東電・新信濃変電所の外観を見る

<2012年2月3日>

掲載日2012年2月7日                  斉藤 清

 2月3日、あさひプライムスキー場を滑った帰り、東電の新信濃変電所の前を通ったので、入口まで行って外観を見て来た。

 現役時代、周波数変換装置(50Hz/60Hz)を建設中に、一度出張した変電所である。

 新信濃変電所は、長野県東筑摩郡朝日村古見に建設された東京電力の変電所。周波数変換所を併設している。

 新信濃変電所は、500kVという超高電圧を扱う送電用変電所。 周囲を野菜畑に囲まれた広大な敷地には、変電設備に加えて周波数変換装置を備えている。 そうした特異性から、殆どの変電所の制御は無人化されているが、ここは重要な拠点として現在も有人による24時間の監視体制に置かれている。

 この周波数変換装置は、東日本大震災の後、中部電力や関西電力の60Hzの電力を、東電、東北電に融通してきた。また今冬の激寒で関西電力の電力の余裕が逼迫しているので、50Hzの東電から60Hzの関電に電力の融通を始めているらしい。

  
 50Hzの送電線と60Hzの送電線が並んでいる。
   
 変電所の入口 周波数変換装置 
   
周波数変換装置  マイクロウェーブによる遠隔制御アンテナ。 

変電所として

 長野県を流れる犀川の上流には、東京電力が建設した大規模な水力発電所が点在している。 梓川の上流には安曇発電所・水殿発電所があり、2つの発電所を合計して最大868,000kWの電力を発生する。 また、高瀬川の上流には新高瀬川発電所があり、最大1,280,000kWの電力を発生する。(これらの発電所はいずれも揚水発電所である。原発の稼働が大幅に減少したので、揚水発電所の稼働率は低下傾向である。)

 これら大容量の水力発電所では、発生した電力を275kVという高い電圧で新信濃変電所に向け送電している。 新信濃変電所では受けた電力を変圧器によって電圧をさらに上昇させ、500kV送電線「安曇幹線」を通じて首都圏に向け送電している。

周波数変換所として

 
 赤が50Hz送電網、青が60Hz送電網。(少し古い。)
(インターネット百科事典ウィキペディアより引用)

 新信濃変電所は、周波数の異なる交流電力同士を相互に変換する設備 (FC, Frequency Converter [Frequency Changer] ) を有している。 東京電力の送電線のほかに中部電力の送電線も接続されており、50Hzの東日本側と、60Hzの西日本側とで周波数の相違という壁を越えて電力の融通を行う。

 1977年:1号FCの運転を開始。変換能力は最大300,000kW。屋外に設置されている。

 1992年:2号FCの運転を開始。変換能力は同じく300,000kW。改良によって変換能力をそのままに規模が縮小され、専用の建屋を設け屋内に設置。

 合計600,000kWの変換能力を持つ新信濃変電所は、同じく周波数変換設備を有している佐久間周波数変換所(300,000kW)、東清水変電所(300,000kW)と共に、50Hz/60Hzの電力の融通を行っている。日本全土で50Hz/60Hzの周波数変換設備は、合計で1,200,000kW(1,200MW)しかない。これは新鋭原子力発電所の一基の出力程度である。日本の全発電電力の1%以下しかないのである。50Hzと60Hzの連携送電線は、500kVでなく275kVしかない。

 なお、北海道電力と東北電力はどちらも50Hzであるが、津軽海峡を海底電力ケーブルで連係する場合、交流ではその性質から不都合なので、500kV(=±250kV)の直流送電とし、それぞれの連携変電所で交流に再度変換している。この直流送電の融通電力は、600,000kWである。

 同様に四国電力と関西電力はどちらも60Hzであるが、同様に紀伊水道直流送電連係(阿南ー紀北直流送電連係)で、海底電力ケーブルを通して電力の融通をしている。500kV(±250kV)、直流送電の融通電力は1,400,000kWである。

 今、電力再編が言われ、発電と送電の経営を分離する案が検討されているようだが、日本の電力の宿命である50Hzと60Hzの二つの周波数が混在する送電系統では、送電部門を今の電力会社から切り離した運営を考える場合、大きなネックになるであろう。鉄道のレールが狭軌と標準軌(新幹線)の二つのレールゲージになっているのも日本特有で、これを標準軌道に統一するのも、現実には非常に困難であるが、今から電力系統の周波数を統一することは、電力会社の設備だけでなく、多くの需要家の設備(工場の受電設備や電動機など)の更新が必要になり、もっと難しいであろう。

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