プロの考え


我々印章制作に携わるものの考えを少しお話したいと思います。

お客様の中には「安ければ機械彫りでよい。」という方もいらっしゃいます。
技術や道具の進歩は時代とともに進むことを否定できません。
しかしながら、印章の意味合いと制作課程を考えると、
現在のようなロボットによるコンピュータソフト頼りの機械彫りは否定せざるを得ません。
全く同じ印影を持つ印章が世の中にたくさん出てしまいます。
また、印影の解析をして偽造することも容易です。
役所としては見分けることもできませんし、
同印影の実印によってこうむった被害を補うことはしません。
個人として「そのような印章を実印として登録したのは本人の責任だから」です。

道具の進歩としてのロボットを否定するわけではなく、
コンピュータを使って創作した印影を使用し、
また必ず最後には職人の手による仕上げをしたものであれば、
唯一の印影を持つ印章となり、時代との折り合いの取れたものとなります。

また「印章は完全に手彫りでなければいけない。」という方もいらっしゃいます。
これはある意味で正しいのですが、実際に職業として印章を彫っている我々としては、
「喜んでお受けします」とは中々いえません。
というのは、もし完全手彫りで15ミリ丸の水牛の実印を字入れから仕上げまで全部手で行うと、
字にもよりますが、1本彫るのにある程度手を抜いても6〜8時間かかってしまいます。
真剣に品評会レベルの良い手彫りの場合は100時間くらいかけます。
こうなっては1本60万円とか100万円という話となります。

我々印章制作に江戸時代から携わってきた職人として
ユーザーの方により安価に安心できる品物を供給するため、
道具・工具の進歩を有効に使用してきました。
ほとんどのところは「粗彫り」といわれる工程です。
印影をつくり、それをもとに印材へ字入れをし(布字といいます)、「粗彫り」をし、
印面調整をし、墨打ちをし、仕上げ刀で仕上る。
その工程の中で、「粗彫り」を機械化することは昔から努力されてきました。


印太郎


手 彫 り
「字入れ」から「粗彫り」、「仕上げ」まで完全に機械を使用せずに作られたもの。

手仕上げ
「字入れ」「仕上げ」は職人が手作業をし、「粗彫り」のみ機械を使用。

機械彫り
「字入れ」「仕上げ」をコンピュータのみで、
またコンピュータによらず手作業で「字入れ」したものでも
「仕上げ」を機械・ロボットで行ったもの。
同じ印影を持つものが出来易い。

登録する印章は機械彫りを避けましょう。