波来港と板戸港の堤防釣り(2003年3月30日〜31日)

 
 3月から4月上旬の海は気紛れな季節風と不安定な水温の影響でどこに出掛けても
釣果は悲惨な結果となる。それでも仕事の都合で数カ月も釣りをしていないため禁断
症状が出てくる。乗合船の釣りなら地元の湘南・江ノ島周辺からいくらでも釣りの機会
はあるのだが船酔いに滅法弱い釣友G氏と一緒に出かけるにはボート釣りか堤防釣り
となる。
 そこでG氏の所有する会員制リゾートマンション(伊豆高原)で一泊してのんびり
と温泉と堤防釣りを楽しもうという計画が実行にうつされたのは桜が開花し始めた3月
30日〜31日。天候は幸いにも曇り後晴れだったが、釣り場到着の午前10時頃から北
寄りの風が強く吹き始め、そのため期待をしていた穴場(伊東サンハトヤ裏のテトラポ
ット)を途中で諦めざるを得なかった。
 
  ただ理由は他にもあった。干潮が午前10時のため潮が引き切っていたためアタリが
皆無で釣りにならなかったからでもある。ではどこで釣ろうかと考えながら南伊豆に向け
てクルマを走らせた。ハンドルを握るG氏がポツリとこう言う。「そういえばもう7年位前
に行った河津の波来港はどうだろう。風向きやウネリの状態を見て釣れそうなら久々にク
ロソイを釣りたいな」と嬉しそうな声で言い切った。ダメなら速攻下田港行きを決めて向
かった。
 
  波来港に到着したのは昼の少し前。先客が先端左手に1名いたが、釣友はお得意の
穴釣り仕掛けにオキアミを付けて釣り再開。潮は徐々に上げ始めていたため、根魚の活
性も高かったようだ。風はそこそこ強かったがうねりは小さく釣りにくくはなかった。

 釣友は昼直後に27cm前後の巨大なクロソイを釣り上げ御満悦。その後もほぼ同サ
イズを1尾釣り上げ上機嫌。ところが、この波来港は投げ釣りはまったくの不向きで、海
底はかなりの範囲で岩と海藻が密集している感じだ。唯一堤防ほぼ正面にある砂地帯
もシロギスの生息地として相応しくないのかハリに付けたアオイソメはほとんど手付か
ずのまま戻ってくる。たぶんまだシロギスのシーズンには1ケ月以上早いのかもしれない。
 昨年は驚異的な暖冬で水温の上昇も例年になく早かったと記憶しているが今年は違う
ようだ。
  
 とにかく、初日の釣りは釣友の釣った良型クロソイ3尾が刺身と煮付けとして食卓に並
べられたことは確かである。塩焼きのシロギスは次回の釣行に持ち越しとなった。
 さて、リベンジの2日目は午前10時にリゾートマンションを後にした。
  向かったのは予定とは違った下田漁港の岸壁。当日は朝から天気は良かったのだが、
また昼前から北寄りの風が強くなり、アタリがないこともあって移動を決意。クルマに乗
り込んで走り出した時に風裏のポイントを探そうということになり、行き着いたのが穴場
中の穴場といえる板戸港。水深は浅いが場荒れは少ないという印象を受けた。漁港内は無
料駐車場とトイレがあり足場の良い釣り場として家族連れにも薦められる。
             
 アドベンチャー感覚の好きな釣友G氏は一人で向側の外海堤防に足を運んだ。
 というのは彼曰く「穴釣りとミャク釣りには最高の場所が点在していて仕掛けをどうし
ても入れたい」というので別行動で釣りを再開。
板戸港は船道である港口には砂地帯が広がっていたためチョイ投げで待望のシロギ
スが釣れるかもと勝手に判断。アオイソメを付けた流線ハリのシロギス仕掛けを斜め
左方向に軽くキャストしてゆっくりと引き摺ってくる。海底が白く見える砂地帯を丹念に
探ってもシロギスどころかメゴチやキューセンからのシグナルもない。
 
  遊び心でブラクリ仕掛けを垂らしていたテトラ用1.5mの短竿に巨大なカワハギがヒットしたのは午後2時を少し回った頃だ。その30分後に起きたハプニングは刺激的だった。
 
 同じ場所に置竿で5.5gのシルバーメタリックのブラクリ仕掛けを垂らしていたら、今度は
30cm超のアカメフグが掛かったのだ。強烈な引きと左に横走りする動き方からとんでも
ない大物(クロダイ)を期待したのだが、焦茶色にオレンジ色の瞳が印象的なアカメフグ。
道糸を手に取って堤防上に抜き上げた瞬間はまだフグだとは思っていなかった。
 周囲のギャラリーから「アカメフグですネ」と告げられると調理師免許のなに自分が悔しく、食べられないのだから写真だけを撮って海中に返した。
 
 その後、22cm前後のウミタナゴを追釣して午後3時40分に納竿とした。勇んで外海側
の堤防に一人で向かった釣友は、テトラポット際で約24cmのクロソイを1尾釣っただけで
終った。北風が強く吹いた中とりあえず食べられる魚を釣った満足感で板戸港を後にた。

 伊豆半島の桜の花が風で散りかけ始める景色を窓越しに見ながら帰路についた。春の海は釣り人にとって難しいものだと思いつつ。

釣場速報(釣り新聞)掲載