Le Havre, les bassins (1907年)
今回の展示の中で最もフォーヴィズム的な作品。大胆な筆致と色使い、大型船の大胆な傾きが、非常にダイナミック。フォーヴィズムとは何かと問われれば、この作品を提示すれば十分であるとさえ思える。
● 三軒の家 Trois Maisons (1910年)
フォーヴィズム的な強烈な表現が、セザンヌ的な技法に置き換えられている。その後は技法はセザンヌから離れて行くが、柔らかく落ち着いた風景画は制作され続けて行く。
● 花瓶に生けた赤と白の花 Bouquet rouge et blanc (1915-16年)
縦型の画面の中心に堂々と描かれた花と花瓶。この構図が余程気に入ったのか、多数描かれている。
● 積み藁 Les Meules (1950年)
徐々に筆致が変化し、晩年にはゴッホ的なタッチも目立っている。鮮やかな真っ青な空は、フォーヴィズムへの回帰を思わせる。

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2008年1月14日
モネと画家たちの旅 - フランス風景画紀行
Monet and French Landscape - Traveling with the aetists in France
ポーラ美術館

◆ 主な出展作品・・・
● クロード・モネ Claude Monet
散歩 La Promenade (1875年)
青い空の下の草原を歩くカミーユとジャン、お馴染みの光景。空気感、気温、湿度が伝わってくるかのよう。
● モーリス・ド・ヴラマンク Maurice de Vlaminck
シャトゥー Chatou (1906年頃)
極めてヴラマンク的な、湖畔のシャトゥー。木立の色に、眩暈を起こさせるように大胆にピンクを導入。
● ピエール・ボナール Pierre Bonnard
ミモザのある階段 Stairs with Mimosa (1946年頃)
ボナールとしては強烈な色彩、黄と赤で覆われた階段。
● アルベール・マルケ Albert Marquet
ブーローニュ=シュル=メール港の眺め View of the Port at Boulobne-sur-Mer (1930年)
アルベール・マルケも、画歴の中で余り作風に変化のなかった画家。港と建物と蒸気機関車の表現がとても軟らかく、フォービズムという呼称の荒々しさは似つかわしくない。
● モイーズ・キスリング Moise Kisling
風景、パリ−ニース間の汽車 Landscape, Train Paris-Nice (1926年)
山間を走る蒸気機関車と列車。モダン・アート的な、正しくない遠近法、歪んだ空間だが、何とも快適でのどか。

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2008年1月6日
エドヴァルド・ムンク展
Edvard Munch - The Decorative Projects
国立西洋美術館

◆ 主な出展作品・・・
● 病める子供 The Sick Child (1894年)
● 病める子供 The Sick Child (1925年)
ムンクの作風は、初期と晩年の区分が出来ないくらい、あまり変化がない。人間の本質を抉る象徴的なテーマ、荒いタッチ。ムンクの代表的な作品である「病める子供」は、40年に渡って繰り返し描かれた。1894年のものは紙に描かれている。現代ですら、なぜあえてこのテーマを芸術作品として制作するのかという画家の心理は計りかねるが、1886年の展覧会での発表当時は相当なインパクトを与えていただろう。荒い筆使いが、テーマが持つ荒涼感を強化している。
● 絶望 Despair (1893年)
著名な「叫び」「不安」に似た構図、真っ赤な空を背景に欄干に立つ絶望した男。ムンクは人間の抱える負の内面をあからさまに描き出そうとしているが、鑑賞者はタイトルを見ずともそのテーマを汲み取る事が可能な作品。
● 声/夏の夜 The Voice / Summer Night (1893年)
夜の海辺の林の中で、こちらを向いて立つ女性像。ムンク自身が経験した場面をそのまま絵画化したものだろうか。画家というよりも私小説家とさえ呼びたくなるような、荒いタッチの描画と裏腹の強烈なリアリティを感じさせる。
● 太陽(習作) The Sun (Study) (1912年)
オスロ大学の講堂の装飾画の習作。青などの渋い色彩で描かれた、独特で強烈な、他には見られない極めてムンク的な太陽の表現。

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