☆ 痛みの悪循環
手や足に傷を負ったとします。その刺激は知覚神経を通って脊髄に伝えられ、そこから脳に伝わります。そのときに手や足が痛いと感じます。そうするとヒトはその痛みに対して反応を起こします。運動神経が興奮して筋肉が硬くなり、また交感神経が興奮して血管が収縮します。そうなると血液の流れが悪くなりますから、傷を負った場所が酸素不足になります。すると痛みをさらに悪化させる物質(発痛物質)が作られ、それにより痛みがいっそう強くなります。これが痛みの悪循環です。
この悪循環をどこかで断ち切れば、局所の血液の流れが改善して、酸素の供給が増加し、発痛物質が洗い流され、長時間続いた痛みが和らいできます。
神経ブロックは注射ですが、通常の注射よりも細い針を使って行い、経験豊富なドクターが行えばあまり痛みは感じません。
2)よく行われる神経ブロック
現在約20種類の神経ブロックが行われており、大別して末梢体性神経のブロック(知覚神経および運動神経のブロック)、交感神経のブロックおよびそれらを混合したものがあります。現在注目されているのは交感神経のブロックで、これを行うとその支配領域の血行が促進され、痛みが緩和してきて、自然治癒も促進されます。非常によく行われているのが以下の2つのブロックです。
@)星状神経節ブロック
これは首のところにある交感神経節(神経のかたまり)に局所麻酔薬を注入して、交感神経を一時的に麻痺させ、頭、顔、首、肩、腕、上胸部の血流をよくして、その部分の痛みを和らげる治療法です。
A)硬膜外ブロック
脊髄(せきずい)神経のすぐ近くに局所麻酔薬を注入します。頭部、顔面以外の部位にある痛みに対応できます。痛みを伝える神経を直接遮断すると同時に、交感神経系も遮断します。それにより、血流がよくなり痛みへの治療効果をもたらします。