富士丸のワラサ釣り(網代港)
2007年9月9日
 台風9号が関東地方に接近中の9月3日、初島沖でワラサ爆釣の吉報をネットで確認。今年もワラサフィーバーの季節到来だ。
 台風一過の爆釣を期待して出掛けのは9月9日の日曜日。出向いたのは網代港の富士丸。出船は午前5時ということで自宅を早めに出たのは西湘バイパスが台風による崩落で一部通行止めと聞いていたからだ。途中の真鶴道路も通行止めであったが午前4時前には港に到着。それでも港の駐車場はすでに8割以上埋まっていて改めてワラサ人気に驚かされた。
 当日の天気は晴れで風もほとんどない釣り日和。乗船客は8人。片舷4人ずつで釣りやすい。大型船にギューギュー詰めで釣りをすれば、まず間違いなくオマツリをしてバラすケースの多いワラサ釣りだけに心の中でラッキーと呟いた。
 定刻より少し早めに港を離れてポイントの初島沖を目指す。内田英吾船長の操船は非常に優しく大人しい。波風もない凪ぎの場合でも速度を上げて走ることはしない。それでもわずか25分で初島の第一漁港前のポイントに到着。30隻以上はいたであろうワラサ船団の中で反応を探しながら船長からの合図が出たのは午前6時ちょうど。「ハイ、どうぞ。タナは下から8mでやって下さい。水深50m」。
 筆者の釣り座は右舷ミヨシから2番目。朝一番は太ハリスでバラシを防ぐ意味から10号6mを選択。付けエサはオキアミコマセの中から探すという方式。だが、エサ取り対策も考えて「特船オキアミ」の55ミリを持参して使った。エサを目立たせるために2匹抱合せや3匹掛けにもトライ。
 釣り開始から1時間経って船中誰の竿も曲がらない。外道のアタリすらないのだ。もちろん周囲の大型船の釣り人にもアタリはきていないようだ。
 ワラサ釣りの基本的な釣り方はマダイ釣りに近い。ビシが海底に着いたらハリスが潮に馴染むまで10秒ほど待ってから3回に分けてコマセを振りながら指示ダナに持ってくる。筆者の場合は、3m、3m、2mの巻き上げの毎にコマセを振り出す形をとった。
 指示ダナの8mについて内田船長に話しを聞くと「基本的にハリスの長さプラス2mで指示ダナを出しています」。ハリスが6mの場合は8mでOKということだ。
 船中最初のアタリは左舷大ドモに座った佐藤澄史(厚木市)の竿にきた。「最初は根がかりだろうと思いました。でも魚の引きが分かったので夢中で巻きました。
 人生初のワラサですよ」と嬉しそう。時間は午前6時52分。
(左)人生初のワラサを釣り上げ興奮さめやらぬ表情でポーズを取る佐藤氏。
 それから15分ほどで佐藤さんの左隣に座った猿谷隆夫さん(千代田区)の竿が海中に没した。
 強烈な引き込みにも落ち着いた対応で、電動リールの速度も調整しつつ順調に取り込んだ。
 全長55cm前後のワラサに「小さいよ、コレ」と謙遜しつつも満面の笑みで撮影に協力してもらった。話しを聞くと、佐藤さんの釣りの師匠が猿谷さんということで今日初めてワラサ釣りに挑戦したとのこと。
ワラサを持つ手にも力が入る。でも、なかなか絵になっている猿谷さん。さすが師匠というだけのことはある!(右)
 猿谷さんに仕掛けについて聞いてみた。「ハリス8号の5ヒロ(7.5m)で釣りました。でも佐藤さんの仕掛けは同じ5ヒロでもハリスは6号と細かったんですよ。仕掛けを持ってきていなかったので私の作ったのを貸したんです」と仲の良い師弟関係を見せてくれた。
 その後は、船中に静かで落ち着いた空気が漂う中、内田船長はなんども潮回りを繰り返し、浅いポイントにも移動。水深が30m前後の浅場も狙った。途中から指示ダナが「下から10mで」に変わってからも特に変化はなかった。周囲の大型船での取り込みシーンもほとんど見受けなかった。
 午前10時頃になって潮が多少動き始めたのか外道のソウダガツオが針に掛かってくることが多くなったが、筆者は外道にも嫌われたようで何も釣れないまま、午前11時の沖揚がりを迎えた。
 筆者の左隣の釣り人に色々と初島沖のワラサ釣りについて教えてもらったことがある。
 まず、朝一番でハリス10号を使う場合船中で1時間以上アタリがなければ思い切って6号まで落としてみること。活性の高い日なら8人乗りで1時間以上竿が曲がらない日は喰い渋り日と判断して早めの仕掛け交換が重要である。後はマメにコマセを詰め替える手返しが大切。指示ダナに竿をセットしてから長くて4分、短ければ2分で仕掛けを入れ直すこと。
 マダイ釣りとの違いはワラサがコマセの煙幕に突っ込んでくる青物であるという点だ。活性の高い日はコマセの使用量の多い人ほど釣れる本数が多いという。
 次回は上記の教訓を生かして爆釣を期待したいものである。
 内田船長の話しでは「初島沖がダメでも突然川奈沖で口を使い出すケースもあるので分かりません。台風一過のワラサ釣りは難しいです。これで終わることはないですからまた来て下さい」。
 なんと当日の午後船で0〜4匹と盛りかえした船が多かったと言う。
インデックスへ
島吉丸のイナダ釣り(片瀬江ノ島)
2007年9月11日
毎年8月1日から始まる湘南の夏の風物詩と言えばワカシだ。ブリの幼魚だけに釣趣は格別。特にカッタクリと呼ばれる手釣りは漁師気分を体感できるという点でもオススメ。
 しかし、体長30cm前後のワカシは脂が少なく食味の点では今イチである。そこで、筆者は毎年全長40cm以上の「イナダ」に成長してから釣ることにしている。カッタクリでは指に食い込むほどのダイレクトな強い引きを存分に味わえるから良型なら5本も釣れれば満足できる。
 今年のワカシの成長ぶりを確認しに出かけたのは9月11日。片瀬江ノ島の島吉丸の15号船に乗り込んだ。朝7時に片瀬川の護岸を離れて向ったのは亀城根。航行すること約25分。釣り開始の合図が出されると18人の仕掛けが投入される。カッタクリ道具を使う人が多いものの中には竿釣りにこだわる人も数人いた。
 水深は深いポイントで約30m。浅い場所に移動すると20mと釣りやすい。タナは底から海面直下までといった感じ。特にイナダやソウダガツオなどの青物はコマセの煙幕を追い掛けてくる傾向があるため海面下2mでもハリに掛かることは珍しくない。
 当日の天候は曇天だが釣りを開始する頃には薄日が射し込み風もなく凪。だが、アタリが遠いため不安がよぎる。開始から1時間が過ぎても何も釣れないと凪倒れかもと渋糸をカッタくる手にも力が入らない。
 仕掛けは魚皮バケ(バラフグとハゲ)を2個付けたハリス5号2. 5m前後。ビシは50号〜60号。コマセはアミエビだが筆者はオキアミブロック(500円で受け付け時購入)を少しずつ交ぜ込んだ。
 イナダの群れが訪れたのは午前9時を回ってからだった。左舷で釣れ始めると右舷ミヨシでも「キタ!」と渋糸を強く引っ張り始め取り込む。ドタン、ドタンという重量感のあるイナダの暴れる音が船内に響く。右舷ミヨシから3番目に座った筆者にも強烈な引き込みが訪れ指サックを2重にしている左人指し指に食い込む感触は数年ぶりだ。
妙に暴れ方が強く感じたのはなんと40cmオーバーの一荷だったからである。
 仲乗りさんの差し出すタモにもなかなかスムーズに入らず、「もっと頭をこっちに向けて」と言われるのだが、魚を思うように誘導できない。
 ダブルでこのサイズが掛かると流石に慌てる。
 最後は1匹はタモに入らず強引に抜き上げた。
 ホッと安堵感に包まれたが、右手小指をハリスで切ったようだ。
 指サックは小指まではカバーしきれなかった。その後もポツポツと潮回りするごとに釣れるのだが、群れが回ってくるまでは我慢の釣りとなる。
良型のダブルをゲット!右の小指をハリスで負傷するも何とか取り込めた。
 カッタクリの場合は手を休めることができない。コマセを詰め替えて投入を繰り返し、手繰る手のスピードを変えながら根気よく繰り返す。休む時にはコマセカゴ(ビシ)をコマセ桶において指サックを取る。タバコに火をつけるにも面倒だが、この作業の繰り返しだ。
 右隣では竿釣りで楽しんでいるようだが、仕掛けをウィリー仕掛けにしているためかソウダガツオに遊ばれることが多く苦戦気味。何もアタリがないよりは良いが本命が食い付く前に外道が釣れるとどうしても手返しが悪くなる。その点、魚皮バケでカッタクリ釣りをしているとほとんどソウダガツオは掛かって来ない。
 活性の高まった午前11時過ぎにミヨシ先端でルアーを投げて誘っていた仲乗り女性スタッフのアイさんになんと3.6kgのカンパチがヒットして慌ててタモで掬う場面もあり、盛り上がりを見せた。
 昼を過ぎると群れの回遊がなかなか訪れなくなりアタリも散発になり手を休める人も出てきた。
仲乗りさんの愛さんルアーでカンパチ
 カッタクリは群れが来るまで手を休める人がいる(筆者も)が、これは自らチャンスを放棄するようなもの。地道にコマセを詰め替えて地道に釣り続けることが好釣果につながる。船内の釣り人が釣れ始めてから仕掛けを再投入していると群れが抜けてしまうケースもあるので根気よく手返しを繰り返すことが大切だ。
 午後1時30分の沖揚がりまで頑張った竿頭の人はなんと19本も釣り上げたとか。筆者は40cmオーバーを7本と小さなヒラソウダガツオを1本で終了。筆者のイナダの最大は全長46cm1kgであった。近所にお裾分けをしても3日ほど刺身、タタキ、塩焼き、照焼きにカマの煮付けとイナダ三昧の日々が続いた。
 最後に付け加えたいことがひとつ。当日乗った15号船の仲乗りさん2人には大変お世話になり色々と勉強になる話しも聞ーかせてもらった。感謝の一語に尽きる。こうしたサービスが釣り客に好評なのだろうと感心した。
筆者の全釣果
インデックスへ
池田丸のカワハギ(腰越港)
2007年9月21日
 9月も中旬頃になると釣りモノが多彩になる。人気の青物に隠れて見過ごしやすいのがエサ泥棒で知られるカワハギだ。
 まだ水温が高いため群れは固まっていないが、今の時期は浅いポイントで大型が釣れるのが魅力である。そこで今シーズンの初カワハギを狙って腰越港の池田丸を訪ねたのは9月21日。良型カワハギ特有の海面下での横走りを何回楽しむことができるだろうか。
 当日は金曜日ということもあって筆者の他はなんと1名だけ。茅ヶ崎市寒川町から来たという芦田健さんと二人で大名釣りを満喫することになった。出船は午前7時。右舷胴の間付近に並んで座り竿を出す。天候は晴れで最後の残暑日となった。
 風もなく波もほとんどない絶好のカワハギ日和だ。驚いたのはポイントの近いこと。港を出てからものの3分か4分で最初のポイントに到着。江ノ島の白灯台堤防の外海側で釣り開始となる。水深は20m前後。根が点在するようで、時々オモリが引っ掛かる感触が伝わる。
 左側に座った芦田さんが最初に釣り上げたのは定番外道のササノハベラ。
 カワハギ釣りでは避けて通れない税金のような外道だ。釣り方は自由だが、筆者はいつも叩き釣りと弛ませ釣りをミックスした方法を好む。竿先を上下に細かく振動させてその直後に道糸を少しフケさせて弛ませる。数秒間待ってから聞き合わせをしてハリに掛ける釣法が気に入っている。
 だが、外道のササノハベラとトラギスのエサ取り外道が活発でなかなか
本命が釣れない。
 やっと芦田さんが良型カワハギを釣り上げたのは午前7時48分。色の濃い縞模様が根回りの海底地形を物語っている。
 その後も外道オンパレードに悩みつつもアタリを取りながら魚を掛ける醍醐味を味わう。
 池田威知朗船長は「外道が活発にエサを取るような潮でないとカワハギも釣れないからね」と言う。確かに水温がまだ25度前後と高いため外道も多彩だ。
良型のカワハギが釣れ出したのは8時50分頃だ。
 中でもカワハギの引き味に非常に近いのがキュウセンだ。しかも25cmオーバーの良型になると穂先をキュンキュンと勢い良く叩くため、「本命だね、コレは」と勘違いしてしまう。海面に上がってきてガックリさせられることは何回となく経験した。
 やっと当日のクライマックスがやってきた。ポイントを江ノ島裏から亀城根回りに大きく移動してからだ。筆者の竿がカンカンカンと金属的なアタリを伝え、本命を釣り上げた。約10カ月ぶりのカワハギとの対面である。
 全長約20cmだが、活性が高いこの季節のカワハギは海面で横走りする元気の良さが特徴だ。時間はすでに9時45分を回っていた。まるで真夏のような強い陽射しに閉口しながらもカワハギ独特の引き味を久しぶりに堪能した。と書きたいところだが、筆者は腕が未熟なため楽しめたのは2回だけ。隣の芦田さんはこのポイントでも順調に数を伸ばし計7匹も釣り上げたというからリッパ。
 どこに違いがあるのかと言えば、誘い方のバリエーションが豊富で多彩。
 叩き釣りばかりではなく聞き合わせを間に挟んだり、弛ませ釣法を最初に組み入れてエサ泥棒の攻撃を巧みにかわして釣り上げていた。
 外道のベラやトラギスの他にも珍しいオニカサゴやエソまで釣り、種類だけで言えば間違いなく10目釣りを達成していたことだろう。
食いが活発になる。いよいよクライマックスの到来か!
 要するに、魚のアタリをしっかり取ってハリに掛ける技術と経験が違うという感じがした。筆者の場合は、ハリに掛けるというより最後には仕掛けを弛ませてエサを喰わせてハリに引っ掛けるという姑息なテクニックしか持ち合わせていない。
 釣法の引き出しが少な過ぎるということである。後はキッチリとしたエサ付けも重要。船宿の冷凍アサリは上質で小さな粒が多いため丸くこじんまりと付けて最後のハリ先をワタの中に忍ばせる付け方を実践できていれば、もう少し釣れたのではと反省するばかり。
 また仕掛けのハリ&ハリスの交換をマメにすることも大切。バラシの原因の大半はハリ先が鈍くなったまま使い続けた点。ハリスごとハリを交換できる仕掛けを使うことも釣果を上げる必須項目といえるだろう。
 結局、午後の盛り上がりもなく午後2時少し前に沖上がりとなった。
 ひとつだけ付記したいのは「カワハギ職人」と呼ばれる添加溶剤。昨年購入した残りを持ち込んで使ってみたのだがエサがグッと締りエサ付けがとても楽になった。保管状態は決して良く無かったと思うのだが、1年経過しても充分効果はあった。
 船長に今後のカワハギ釣りの状況を聞いてみた。
 「今の時期は浅い場所で大型を狙っています。外道は多い時期ですが外道が釣れるようでないとカワハギの喰いも悪いですから。一番良い時期は11月から12月末頃です。群れが固まり、数釣れる時期で、食味も抜群に良くなりますから楽しみにしてまた晩秋の頃に挑戦して下さい」と語ってくれた。 
インデックスへ