サムエル・ウルマンの詩「青春とは」(その2)

掲載日2008年3月1日                   斉藤 清

 サムエル・ウルマンの詩、「青春とは」(その1)を2月29日、このHPに掲載した(ココをクリックすると見ることが出来る)が、その続編である。

新井満著、「青春とは」の表紙

 上記の写真は、k.Iさんから贈られた新井満著、「青春とは」の書籍(2005年発行)の表紙である。(その1)でも書いたが、サムエル・ウルマンの「青春とは」の詩の新井満訳自由詩が、美しいたくさんの写真に彩られて載っていた。

 この本によると、「青春とは」のオリジナルは[Youth]で、これを書いたのはユダヤ系アメリカ人実業家のサムエル・ウルマン(Samuel Ullman 1840〜1924)で、亡くなる6年前の1918年に書いたとされる。80歳の誕生日を祝って祝宴が開催され、これを記念して詩集「八十年の歳月から」(From the Summit of years, Four Score)が私家版として出版された。その巻頭を飾った詩が[Youth]、ウルマン78歳の時の作と言われている。ウルマンは我々が生まれる12年前に84歳で亡くなっている。これらは、(その1)にあるサムエル・ウルマン研究者・作山宗久の著書に詳しく書かれている。

 ウルマンも彼の詩[Youth]もその後は歴史に流され顧みられなかったが、意外な人物・日本占領軍の総司令官だったマッカーサー元帥によってライトが当てられた。元帥はこの詩を座右の銘にしていたらしい。1945年、「リーダーズ・ダイジェスト英語版」12月号に、[How to Stay Young]というタイトルでマッカーサー元帥とウルマンの詩[Youth]のエピソードとともに、この詩の全文が紹介されたのである。

 この英語詩に感動した実業家・岡田義夫(1891〜1968)が、[Youth]を「青春とは」と題して邦訳した。それが幾星霜、地方新聞に掲載されたのがきっかけで、日本中に広まっていったらしい。1970年代になって、財界の多くの有名人の間にも瞬く間に伝わり、さらに広がっていった。しかし当初は誰が翻訳者か判らなかったそうである。

 この岡田義夫氏の邦訳詩と、(その1)で紹介したサムエル・ウルマン研究者の作山宗久氏の邦訳詩が異なっていることから、新井満氏はいろいろ調べていくうちに、リーダーズ・ダイジェスト版に掲載された[Youth]は、ウルマンが書いた[Youth]とは似て非なるもの、即ちウルマンの原著の改変につぐ改変版であることが判ったそうである。新井満氏はこれを知り、心底から驚いたそうだ。

 しかしこれを邦訳した岡田義夫氏は、リーダーズ・ダイジェストに掲載された[Youth]が、まさか改変版だとは思わなかったはずである。「この岡田義夫訳の「青春とは」が日本中に瞬く間に広まっていったのは、リーダーズ・ダイジェスト版の英語詩より、はるかに名訳で翻訳というレベルを遥かに超えた”芸術的創作”をされたから・・・」と新井満氏は書いている。

 以下にリーダーズ・ダイジェスト版の「Youth」と岡田義夫邦訳詩「青春とは」を対比して載せる。

     リーダーズ・ダイジェスト版                Youth                         
          Samuel  Ullman
        青春とは
         サムエル・ウルマン
          邦訳:岡田 義夫
Youth is not a time of  life; it is a state of mind ; it is a temper of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions, a predominance of courage over timidity, of  the appetite for adventure over love of  ease.

青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。

優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、

安易を振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春と言うのだ。

Nobody grows old by merely living a number of years ; people grow old only by deserting their ideals.
Years wrinkle the skin,but to give up enthusiasm wrinkles the soul. Worry, doubt, self‐distrust, fear and despair these are the long, long years that bow the head and turn the growing spirit back to dust.

年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。

歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神はしぼむ。

苦悶や、狐疑や、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。

Whether seventy or sixteen, there is in every being's heart the love of  wonder, the sweet amazement at the stars and the starlike things and thoughts, the undaunted challenge of events,the unfailing childlike appetite for what's next,and the joy and the game of life.

年は七十であろうと、十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。

曰く驚異への愛慕心、空にきらめく星辰、その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰、事に処する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。

You are as young as your faith,as old as your doubt ; as young as yourself‐confidence,as old as your fear,as young as your hope,as old as your despair.

人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる。

人は自信と共に若く 失望と共に老ゆる。

希望ある限り若く  失望と共に老い朽ちる。

So long as your heart receives messages of beauty, cheer, courage, grandeur and power from the earth, from man and from the infinite,so long you are young.
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして偉力の霊感を受ける限り人の若さは失われない。
When the wires are all down and all the central place of  your heart is covered with the snows of pessimism and the ice of  cynicism, then you are grown old indeed and may God have mercy on your soul. 
これらの霊感が絶え、悲嘆の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、この時にこそ 人は全くに老いて神の憐れみを乞うる他はなくなる。

 「千の風になって」を作詞、作曲した新井満氏による「原作詞:サムエル・ウルマン、自由訳:新井満の「青春とは」は(その3)に掲載する。

コンフォートあづみ野のトップ頁斉藤清のトップ頁