秀正丸のワラサ釣り(宇佐美港)
2007年9月28日
 今年のワラサは絶好調だ。中でも初島沖はどの船宿も安定した釣果を記録し続けている。潮具合の良い日ならトップ10本以上も釣れているというから間違いなくフィーバーと言って良いだろう。
 しかも型が徐々に大型化し、4kgオーバーも多く混じるようになった。
 そこで大型のワラサと再度対決しようと思い3回目の初島詣でに挑戦してきた。時は9月28日。
 場所は宇佐美港の秀正丸。出船は5時30分だというのに1時間前の午前4時30分にはほとんどの釣り人が港に到着し、船の前に荷物を並べて準備万端といった感じ。平日の金曜日だというにのになんという熱気だろう。
 船長の指示で各人の釣り座が決められていく。片舷9人、両舷で18人だが、最後部の大ドモに2人が竿を出し、計20人が乗り込んだ。それでも決して窮屈感はない。いかに秀正丸が大きいかが分かる。
 筆者は右舷ミヨシから2番目に座った。釣り座にはロッドキーパー装備されていて各席ごとに小型イケスが設置されているのも驚き。もちろんワラサは入らないものの手洗いとして使え、循環パイプでいつも海水が入ってくる。こうした快適装備も秀正丸の人気の秘密だろうと感心した。
 日の出時刻に合わせて各船港を出る。初島沖までは約25分。ゆっくりしたクルージングで初島第一漁港前のワラサポイントを目指す。天候は晴れだが南風がわずかに吹いて気持ちが良い。海上はウネリもなく凪。ミヨシに近い場所に座ってもほとんど揺れを感じない。
 協定時刻の午前6時を待って釣り開始。船長の「ハイどうぞ、タナは下からハリス分プラス2m」という指示。ハリス6mなら8mだが、クッションゴムが1mとすれば計9mが指示ダナということになる。筆者の左隣の樋口さんの話しによれば「ワラサの場合、指示ダナは重要です。クッションゴムの長さも考慮して計算した方がいいですよ」とアドバイスを頂戴した。
 船中トップで魚を掛けたのは右舷トモから2番目に座った広川さん(茅ヶ崎市)だ。ムーチングロッドが気持ちよく海中に突き刺さり強烈な引き込みに耐えている。ワラサフィーバーの始まりだ。朝のモーニングサービスに出遅れればボウズもあるワラサ釣りだけに各人コマセを振る手にも力が入る。
ワラサを一番手に上げたのは、やはりベテランの広川義晃氏(茅ヶ崎市)だった。
 すると今度はベテラン樋口さんのムーチングロッドがひん曲がった。ドラグをギッチリと締めてのヤリトリは傍目にも迫力満点。この瞬間がワラサ釣り最大の醍醐味だ。
 手際よくタモ取りをしてくれるのが中乗りさんだが、当日はなんと2名が素早い取り込みをアシストする。待望の1尾目は良型。検量はしていないものの4kg近い。
 振り返ると船内が慌ただしい。左舷でも良型が上がった。だが、隣同士でのオマツリで上がってくるケースが多い。中乗りさんの檄が飛ぶ。
 「竿を立てて、魚をもっと浮かせて。ダメだよ、走らせたら。またオマツリしちゃうから」。バシャバシャというワラサの海面で暴れる音の次ぎはドタンという魚体が船内に取り込まれた心地よいサウンド。それが右から左、前からと思ったら次は後方からだ。忙しくタモを持って動き回る中乗りさんの動きに無駄はない。
 タモ取りが終わるとすぐに魚を出すのだがハリが網目に食い込んで外せないと見るや、「ハリス切って。すぐに付け替えてやって」ととにかく忙しい。釣れる時間が短いことを誰よりも知っているからだ。釣れる時間に仕掛けが海中にあれば釣れる確率は無限に高くなる。数多く釣って欲しいから激しい言葉が口をついて出てしまう。悪気はないのだ。
やった!満面笑みの内山紀一氏(寒川町)
 筆者も5人ほどのワラサをカメラに収めたところで竿を出すことにした。
 時間があまりないことは分かっていた。時計の針は6時30分。もう少しだけモーニングサービスはあるだろうと甘く考えていたのが大きな間違いだった。左で樋口さんが立続けにワラサを釣り上げる姿を何度も見せつけられたびに「大丈夫。まだ釣れるはず」と思っていると15分経過しても筆者の竿先にアタリは訪れない。ついに午前7時を回った。本日のゴールデンタイムは終了してしまった感じである。空しくコマセを詰め替える音と電動リールの空巻音だけが船内に響く。中乗りさんの元気の良い声も聞かれない。
 それでも樋口さんだけは黙々と手返しのスピードを緩めない。2分から3分に1回のペースは凄い。6本を釣り上げて竿頭に輝いた樋口さん(町田市)にワラサ釣りの極意を聞かせていただいた。
 「大切なのはタナ取りとコマセ振りと誘い方です。この3点がキッチリと出来ていれば釣れるはず。ハリスとクッションゴムの長さを計算した正確な指示ダナ。コマセの出し方は9mなら3m、3m、3mの3回区分。最初の1回は軽く弱めに。2回と3回目は強く振って多めに出すこと。コマセの煙幕の中に付けエサが必ず入るように竿を振ることも重要です。私のステンカンの穴は上が2つ、下が2つしか開いていません。それで充分です」
 ベテラン樋口さんの話をもっと早く聞いておくべきだった。結局、筆者の竿は最後までワラサに嫌われ、残り時間20分で35cmのヒラソウダが1本掛かっただけで午前10時30分に沖上がりとなった。
 10月1日現在、初島沖と南伊豆の白浜、横根周辺でもワラサが好調に釣れている。型の良いワラサに会いたい人は速効で釣行計画を。
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吉明丸のビシアジ釣り(走水港)
2007年10月6日
 同じ東京湾のビシアジ釣りの中でも一際美味とされるのが走水ブランド。
 特に10月に入ると脂が乗り、釣趣だけでなく食味も抜群に良くなるのは衆知の事実である。取材釣行に出かけたのは10月6日の土曜日。船宿は周年アジを狙う1日船を出している吉明丸。出船は7時だが宿に到着したのは午前6時。港にクルマを止めて女将さんに挨拶をすませ船長の到着を港で待つこと約15分。
 船に乗り込むと船長と中乗りさんが忙しくコマセやバケツを準備している。
吉明丸は予約乗合というシステムをとっているため予約の乗船人数が揃うと、定刻前でも港を出る。当日も筆者の他に3人の乗船客が乗り込むと定刻より20分も早く舫いを解いてポイントに向けて鈴木雅之船長の操船で走り出した。
 当日の天候は穏やかな晴れで風も波も弱い。絶好の釣り日和だ。筆者は撮影がしやすい胴の間を選択。4人全員が右舷に釣り座を構えた。ミヨシから2番目が筆者の釣り座だ。
 最初のポイントは猿島回りだから目と鼻の先と言った感じで、ものの15分で着いた。水深は22m前後。アンカーを入れてカカリ釣りの様相。船長「水深22mです。タナは下から3mでやって下さい」というアナウンスで釣りスタート。時計の針は7時を数分過ぎただけ。
 ところが、こないのだ。アジからのアタリが。たぶん魚探には濃い反応が出ているのだろう。コマセが効き出せば必ず喰ってくるはず、という船長なりの判断があったに違いない。空しくコマセの詰め替え作業が延々40分続いた頃に痺れを切らせた船長の「上げて下さい」というちょっと不機嫌そうな声で合図が出された。
 移動したポイントは第2海堡が遠くに目視確認できるポイント。水深は浅く20m弱だ。今度はエンジン流しでアンカーは入れない。アタリが出ればアンカーを入れる予定だったのだろう。その後も2度、3度とポイントを探索しながら魚探を睨む鈴木船長の努力の甲斐が実って待望のアジ特有のアタリが竿先に伝わってきた。両隣でも電動リールのスイッチを入れ巻き上げ音が聞こえる。
 しかし、型が小さい。本命アジとはいえ全長で約22cmでは「中大アジを看板」にする吉明丸の乗船客には不満であろう。
 実際、筆者がカメラを向けると「こんな小さいアジでいいの? 」と恥ずかしそう。それでも約1時間前後アジらしいアタリがなかっただけにいわゆるお土産アジとしては文句は言えない。
 浅い場所だが釣り方は結構シビアだ。海底の起伏が激しくマメにタナを取り直さないと喰いが悪い。底からビシを2m巻き上げて1回、次にもう1m巻き上げて再度コマセを振り出す。その後5秒でタナを取り直すと3mもビシが深く沈むのだ。
 指示ダナ通りの3m上げをキープするにはとても忙しい底ダチの取り直しが要求される。うまくアジの棲息するタナに合うとクククッというアジ独特なアタリが出る。
 しかし、筆者のタックルは新調した先調子のヤリイカ竿。オモリ負荷は120〜180号。吉明丸の指定ビシは150号だから全長20cm程度の小アジでは小気味良いアジからのシグナルを強く感じることはできない。実はもう1本胴調子のビシアジ竿を持ち込んでいたのだが、コマセの振り出しが弱くなるのでは判断して使うのを断念した。
 それでもキッチリとお土産アジを各自3〜7匹ほどクーラーボックスに収めていた。その後、アタリが遠く厳しい喰い渋り日と覚悟を決め、船長は得意の金谷沖に船の舳先を向けて全速で走り始めた。すでに11時をとうに過ぎていた。鈴木船長は最後の砦に賭けたのだ。
22匹の良型を次々と釣り上げて、本日の竿頭となった浅井氏。(小平市)
 17トンの大型船だけものの15分で金谷沖に到着。「ハイどうぞ。水深は93m。
下から4〜6mでやって下さい」という指示ダナを告げた。左隣の浅井さんの竿がほぼ指示ダナに合わせた途端にアタリが訪れたようですぐに電動リールのスイッチが入った。やや胴に乗る浅井さんの竿が気持ちよく曲がっている。良型を暗に物語る光景である。
 海面に浮かんだ焦げ茶色の魚は紛れも無くアジだ。しかも30cmは軽く越えている。
 思わずタモを手にハリスを手繰る。慎重にタモに入ったのは本日最初の大アジといえるサイズ。これを皮きりに右隣の赤羽さん、トモに座った片岡さんにも順調に3cmオーバーの良型アジが掛かり始めた。
 午後1時を少し回ってから訪れた高活性タイムだ。筆者も遅ればせながら30〜34cm級を次々に釣り上げる。こだわりはタモを使わないこと。1回だけバラシはあったがなんと3点掛けだった。2番目のアジが海面でハリ外れでリリースとなった。
 上顎の堅い場所にハリ掛かりさせられないのは釣り人側の技量の欠如だから「タモは使わせない」と言われたのは東伊豆の某船長。筆者はいまだに心に残っている。釣りは人間と魚の対決だから外れて海に落ちたら人間の負け。真剣勝負にこだわる船長だった。(存命中)
 話しを実釣に戻そう。鈴木船長の丹念な操船は幾度となく繰り返される。潮回りで「反応が抜けたのでまた探します。魚の移動も早いので仕掛け投入は遅れないように」と指示が飛ぶ。水深90mのアジの群れと対峙する真剣勝負は約1時間ほどで終わった。全長30cmを超えるアジの引きはタナが90m近い深場でも関係なく楽しめた。海面でのスリリングな攻防も釣り人にはたまらない魅力だ。
 赤羽さんの掛けた良型マトウダイは確かに海面でハリス切れとなった。海面を漂うマトウダイを見てすかさず船を近付けてタモ入れを手助けしてくれた船長の素早く的確な操船には頭が下がった。
外道でかかったマトウダイを釣り上げて満足そうな赤羽正光さん。(横浜市)海面でハリス切れになったところをからくもゲット出来たのだから喜びもひと塩だろう。
 結局、午後2時30分ギリギリまで釣らせもらったが、筆者はアジ11匹に良型サバ1尾外道はカサゴと針を飲んで死んでしまったトラギスを持ち帰った。アジのサイズは30〜34cmが揃った。
 当日の竿頭は左隣に座った小平市の浅井薫氏。22匹でダントツであった。改めてビシアジも喰い渋りになると、どんな手口を駆使しても難しいと痛感させられた。同時に活性の高い群れを捜しまわってくれた鈴木船長に感謝である。
 竿頭の浅井氏によると「11月頃にはアジだけでなくサバも凄く脂が乗ってとても旨くなるので楽しみです」と嬉しそうに話してくれた。
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真正丸のメジ&ワラサ(江梨港)
2007年10月17日
 今年の秋は相模湾を中心に青物大フィーバーで盛り上がった。ワラサやメジマグロ、本ガツオなど豪快でエキサイティングな大物釣りを満喫された人も多かったようだ。
 気になっていた駿河湾でもメジ&ワラサが10月に入って上向きということで取材釣行を試みた。10月17日の水曜日に出向いたのは江梨港の真正丸。
 沼津というより西伊豆の雰囲気が漂う長閑な港町である。出船が朝6時30分ということだが6時前にはすでに青物好きの4人が乗り込んで準備に余念がない。昨晩までやや強く吹いていた北東風も夜明け頃にはほとんど止み、静かで穏やかな沼津らしい凪の海に戻った。天候も晴れで絶好の釣り日和となった。
 定刻よりも少し早く港を後にして最初のポイントである平根(ひらね)にはゆっくり走って15分で到着。僚船がこじんまりとした集団を作っていた。
魚探を睨みつつ、小林大介船長が決めたポイントで釣り開始の合図が出た。
 「はい、どうぞ。やって下さい。タナは32mだから38mまでビシを落してコマセを振り出して指示ダナに持ってきて」ととても親切なアナウンスにホッと息をつく。
 なぜだか船内にピリピリした緊張感や焦燥感はない。初島沖のワラサ釣りとは一線を画す。船長は出船前に「メジの状況があまりパッとしないのでワラサをまず狙います」と釣況の良い魚を狙うということだ。
 ところが、釣り開始と同時にソウダガツオの猛攻撃に会う羽目になる。
 左舷ミヨシに座った駿東郡の米田さんは「ソウダガツオにやられて仕掛けが降りないよ」とボヤく。右隣の桜さんも同じ。
 ただ同じソウダガツオでも桜さんが釣り上げたのはヒラソウダ。全長は40cm前後だが美味なヒラソウダなら無碍にリリースすることはない。しっかりと血抜きをしていたのは言うまでもない。
ヒラソーダを釣り上げた桜康弘氏(三島市)ヒラソーダはマルソーダより扁平で体高もある。なかなか美味な魚で市場での価値も高い。
 左舷胴の間に釣り座を構えた筆者もソウダガツオを釣り上げるが、日頃の行いが悪いためかマルソウダが多い。それでも新鮮な魚は調理の仕方やちょっとした工夫で美味しく食べられる。循環パイプで海水が入るバケツの中でエラを千切り血抜きをすれば良い。海水氷のクーラーボックスに入れ、持ち帰ることに。
 午前8時を回った頃に活性が高まったのかアタリは多くなった。ただし本命ワラサからのアタリは船中誰にも訪れない。
 痺れを切らした船長はマメにポイントを変えソウダの群れを避けて新しいポイントを探索してくれる。それでも竿先を上下に微振動させるのは良くてヒラソウダだ。
そんな状況の中、米田さんは良型のイサキを釣り上げて嬉しそう。「引き味はなんかマダイのような感じだったんだけど」と照れ笑い。
 標準仕掛けはハリス6号の4ヒロ。ワラサと同時にマダイやメジも釣れるためハリスは6号まで落しているようだ。
ソーダガツオばかりが釣れ続ける中、良型のイサキを釣り上げた米田雅彦氏(駿東郡)。緊張感がゆるみ、思わず照れ笑いの表情が出る瞬間だ。
 朝の時合が過ぎたと判断した筆者はハリス4号5ヒロに下げてみた。すると今までとは違った強い引きで何かが掛かった。
 最初はまたソウダガツオだろうと思い電動のスイッチを入れ中速で巻き始めた。残り10mの所で強烈に竿を曲げてきたので「アレ、可笑しいな」と思いつつハリスを手繰ると、なんのことはない40cm前後のヒラソウダ。
 様子を見ていた船長もガックリ。一瞬イナダかと勘違いした筆者も淡い夢に終わった。その後もアタリが来ればソウダガツオ。海面下2m付近をまるで弾丸のように縦横に泳ぎ回る姿を見れば諦めもつく。
 こうしたソウダガツオ対策も船長は考えていた。それは生きアジの泳がせ釣りだ。オキアミではどうしてもソウダガツオの餌食になるため、生きアジを使った釣りに変更する人もいた。実際アジを泳がせていた米田さんは「ワラサらしきアタリは感じたんだけどエサだけ取られてしまって残念」と悔しそうだった。
 時計の針が9時30分を過ぎると、ソウダガツオのアタリも消え、そろそろ本命が回遊してきたのでは、と思ったが船中何も釣れなくなってきた。
 10時を過ぎるとポイントを大きく変えたもののアタリはほとんどなくなった。北東の微風が凪倒れを象徴する日となってしまった。午前11時規定により沖揚がり。ソウダガツオに翻弄された青物五目はそろそろ終了とか。
 船長の話しによると今後はカワハギをメインにしていくと言う。カワハギ人気は沼津エリアでも浸透しているようだ。
 「でも青物はまた突然活性が高まることもあるので状況次第です。メジやワラサが釣れていれば再度狙って行きます」と語ってくれた。
 一つ驚いたのが清潔感漂う船内トイレ。水色の弁座カバーが装着されていて清掃が行き届いている。しかも芳香剤の香りでまったく臭くないのだ。
 これなら女性客にも好評だろう。今までここまでトイレに気を使った釣船に乗ったことはない。
 自宅に戻り、マルソウダをナメロウ状態にしてからツミレ汁にして食べたら予想外に旨かったことを最後に付記しておこう。新鮮な魚は旨い!
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