悲哀















 赤く、紅く、煌々と燃える夕日の中、彼は一人立っていた。

 剣、槍、鎧、盾。主を失いし屑鉄たちが眠る丘の上に彼は居た。

 剣で、槍で、その身は斬られ、突かれ、貫かれ、その丘に縫い付けられる。

 本来ならばすでに倒れ、死ぬべきはずのその体。

 彼はその手に持ちし、一本の黄金の剣でのみ立っていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 その丘に響くは唯一つの吐息。そして、それは彼の吐息。

 ……何故彼のモノと分かるのか?

 ――それは愚問。その丘に生けとし生ける者は彼のほかに唯一つとしていない。

 その丘は岩の丘。荒野。数刻前までそこは戦場だった。その瞬間ならば多くの者が風を切り、息を吐き、叫んでいたであろう。だが、その戦いもすでに終わりを告げた。今、その丘に立ちし勝者は――彼。

 ――故にその吐息は彼のモノであった。だが、彼もこの場所で死ぬだろう。何故なら、その身はまさに針の筵。剣が刺さり、剣が突き出る。血は流れ続け、その身にまとう紅き衣は本来の赤では無く、暗き死の赤に塗りつぶされる。それで死なぬのは人間ではない。――幸運にもか不幸にもか、彼は未だ人間であった。

「はぁ……皆に、お別れ……言えたら、良かったん……だけどな……」

 彼は呟く。脳裏に過ぎるのは故郷にいるであろう人達。そして――理想郷で眠っているであろう愛しき人。しかし、その誰にも会えない。ここで彼は死ぬのだから。

 彼の瞳は濁り、耳も遠い。頭の中もノイズばかりで落ち着いて考えることも出来ない。その頭でわかるのは自分の死のみ。すでに後悔は無い。そんなモノ、彼女と別れたときに捨てた。それにこの戦いに巻き込まれた人々も契約により助かる。どうやったら後悔が出来るのか。

「――アー、チャー」

 ふと、彼の頭に皮肉屋で決して相容れないと感じた者の姿が過ぎる。最後に呟くのがあんな奴の名前とは、彼は嘆息する。だが、なんとなく分かる気もするのもまた事実。

 いつ頃からか彼の髪は白髪に、肌は褐色になっていた。それを見た彼は自らをアーチャーだと間違い、そして理解した。アーチャーは自分なのだと。その時は苦笑した。確かに彼と自分は相容れないはずだと。

 ただ。何故自分があのようになってしまったのか彼にはわからなかった。確かに今彼は味方、いや、助けてきた者の裏切りによって死のうとしている。だが、彼は今あのようにはなっていない。未だ『正義の味方』を信じている。何故だ――。

 ――もう彼には考えることも出来ない。彼の足や腕の力は抜け、ずり落ちていく。それと同時に彼の手にある剣もまたその先が見えるほどに透けている。いや、その剣だけでない。丘にある剣のほとんどが今まさに消えようとしていた。それはすべて彼が創ったということの証。そして彼の体に刺さっている剣もまた消えようとしている。それは自らが創ったモノに貫かれたという事。――違う。彼は自分自身によって貫かれたのだ。彼の剣は彼のイメージ。彼の内より取り出したモノ。故にそれは彼自身だった。

 剣を作り出し、その剣によって貫かれる。それは剣である彼にとって当然だったのだろうか? 彼の知り合いである赤の彼女ならばそんなわけは無いと断言したであろう。だが彼には当然のように思えた。剣を収め、剣に貫かれる。それはまさに鞘である自分にとって当たり前の事、そう思えたのだ。

 赤く、紅く、煌々と燃える夕日の中。

 未だ、主を失いし屑鉄の丘の中。

 彼はそこに倒れていた。

 そこにあった屑鉄の他に死を見取るものも無い。

 だが、彼は微笑んでいた。

 彼は鞘。

 主は剣。

 すでに彼は剣を見つけ、自分自身に収めた。

 今その場所にその剣は居なくともそれは変わらない。

 故に彼は微笑んでいた。

 剣と交わした盟約を守った事を誇りに思って。

 これからも盟約を守ることを再び誓って。














 ――だが、彼に待っているのは絶望のみ。

 『世界』に裏切られ。

 『理想』は消え去り。

 『想い』は歪む。

 その先に待っているのは絶望。

 絶望の淵に辿りし時。

 彼は真に自らがアーチャーなのだと悟る。

 アーチャーを理解する。

 そして彼に残るものは自らである剣のみ。

 主である剣を収める鞘であることさえ捨てることとなる。






I am the bone of my sword.
体は剣で出来ている。

Steel is my body,and fire is my blood.
血潮は鉄で 心は硝子。

I have created over a thousand blades.
幾たびの戦場を越えて不敗。

Unknown to Death.
ただの一度も敗走はなく、

Nor known to Life.
ただの一度も理解されない。

 Have withstood pain to create many weapons.
彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。

Yet,those hands will never hold anything.
故に、生涯に意味はなく。

So as I pray,unlimited blade works.
その体は、きっと剣で出来ていた。






 彼は折れた剣。

 折れた剣を直すは炎を操りし鍛冶師。

 ならば――。

 ――彼を治すのは紅き者のみ。



























英霊として
ちょこんと考えろ

こんにちは、風鳴飛鳥です。

今回は……一応士郎ということにしておきます。

何故なら弓はどんなルートを辿ったのかわかんないから。

可能性としてはセイバーが高そうですが凛という可能性も。

ただ、桜殺してっていうのは無い様な気がするのは自分だけでしょうか?

自分はあれだともう少し士郎が狂いそうな気がするんですけどねぇ。

それでは、また今度。

ちなみに詠唱はエミヤの方です。



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