Bob Brozman Words
Q 以前よりずっとパーカッシブな演奏が増え、ヒップホップなアプローチやカホンのソロ演奏など、リズムを強調した演奏が増えましたね。
そうですね。
近年マダガスカルやインド、アフリカの人たちと共演する機会が増えていて、リズムに自分の耳が向いていることは事実です。
特にアフリカのリズムは興味深く、2拍子と3拍子とが同時進行するものもあり、
その一つのドアをあけると100通りもの展開が可能な恐ろしくおおきな世界が広がっているんです。
ピックアップが普及して以来、ギタリストは音符やスケールやコードなど理論的な要素で音楽が完結すると考えている人が多くなりましたが、
それらは構成要素のわずか20%に過ぎません。全体の40%はリズムやグルーヴなどリズムにまつわる要素なのです。
そして、残りの40%が、感情と筋肉の微妙な関係だと考えています。
その感情と筋肉との関係を説明しましょう。
楽器を演奏するということは、感情を筋肉の動きに代え、その動きが弦を弾いたり押さえたりしているわけです。
これを思うように行うためには、長い長い時間を掛けて熟練するしかありません。
ですから、たった1音弾いただけでそのミュージシャンが本当に素晴らしいかどうか分かるでしょう。
ジャンゴ・ラインハルトもジミ・ヘンドリックスも、1音聴けば良さが分かりますよ。
Q 感情と筋肉に関して、もう少し説明してもらえますか?
OK。感情の動きというのは、もちろんアナログです。
しかし筋肉の働きというのは”力を入れるか、入れないか”ということであって、ある意味ではデジタルに近い働きなんです。
つまり感情に従って思うように楽器を演奏するということは、いわばアナログの波形をデジタルで再現するようなものです。
その解像度が荒いと、波形は階段状のガタガタな形状になってしまいます。しかし除々に解像度を上げていけば、
デジタルであってもよりアナログに近いなめらかな波形やカーブを描くことができるでしょう。
つまりミュージシャンは、アナログの感情の動きをデジタルのような筋肉の動きで表現するために、長い時間をかけてトレーニングすることで
その解像度を上げていかなければなりません。そうしていかにアナログの波形に近づくか、ということです。
私は47年間ギターを弾いてきましたが、それでやっとこのレベルです。
何故音楽を完璧に表現するのに5000年も生きられませんから、
私は残りの人生をもっとミュージシャンとしてやらなければならないことに向かって努力しなければなりません。
(Player 2007,Jan 参考資料)