阪急京都線の車両たち
阪急の車両については形式こそシンプルですが、形式内というより編成単位で細部の違いがある場合もありその違いを探すことがファンにとっての大きな楽しみの1つでもあります。ただし、ここでそれを書き出すと1つの本にできてしまうくらいのものになってしまいますので、こちらのページでは最小限のデータを載せることにしたいと思います。また私は電気、機械系については苦手と言うこともあり、どちらかというと車両のデザインという部分に焦点を当てた解説になると思います。なお、車両数につきましては、特記がないもの以外は2005年10月1日現在といたします。これも阪急の場合神宝線(神戸線、宝塚線)を中心に車両の組成が変わることが多くあり、それを逐一追うことは厳しいものがあるからです。また、阪急京都線の乗り入れ先である大阪市交通局堺筋線(6号線)の車両もあわせて載せます。間違い等ございましたら、メール等いただきましたら修正いたします。
T.阪急
1.9300系
製造初年 | 2003年 | |
両数 | 24両 | |
車体構造 | アルミ | |
主電動機 | 200kW×4 | |
制御方式 | VVVFインバータ | |
台車 | FS-565(M車)、FS-065(T車) | |
冷房装置 | 20,000kcal×2 | |
9300F 大阪側先頭車9300(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | HRDA-1 |
コメント | ||
2001年に行われたダイヤ改正による特急本数の増加(20分間隔→10分間隔)、特急停車駅の増加(新たに茨木市、長岡天神、桂が停車駅に昇格、大宮が通過)による所要本数増に伴い、ロングシートで運用されていた特急車(5300系、7300系、8300系)のサービス向上の目的のもと、現在の主力である6300系の後継車両という位置づけで登場しました。 車両については、阪急の伝統であるマルーンの塗装、木目調の車内のイメージを残しながらも以下の点を改良し、車両性能および快適性の向上を図っています。 ・ 側窓の連続大型化(これは8300系までの従来車に比べるとかなり大きいです。) ・ アルミ合金ダブルスキン構造の採用による遮音性の向上 ・ 除湿機能付き空調装置の採用 ・ バリアフリー対策として、床面高さを1170o→1150oに下降 ・ 座席幅・間隔の拡大(特にクロスシートの座席は座りやすくなっています。) ・ 貫通路扉の自動化(慣れないと少し使いにくいかな?) ・ 主電動機に200kW×4を使用することにより、MT比(電動車と付随車の比率)を3:5(在来車は1:1)に低下 その後、2005年に9301F(写真:9301F 8連 大阪側先頭車9301)、9302Fの2編成が増備されました。2005年に製造された2編成は先の9300Fとの相違点として主なものは以下の通りです。 ・ 前照灯ケースの一体化 ・ 中間貫通扉の窓形状の変更 運用については、特急、快速急行を中心に、早朝、深夜には間合いで普通で運用されることもあります。 |
2.8300系
製造初年 | 1989年 | |
両数 | 84両 | |
車体構造 | アルミ | |
主電動機 | 170kW×4 | |
制御方式 | VVVFインバータ | |
台車 | FS-369A(M車)、FS-069A(T車) SS-139(M車)、SS-039(T車)(1995年度製造分以降) |
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冷房装置 | 12,500kcal×3 | |
8330F 大阪側先頭車8330(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | HRDA-1 |
コメント | ||
1989年に神宝線(神戸線・宝塚線)の8000系に対応して、1987年からVVVF量産化に向け実用化試験をしていた7300系の7310の試験結果を反映させるべく、京都線初の量産VVVF車として登場しました。先に製造された7300系と比べ、以下の改良を施しています。 ・ 前頭部のデザインの変更(額縁型の正面デザインの採用、運転台窓・車掌台窓の天地寸法の拡大など) ・ 屋根の肩部にアイボリー塗装(これについては、現在は7300系にも採用) ・ パワーウィンドウの採用(これについては、同時期に製造された7327F2連、7307F 6連にも採用) ・ 化粧板の色を変更(これについても、同時期に製造された7327F2連、7307F 6連にも採用) ・ 車いすスペースの設置(これについても、同時期に製造された7327F2連、7307F 6連にも採用) 7300系と8300系のスタイルの相違については、こちらの写真(写真:左 7326F2連 京都側先頭車7456、右 8304F6連 大阪側先頭車8304)を見るとよくわかって頂けるものと思います。 1995年製造分以降(写真:8303F8連 大阪側先頭車8303)からは、下記に示す変更が行われています。 ・ 前面デザインを横から見るとくの字型の正面に変更 ・ 前面方向幕の大型化および車番の位置を貫通扉下から車掌台窓下に変更 ・ 台車をボルスタレス台車(SS-139(M車)、SS-039(T車))に変更 上記の変更が行われていることもあり、前期型と後期型は別形式のような印象を受けます。 また、1995年製造の8315F(写真:8315F8連 大阪側先頭車8315)は、阪急では初めてフリーストップ式カーテン(従来車は鎧戸)、LED式車内案内装置を採用しています。 運用については、特急から普通までほとんど全ての運用で見かけることが出来ます。 |
3.7300系
製造初年 | 1982年 | |
両数 | 83両 | |
車体構造 | 鋼製・アルミ | |
主電動機 | 150kW×4 | |
制御方式 | 界磁チョッパ | |
台車 | FS-369A(M車)、FS-069A(T車) | |
冷房装置 | 10,500kcal×3 | |
7305F 大阪側先頭車7305(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | HRD-1R HRDA-1(1985年以降製造分) |
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1982年に京都線では2300系以来の界磁チョッパ制御車として12両(7300F、7301F各6連)登場しました。その後、同年に登場した7302F、7303F各8連から京都線では初めてとなるアルミ製に変更し、1985年製造分から運転台扉後の小窓を追加し、かつ主制御器の種類の変更を行い、マイナーチェンジをしています。 そして、1987年製造の7310F6連(同時に7324F2連(こちらは通常の界磁チョッパ制御車)と組み合わせて8連で運用されることが多い。)の大阪側先頭車7310は京都線でのVVVF装置と交流主電動機の長期実用試験車となり、その後の8300系の製造に生かされました。 また、1989年に製造された7327F2連と7307F6連(写真:7327F6連 京都側先頭車7407)は、最初は8300系として製造される予定だったため車内が8300系とほぼ同じとなっており、車内化粧板の色調の変更、パワーウィンドウの設置等の変更が行われています。 運用については、8300系と同じく特急から普通までほとんど全ての運用で見かけることが出来ます。 |
4.6300系
製造初年 | 1975年 | |
両数 | 72両 | |
車体構造 | 鋼製 | |
主電動機 | 140kW×4 150kW×4(1984年製造分) |
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制御方式 | 電動カム軸 界磁チョッパ(1984年製造分) |
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台車 | FS-369A(M車)、FS-069A(T車) | |
冷房装置 | 10,500kcal×3 | |
6356F 大阪側先頭車6356(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | HRD-1D HRDA-1(1984年製造分) |
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1975年にP-6こと100系、710系、1300系、2800系に続く5代目のロマンスカーとして登場し、以後1978年までに64両が製造されました。台車、電気機器、ブレーキ装置等の足回りについては5300系と同じであるが、車体関係では下記の変更点がありました。 ・ 屋根の肩部をアイボリーで塗装 ・ 標識灯、尾灯を腰板部に移し、ステンレスの飾り帯を付加 ・ 貫通扉の幌枠を前照灯部分と一体化 ・ 客用扉を両端に寄せ、クロスシート部の座席数を増加 ・ 妻窓の廃止 また、運転台には京都線では初めてワンハンドルマスコンを採用しました。これらの変更によって、特急専用車としての格調を身につけたものとなりました。6300系は、1976年に鉄道友の会から阪急では初のブルーリボン賞を受賞しました。 そして、1984年には当時行われていた高槻市駅、茨木市駅周辺の高架化事業に伴う特急の運用本数増加に伴い、8両が増備されました。1984年製造分は、6330形(写真:6330F 大阪側先頭車6330)とも呼ばれ当時製造されていた7300系と同じ足回りを利用していますので、6300系と7300系の両方の血を受け継いだ車両という見方も出来ます。ですから、6330Fについては、大阪側先頭車6330にパンタグラフが2基あります。 運用については、昼間は特急に、朝夕は快速特急、通勤特急で活躍しています。また、間合いで快速急行に入ることもあります。 |
5.5300系
製造初年 | 1972年 | |
両数 | 105両 | |
車体構造 | 鋼製 | |
主電動機 | 140kW×4 | |
制御方式 | 電動カム軸 | |
台車 | FS-369A(M車)、FS-069A(T車) | |
冷房装置 | 8,000kcal×4 10,500kcal×3(1975年度製造分以降) |
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5323F 大阪側先頭車5323(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | HRD-1D |
コメント | ||
1972年から大阪市交通局堺筋線乗り入れ用の冷房車両として登場しました。この形式から下枠交差式パンタグラフ、全電気指令ブレーキ(HRD-1D)等の新機構を採用しました。また、この形式から神宝線と同様、第1編成に0が付されるようになりました。つまり、第1編成は5300から始まっているということになります。 1975年製造分からは冷房装置が1両あたり4台(8,000kcal×4)から3台(10,500kcal×3)に減少させています。 途中から表示幕の電動化改造が行われ、現在では全ての編成に取り付けられています。またその途中から正面表示幕の天地寸法の拡大(写真:5315F 大阪側先頭車5315)が行われ、少し趣の違う顔になっています。 また、初期に改造が行われた車両から再度更新改造(写真:5302F 大阪側先頭車5302)が行われています。更新改造の内容は以下の通りです。 ・ 制御装置更新 ・ 車いすスペースの設置 ・ 客用扉窓の天地寸法を拡大した扉(9300系と同じ扉)に取替 ・ 車内案内情報装置の設置 ・ 冷房装置改良等 運用としては、京都線関係の快速急行から普通まであらゆる運用で活躍しています。 |
6.3300系
製造初年 | 1967年 | |
両数 | 126両 | |
車体構造 | 鋼製 | |
主電動機 | 140kW×4 | |
制御方式 | 電動カム軸 | |
台車 | FS-369(M車)、FS-069(T車) | |
冷房装置 | 10,500kcal×3(登場時は非冷房) | |
3318F 大阪側先頭車3318(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | HSC-D |
コメント | ||
1969年から行われる大阪市交通局堺筋線乗り入れに備え、1967年、1968年に120両が登場しました。堺筋線が地下線であることから非常時に備えMT比を高くしているため、主電動機については130kW×4と、2300系の150kW×4と比べ低出力のものとなっています。この形式からS型ミンデン台車を採用しました。 登場当時は5連で運転されていましたが、1979年に堺筋線関連運用の6連化に伴い6両が増備されました。この6両は当時製造されていた5300系に準じた車体寸法を採用しているため、既存の編成と連結すると違いが一目瞭然で、異彩を放っています。 そして、1981年から表示幕の電動化改造および冷房改造が行われ、現在では全ての編成に取り付けられています。 また、2003年から更新改造が行われています。更新改造の内容は以下の通りです。 ・ 制御装置更新 ・ 車いすスペースの設置 ・ 客用扉窓の天地寸法を拡大した扉(9300系と同じ扉)に取替 ・ 車内案内情報装置の設置 ・ 非常通話装置の設置 ・ 冷房装置改良等 運用としては、5300系同様京都線関係の快速急行から普通まであらゆる運用で活躍しています。 |
7.2300系
製造初年 | 1960年 | |
両数 | 55両(2005年10月20日現在) | |
車体構造 | 鋼製 | |
主電動機 | 150kW×4 | |
制御方式 | 界磁チョッパ | |
台車 | FS-345、333(M車) FS-45、33、324A(T車) |
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冷房装置 | 10,500kcal×3(登場時は非冷房) | |
2323F 大阪側先頭車2323(撮影:茨木市駅) 現在、2323Fは嵐山線を4両編成で走っています。 |
ブレーキ | HSC-R |
コメント | ||
1960年に神宝線用の2000系と同時に登場した新系列高性能車両で、阪急車両のデザインの礎を築いた車両です。アルミ外枠付きのユニット窓、阪急初の両開き扉を採用した車体デザインは、アルミデコラを使用した化粧板を使用した内装とともに、当時としては斬新なデザインであり、1961年鉄道友の会第1回ローレル賞を受賞しました。 台車については、1960、1961年製の車両がアルストム式のFS-333(M車)、FS-33(T車)、1962年製以降の車両がミンデンドイツ式のFS-345(M車)、FS-45(T車)の他、エコノミカル台車(エコノミカル台車採用分は既に廃車)なども採用されました。 その後、1981年から1985年にかけて冷房改造が行われると同時に制御装置の改良も行われました。その後、一部の編成に電動表示幕の取り付けが行われました。 最盛期は78両が存在していましたが、現在では非表示幕車の一部が廃車され、2005年には9300系が2編成増備されたことにより3月に2303F 4連が、そして10月に2301F 4連(写真:2301F 大阪側先頭車2301)が運用をはずれて、現在営業線上を走行する非表示幕車は、2309F 4連のみとなっており、京都線(嵐山線を含む)上を走行する最後の非表示幕車となっています。 運用としては、7連が梅田発着の普通を中心に昼間は急行を中心に活躍し、また4連は嵐山線内の普通として活躍しています。 |
U.大阪市交通局
1.66系
製造初年 | 1990年 | |
両数 | 136両 | |
車体構造 | ステンレス製 | |
主電動機 | 180kW×4 | |
制御方式 | VVVFインバータ | |
台車 | SS-120(M車)、SS-020(T車) | |
冷房装置 | 12,500kcal×3 | |
66605F 京都側先頭車66905(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | MBSA |
コメント | ||
1993年に予定されている動物園前−天下茶屋間開業に伴う必要車両数増に備え、かつ60系の置き換えを行うため、1990年から登場しました。同時期に製造された他路線(御堂筋線(1号線)等)用の新20系同様、ステンレス製車体、VVVFインバータ制御、一段下降式側窓を採用しています。登場時は6連でしたが、現在は全て8連化されています。 2002年に登場した66613F(写真:66613F 大阪側先頭車66613)からは2000年に施行された交通バリアフリー法制定をふまえ、以下のような変更が行われました。 ・ 床面高さを1190o→1150oに下降 ・ 扉間の座席中央部への握り棒増設 ・ 座席のバケットシート化と1人あたりの着座幅拡大 ・ 吊手の増設 ・ 車椅子スペースへの非常通報装置増設 ・ 側扉上部の案内表示装置の新設 また、合わせて前面デザインの変更が行われ、方向幕に種別も併記されるようになりました。 |
2.60系(既に廃車)
製造初年 | 1969年 | ||||||||||||||||
両数 | 90両 | ||||||||||||||||
車体構造 | アルミ製 | ||||||||||||||||
主電動機 | 140kW×4 | ||||||||||||||||
制御方式 | 電動カム軸 | ||||||||||||||||
台車 | FS-373(M車)、FS-073(T車) | ||||||||||||||||
冷房装置 | 12,500kcal×3(登場時は非冷房) | ||||||||||||||||
6002F 大阪側先頭車6002(撮影:茨木市駅) | ブレーキ | MBS (MBSといっても毎日放送じゃありません(^_^)。 三菱製のブレーキ(Mitsubishi Brake System)という意味です) |
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コメント | |||||||||||||||||
1969年に開通した大阪市交通局堺筋線(6号線)専用車両として、90両(5連×18)が登場しました。堺筋線は開業当時から阪急電鉄京都線・千里線との乗り入れを行うため、他路線(御堂筋線(1号線)等)の車両とは違い乗り入れ相手先の阪急の車体寸法を採用していることもあり、同時期に製造された30系(現在では、谷町線(2号線)のみで走行)とは違うデザインとなっています。また、オールアルミで無塗装であったことから阪急線内で走行する姿は、よく目立ちました。 その後は、以下のような改造が行われました。
そんな中、1992年に初めて廃車が出た後は66系に順次置き換えられ、2003年11月には全ての車両が廃車になりました。 |
V.参考文献および参考ホームページ
文献名 | 発行元 | 備考 |
私鉄の車両5 阪急電鉄 |
保育社 | 現在では復刻版が出版されています。旭屋書店で一時ベストセラーになっていました。 |
カラーブックス 日本の私鉄7 阪急 |
保育社 | |
鉄道ピクトリアル 1993年12月増刊号 <特集> 大阪市交通局 |
株式会社 電気車研究会 |
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鉄道ピクトリアル 1998年12月増刊号 <特集> 阪急電鉄 |
株式会社 電気車研究会 |
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鉄道ジャーナル 2003年3月号 |
株式会社 鉄道 ジャーナル社 |
2002年度以降製造された66系の変更点の文章において引用 |
阪急鉄道 ファンクラブ会報 Vol.24〜26 |
阪急電鉄 鉄道ファンクラブ 事務局 |
3300系、5300系の最近の更新改造の文章において引用 |
鉄道ファン 2004年1月号 |
株式会社 交友社 |
9300系の文章において引用 |
鉄道ジャーナル 2004年1月号 |
株式会社 鉄道 ジャーナル社 |
9300系の文章において引用 |
阪急電鉄 ホームページ |
阪急電鉄 | 9300系の文章において引用 9300系の紹介記事につきましては、トップページにあるレールファン阪急のバナーをクリックし、そのページの中にある9300系特集をクリックして頂くと見ることが出来ます。 |