丘の上で















もうお日様は沈もうとしていて西の空は真っ赤だ。

本当なら一面が緑だと思うこの丘もオレンジ色に変わっている。

「はぁ、どうしよう」

ちょっと呟く。

家に帰る道が分からないのだ。

やっぱり、あの分かれ道は左に曲がるのが良かったのだと思う。

舞と遊んでいていつの間にやら日が沈みかけていて焦ったのだ。

と言うわけで舞が悪い。うん、そうしよう。

けど、どうしようか?

別に帰るのが遅くなっても構わない。

ただ、気になるのは母さんだ。

いつもは優しいのに怒ると怖い。

友達はいつも母さんを優しいとか言うけれどそれは怒ったときを知らないからだ。

と、何か話がずれているみたいだ。

しかし、迷っているのにこんな事を考えられるなんて、なんて自分は凄いんだろう。

……やめよう。突っ込んでくれる人がいない。

とりあえず、さっさと帰るのが良いみたいだ。

けど道が分からない。

丘のもう少し高いところから見たら分かるかな?

そう思って僕は丘を進んでいった。

そこで彼女と出会ったのだ。

髪は肩ぐらいでお日様の所為か赤く綺麗だった。

けど、なんとなく寂しそうだった。

だから僕は話し掛けたんだ。

「ねぇ」

彼女は振り向いてくれた。

可愛かった。

「……なんですか?」

彼女は警戒しているみたいだった。

まぁ、こんな時間にこんな場所にいるのは少ないとは思う。

だから僕は警戒心を和らげるために笑いながら言った。

父さん曰く、人間まずは笑顔だ! という事らしい。

「ん〜、どうしてこんな所に君みたいな可愛い娘がいるのかなって思ったんだ」

この言い方も父さんに教わった。なんか父さんは昔はモテたらしい。

それを聞いた彼女はそれまでも赤かった顔をもっと赤くしていた。

「な、何を言うんですか! そ、そんな事を言ってるんだったらどこかに行って下さい!」

思いっきり焦っているみたいだ。

可愛いのに今まで言われた事がないのかな?

そう思ったけど、このままじゃ逃げられそうだったから道を聞いてみる事にした。

「あ、それなんだけど。どうやったら街に帰れるのかな?」

そう言った途端にまた彼女は疑わしそうな顔になった。

「……街に住んでいるんだったら分かると思うんですが」

「この街には休みだから遊びにきてるんだ」

「ああ、そうですか」

そう言うと彼女は納得したみたいだった。

「なら、その道をまっすぐに行けば商店街に行けると思います」

そう言って彼女は今きた道を指した。

……そう言われたら特に分かれ道もなかった気がする。

これで僕は少なくとも商店街には行けるわけだが最初の寂しそうな彼女の姿が気になった。

「ありがとう。けど……どうして君はこんな所にいたの?」

そう聞くと彼女は不機嫌そうに答えた。

「……別に友達もいませんから」

これは遊ぶことも無いからここに居るって意味なんだろうか?

それだったら彼女の周りはバカだと思う。

彼女はこんなに可愛いのに。可愛い娘と一緒にいるのは嬉しいことだと思うのに。

「そんなに君は可愛いのに?」

「な、何をまたバカなことを……」

バカといわれた。ちょっと悲しい。

けど、本当に友達が居ないんだったら僕はなりたいと思う。

うん、そう言おう。

「友達になろうか?」

「……は?」

彼女は驚いたみたいだ。

何を言ったんだって感じになってる。

「……もう一度言ってくれますか?」

そう言われたのでもう一度僕は言う。

「友達になろうって言ったんだけど」

「本気ですか? こんなおばさんくさい私と?」

おばさんくさいって……(汗

「そんなことないよ。丁寧なだけだと思うよ」

ここで微笑み。相手を褒めるときは微笑みを。これも父さんの教えだ。

「本当ですか?」

「うん。って言うか誰がそんなこと言ったのさ」

そう言うと彼女は少し俯いた。

「……クラスの男の子たちが」

「それはそいつらがバカなんだよ。君は本当に可愛いよ」

そう言いながら僕は彼女に近づく。

悲しんでいる女の子は抱きしめろ。やっぱり父さんに教えられた事。

けど、本当にそう思うから僕は彼女を抱きしめた。

「きゃっ」

彼女は驚いて身を縮こまらせた。

僕は彼女が怖がらないように出来るだけ優しく言う。

「そんな事気にしないで友達になろう? 僕はそんな事絶対に言わないから」

「本当?」

彼女は僕の顔を見ながら心配そうにそう言った。

だから、僕は微笑んだ。

すると彼女の瞳が潤み、目じりに綺麗な澄んだ涙が浮かんできた。

「う……ひぇっく……うぇ……ええ〜ん」

そして泣き出した。

多分、クラスの男子たちに言われていた事をかなり気にしていたんだと思う。

女の子は大切にしないといけないんだ














「ひっく……あ……すいませんでした」

あれから何分かして泣き止んだ彼女はそう謝ってきた。

「ん? 何を謝ってるの?」

謝れるような事をされた覚えは無い。

「その、ぐしゃぐしゃにしてしまって……」

確かに服が彼女の涙で濡れている。

「気にしないでいいよ」

「けど……」

いいと言ったのにまだ彼女は気にしている。

どうすればいいんだろうか? ……そうだ、良い事思いついた。

「なら、友達になろう? 僕はそうしてほしいな」

「あ……そんな事で良いんですか?」

彼女はちょっと何か僕を窺うような仕草をしている。

うん、ここで一気に攻めないと!

「それで良いんだよ。だから、遊ぼうか!」

そう言って僕は彼女の手を掴んだ。

「あ、あの!」

「ん?」

彼女が慌てたように声を上げたのでそっちを向く。

「もう、日が沈むんですけど……良いんですか?」

そういわれて西の方を見ると確かにもう暗くなった来ていた。

「わっ! や、やばい!」

そう慌てた僕の耳にくすくす、という笑い声が聞こえた。

聞こえてきた方向を見ると彼女が小さく笑っていた。

「な、何を笑ってるんだよ」

「だって……いきなり慌て出したのが面白くて」

「う、うう」

恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。

そうやっている僕に彼女は優しく声をかけてきた。

「それじゃあ、街まで案内してあげますよ」

「えっ?」

突然のことにちょっと驚く。

「家に帰らなくて、良いの?」

「大丈夫です。お父さんたちは今日は遅いから」

「えっと……それじゃ、お願いしようかな」

ちょっと迷ったけど次に道に迷ったら戻れるか分からないから彼女に頼ることにした。

「はい。それじゃあ行きましょうか」

そう言って歩き出した彼女に僕はこう言った。

「今日は無理だけど……明日は遊ぼうね」

「はい」

振り向いていった彼女の笑った顔は思った通り、とても可愛かった。

 

P.S.ちなみに帰りは手をつないで帰りました。



























何だろうね、これ
後書き

うに、風鳴飛鳥です。

はい、今回も謎のSSを書き上げました。

夕日を見て書いてみたいと思ったんですが夕日が関係ないです。

思い通りにはならないです。

まぁ、自分の腕がかなり足りないということもあるんですが。

それでは、こんなSSを読んでくださった方に感謝の礼を。



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