宝剣岳
      2931m
(長野)


宝剣岳冬・Tからの続き。

2007年2月3日 快晴

2日23:00自宅〜菅の台バスセンター駐車場3日1:15(仮眠)〜ロープウエイ行バス8:12発〜しらび平ロープウエイ始発9:00〜千疊敷〜乗越10:30〜宝剣岳〜乗越12:00〜ロープウエイ山頂駅12:55発〜バス13:10発〜こまくさの湯〜駒ヶ根15:00〜自宅17:00

直ぐ後から二人の若者も宝剣岳に向う。一度下から行こうとして「上からの方がいいかな。」と言いながら左上尾根から登ろうとする。が降りて来て夫等のルートを行った。なんとも身のこなしが軽い。後からついて行く彼の足元が少しおぼつかない。
直下も氷はなく雪面のみ直登するようだ。そしてとうとう岩と雪の宝剣岳に立った。後の若者たちは雪斜面よりリッジが安全と考えてかカール側の尾根から山頂へ。「すごい。」怖いものなし。
若いってなんて大胆なんだろう。



反対側の木曽駒ケ岳には福井の夫婦が到達したのが望める。その後ろも単独の方が数名続いている。皆、ぬけるような蒼空に天気が崩れることなどありえないと判断してのことだろう。
なにかな?青空に雪の塊のようなものが飛んで行く。白い花びらのような大きさで。もしかして「かざはな?」 うっとりしてしばらく目で追う。ほんの数回・・・。
目の前の大きなエビノシッポにも見とれる。
そんなことをして肩で待っている私は、とくに風がきついわけでもないのに動いていないので体がどんどん冷えてきた。
手がかじかんで震えてくる。凍えそう。「稜線で凍死するのはこんな感じなのだろうか。」などと考えたりする。
歩き回ることもできないので腕だけでも動かして体を温める。
こんなに寒いのなら私も行けばよかったと思いながら見守る。ところが下りはずっと急斜面を後ろ向きのまま降りてくる。そんな技術、私にはない。やはり今の私には今日の山頂は無理・・・。

垂直雪壁をアイゼンで蹴り込んでスイスイ下降できるような力をつけておかねば・・・。それが今の課題。

夫等はテラスから斜面をトラバースして無事に帰還。緊張の糸が解れて肩ではあはあと大きな息をする。
「強風にあおられたらあの頂から滑落する・・・。」その不安から開放され安堵の表情。
そのまま尾根を真っ直ぐ何処でも降りる。今、朝見上げたシュカブラの上を歩いている私。これは最高の贅沢・・・。
氷がなく雪だけなのでさくさくとアイゼンが効いて超気持ちいい。確か前回は氷にまんまる爪アイゼンが効かなくてとても怖かった・・・。



I藤さんはさらに木曽駒ケ岳へ行くので乗越で別れる。赤旗もいらないと判断して置いて行った。我々も行きたいけど夕方から用事があるので次回の楽しみにして・・・。
カールへの下りは一昨年の恐怖がうそのようにルンルン気分で。雪質が全く違う。硬くしまったサクサク雪だから少しも怖くない。めちゃ楽しい。気分は最高。
眼前には富士山や南アルプスの山並み。私は今この極上の風景の中に身を置いてアルプスの雪を感じて、そして歩いている。なんと贅沢なことでしょう・・・。


はしゃいで新雪の急斜面を駆け下る。広大な雪原に私だけの落書き・・・。気持ちいい。
その落書きの横をドラマの撮影隊が頂上へ向う。重い機材を背負って・・・。


彼らが立ち去ると広いカールに人がいなくなった。これ以上の好天は絶対ないと思われる今日今この時。紺碧の空のもと大雪原に光は満ち溢れている。
蒼と白だけの世界。こんな美しい空間がほかにあるだろうか。ここは神聖な神の領域以外の何ものでもなかった。


鋸岳、甲斐駒ケ岳、仙丈岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳。はるか彼方に富士山が少し霞んで望める。塩見岳・・・。
冬は全く行ったことがない(体力も技術も何もない私に行けるはずもない)南アルプスの白い峰が銀屏風のようで圧巻。


そして主役の宝剣岳は堂々とした風格をそのままに朝よりさらに輝きを増して美しい。雪煙もさながら神のいたずら・・・。
今ここにいられるだけで幸せ・・・。
美しい雪と岩と空を有難うございました・・・。すべての出会いに感謝してアルプスに別れを告げた。


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