日本の成長を阻んでいる仕組み |
掲載日2018年12月27日 外山咊之 |
外山咊之君とは、12/7に東京で行われた大学の電気科昭和33年卒のクラス会「二水会」の忘年会でお会いした。 彼は以前から構造マトリックスを使って、技術だけでは無く、経営の合理化の研究をされていて、前々から忘年会でその紹介を聞いて いたが、内容が僕には殆ど理解できなかった。それで今年の忘年会の折にもこの紹介があったので、文章にまとめてほしい。出来れば その論文を僕が編集しているHPに掲載したいと申し込んでおいた。その論文が届いたので、掲載することにした。 |
日本の成長を阻んでいる仕組み <韓国財界Topとの交流からの反省論> 日本の高度成長が止まる頃の1980年代後期から2010年頃にかけて、『複雑につながる仕組みの見える化のテーブル技術と その際、日本企業を近くで親しみやすい反面教師と認める彼等と議論し、日本とは異なる経営方針に触れる機会があった。 これ等の機会の素となった、私がリードした技術を簡単に紹介する。 Expression4.0 一言でいえば、レオンチェフの始めた産業連関表の各要素をマトリックス・テーブル群で表し、表操作する技術:構 Expression4.1 企業で考えた場合、販売・生産・原価・財務の長いつながりに於ける活動量と金銭価値の構造を分解能よく扱える Expression4.2『風が吹けば→.桶屋が儲かる。』の様に、原因から影響先までの長い因果論理のつながりを、正確性をもって中間 これを実現したMATPLANは計算論理が見えないEXCELと異なり、エンド・ユーザーが、論理ネットワーク・モデルテーブル群に表し では、以下に、少々長くなるが、私の得た情報を列挙しよう。 サムソンの本拠地であるスーオン(水原:京城から南に電車で約1時間)に行ったとき、付近に大学を沢山誘致しているのに気がつき、 彼は、小学5年から早稲田学院で学び、早稲田大学卒後、大学院にて。日本の弱点を研究した。その結果、政府、企業、学会・・に また、長生き時代を迎えつつあり、一つの専門も2~3年あれば獲得でき、人生にも余裕が出てきつつある。さらに、新技術の激し この克服のために、情報のあふれる時代の多様化対応を目指して、従業員各自に3専門の習得を目標とし、夜間大学を多数誘 この数年後、サムソンの従業員に、当政策の成果を聞いたところ、勤務生活が大変豊かになったとのことである。例えば理系 これは、1994年(私の定年退職2週間前)、現代自動車(韓国の自動車の80%を製造)の役員会で、私の開発した、経営の仕組 『それでは、あなたは、日本に尊敬するような経営者はいませんね?』との問に対し、『一人いる。』と応じ『それは誰ですか?』との その後、MATPLANという仕組みの見える化ソフトの追求は激しく、結果的に日本IBMから、ソースを入手し、生産・原価・財務を 韓国で数人から、『 日本人は、あまりにも・・・屋、・・・屋と専門名を言い過ぎる。』と習慣を指摘された。これは、『専門の壁を作っ 最近知った情報によると、4半世紀前の韓国財界には、『IT化が進むと、全ての情報が連なる。情報を工程間でReal Timeに繋 何か所かで次のような話を聞いた。日本に留学している中国共産党幹部の子息が、最近の日本の状況を報告する会合でこの件を サムソン電子の宗 経営企画部長は、マイアミで1991頃より数年開催されたMOT:Management of Technology Confere この最も堅調な現象は、日本の半導体産業は、90年代初め、世界の80%を占め、半導体製造装置メーカーも、全て日本国内 ムソンの脅威は身をもって感じた。』と言っておられた。 1994年の鄭夢九(チョン・モング)会長の絶対価値の追及は、激しく、毎朝、私の後継のMATPLAN担当者に「何時、韓国で使え るのか?』と電話が入る始末であり、諸般の事情で、ぐずぐずしていると、米国IBMのHQに乗り込むと宣言。このため、Source Codeをデモ用として韓国IBMに譲渡した。これをベースにWindows版を作成し、鄭夢九氏お得意のBSC:Balance Score Card方式の全面的採用による原価システムを含む戦略的経営システムを構築した。彼は、これでHarvardを超えろとハッパを かけ、財界に対しても、BSCの効果に関し、実現ツールとしてMATPLANの使用を勧めたとされる。彼は、現代財閥創業者の次 男で、MITのSloan School卒業後、Kansas大学の准教授等を務め、BSCのUSA企業への適用を約10年ガイド・研究した実 績から、Harvard Business Schoolの教授に招聘されたが、親の命令で現代自動車の社長を引き 継いだ実績がある。(トヨタの副社長は、彼はトヨタが最も恐れる人物と発言) 彼は、MATPLANの技術が、鉄鋼業でまず確立さ れたことを周知で、その後、韓国第二の一貫製鉄業(高炉4基 粗鋼2000万ton/年):現代製鉄の経営にも自信を与えた模様。 なお、韓国のBSCの実施回数が、日本より多いことは、浅田孝幸先生(立命館大学経営学部教授、大阪大学名誉教授、前日本 私が開いた表現法による世界は、1983年12月7日 日刊工業新聞のトップ記事(出席者に回覧)となり、これがPOSCO製鉄の 10年ほど前、ロンドンのMiddlesex Universityでの会合で環境とコストへのExpression 4.0 の適用について議論している際 私の驚きは、1973年の第一次オイルショック前に、世界各国の発電所の年間エネルギー効率の比較表で、モスクワの発電所が その理由を調べると、モスクワでは、復水器の排蒸気冷却に、水道水を用い、一般需要に18~20℃の水を配水し、水道管凍 Alan先生からは、『これは、冬季、ホテルの部屋で、Hot表示の水栓がなくとも暖かい水が出てくることでわかる。ヨーロッパで 日本では、火力発電の消費するエネルギーが国全体のエネルギー消費の1/4程度を占めており、近年でも43%近辺、発電以 注:これらの数値は、一般社団法人:省エネルギーセンター発行のエネルギー・経済統計要覧を参照されたい。 この件があってから、私は、東電の上級社員および環境庁の職員に持ち掛けたが、 『電力は経産省、水道は厚労省となっている 洋よりかなり低いことを利用して、海水温度差発電と組み合わせる論文を、横幹連合Conferenceに投稿(2013年) した。 Ⅲ 今後の対策 既に述べた事項から、IT化とグローバル化が進み、世界市民であることを要求される中で、日本の繁栄に重大な影を落とす幾つか ● 縦割指向の変革と意識改革 一つは、日本人に、多専門教育の機会を国・企業が用意し、場合によると、昇進条件にも入れる。これを、若いころからの、 発生している縦割り弊害事象を上位組織が把握・調査できるようにし、変革案を発想・提案できるように組織編制に組みこむ。 ● 相対価値観から絶対価値観への変革 著しく経済環境、情報環境が変わる世界に於いて、広く変革論を起こし、経営者、教育の基礎に織り込む必要を感じる。 ● システム化の観点からの促進策 私が進めてきたExpression4.0は、複雑につながる仕組みの見える化を促進する文法であり、文理融合を促進してきた。その実現道具:MATPLANは日本で150件ほど販売された。これらには、製造業、食品業、金融業、電力、大学など、殆んど全産業への適用 可能性を示す状況にあった。当時は、上場企業のモデルをコンサルテイングで作成し、良な稼ぎToolとされた。しかし、日本IBMは200 0年に『150件は、世界的には少なすぎる。競争製品もない状態は、価値がないことの証拠』と、HQの製品部門の強い命令で発売禁止 になった。この後、復活に努めたが、不幸な事件が次々と重なり、日本では、停止状態にある。韓国財閥等では『この価値を日本に教え るな!』となっており、この復旧・発展が残された私の課題となっている。 競争相手であった日本の大手コンピュータ・メーカーは、開発に着手したが、いずれも大失敗した。私の年齢と健康状態を考えると、こ の復元を果たすことが、残された使命であり、前者の課題に応える余裕は残されていない。 ついては、前2課題については、国民の感度を上げ、具体的な問題の明確化、制度変更の企画、実施プランの提示、有効組織への これらの活動には、昨今のIT MediaであるHome PageやSNS等をフル活用して、日本人の自覚を確立・討議し、対策喚起や実行 |
HP編集者コメント このHP編集者も昔・大学時代の専攻は強電(弱電が通信、放送、映像などの電気回路、半導体など)を専攻し、電気機械特に大型の 発電機に興味を持っていたので、その思い通り、大手電機メーカーで発電機と大型変圧器の開発・設計に携わってきたが、タービンの 蒸気を水に戻し再度ボイラーや原子炉で加熱して高圧・高温の蒸気にして蒸気タービンを回転させるのだが、タービンの排蒸気を水に 戻す復水器を冷却するには、大量の海水が必要になるのである。しかしタービンの設計部門と発電機の設計部門は別だったこともあり まさに彼の言うとおり縦割り組織になっていたので、まったく排熱利用などは考えの外だった。今頃、僕が反省しても役に立たないが、 彼の説は単純で新技術の必要もないので、東京湾辺りに旧式火力発電所のリニューアル化で新設する大型新鋭火力発電所などで、 実現できないものかなと真剣に思う。 彼と一緒に仲間数名で、当時日本で最大の佐久間水力発電所と佐久間ダムを見学したことがあると記憶している。彼も当時の強電を 専攻したが、それにしてもこの歳になっても、相変わらず世界を股にかけて研究している、そのバイタリティには驚愕するのみである。 ただ、文中のモスクワの火力発電所の年間エネルギー効率が85%と驚異的な値であるが、蒸気タービンの排熱利用でもこれは怪し いのではないかな? |
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