義和丸のタチウオ(横須賀の新安浦港)
2007年7月22日
 6月下旬から一気にヒートアップした東京湾の夏の人気ターゲット、タチウオ。
この魚ほど機嫌の良い日と不機嫌な日の差が大きいことは案外知られていない。連日爆釣が続いたかと思うと突然姿を消したかのように喰いが激悪になる。筆者が釣行した前日から超喰い渋りモードに突入したのは普段の行ないが悪いからだろうか。
 7月22日の日曜日の午前船に乗り込んだ。お邪魔したのは横須賀の新安浦港にある義和丸。天候は生憎の雨。小雨なら気にすることはないのだが、時折強く降ることもあり、当日の激渋ぶりを案じていたのかもしれない。
 驚いたのは当日の乗船客の人数である。筆者が構えたのは右舷ミヨシから3番目。
午前7時20分の出船より30分以上前に到着したのにもかかわらずすでに釣り座はギッシリ。出船前には両舷で18人の大盛況である。雨天でもタチウオの人気に陰りは見られない。定刻より少し遅れて港を出発しポイントの金谷沖まで約30分のクルージング。
 到着すると千葉県側からのタチウオ船団も集結し、ざっと30隻の釣り船が群れを探索しながら潮回りを続けている。船長から釣り開始の合図が出たのは午前8時15分頃だ。「20mから5mまで探って下さい」。この時期のタナは深くても30m程度だからオモリは軽くて良いはずだが、筆者は両隣の人にオモリ号数を確認して結局80号を選択。義和丸では、タックルと潮流に合わせて30号、60号、80号を使い分けるという。
 喰いダナが30m以浅なら30号でも問題はないと思うが、これだけの乗船客が仕掛けを投入していればオマツリは避けられない。少しでも釣り人同士の仕掛け絡みを回避する意味でも60号以上が理想だ。
 それにしても凄い数の釣り船がピンポイントでタチウオの群れを追い掛けて操船しているので他船の釣れ具合が手に取るように分かってしまう。
 最初にヒットしたのは左舷ミヨシの稲田義夫さん。舳先の最も高い釣り座から見事に船中第一号を釣りあげて嬉しそう。
 その後もポツリポツリと釣り上げてアタリは多くあるためそこそこ数は上がるだろうと思っていたら、1時間もしないうちに喰い渋りモードに突入。筆者も画撮りを一段落させて竿を出してみた。
 時計の針は9時前だったが、船中に取り込まれる銀色の長い魚体の数は激減した。実際、付けエサのサバの短冊に触ってくる頻度が徐々に少なくなっていた。
 エサ取りがうまい魚だけに短冊のエサは縫い刺しでつけること。ハリ先を出しエサの垂らした部分を少なくした方が掛りが早い。タチウオの喰い気が低ければ勝負を早く仕掛ける意味でも長い垂らしは不要だ。
左隣にいた高橋さんはルアーでゲットする。食いが渋いので、ルアーとの釣果の違いはないといってもいい。
 とはいえ、タチウオの「触り」から「抑え込み」に入る頻度が少なく、待ち時間を長くしても食い込みがない場合は、少ない「抑え込み」の直後に空合わせに挑戦する勇気も必要である。
 筆者の当日の誘い方は「触り」が出たら3秒間だけ待ち、その直後に竿先を30cm幅で上下に4回ほどゆっくりと揺する。その時にググッと強く食い込む瞬間があれば即強く竿を煽って合わせる。
 たとえ空振りでも付けエサを即効で確認することが重要だ。喰い欠けのポロポロエサにはよほど活性が高い日でない限喰ってこない。
 それでもエサが喰われる時間帯が長ければタチウオと勝負することはできるのだが。
 時計の針が10時を過ぎるとアタリは極端に減った。触りがあればまだ可能性はあるが、それすらない。
 仕掛けを上げてみても何もエサをかじられていない。魚の食い気がまったくないということだ。これでは勝負にならない。
浅いので引きは強烈だ! こういう条件下では、竿はコンパクトで小回りのきく長さにする必要がある。
 左隣の高橋義彦さんはスーパーで購入したキビナゴを自作の2段バリ仕掛けに付けて工夫していたが「喰いがここまで渋い日は何をやっても無理ですね」と苦笑い。
 途中、竿を半月に近い状態に曲げて良型を期待したが、上がってきたのはシマガツオ。引きが強いことではタチウオに負けていないが、食味の点で3ランクは落ちるだけにガックリという場面もあった。外道では他にサバが釣れていた。
 また、当日はルアーで狙っていた人もいたが特別喰いが良いということはなかった。
メタルジグの80g〜100g。色は紫、金赤、赤/黄など様々。
 残念だったのは型が今一歩小さい点だ。指3本クラスが平均サイズで全長65〜85cmといった感じ。それでも喰いダナが20m前後と浅いため最初の引きは強烈。合わせが決まった瞬間の痺れるような引き込みは応えられない感触である。
 筆者も唯一掛ったタチウオはなんと海面下13mでヒット。オモリ80号の通常タックルだったが、充分強引を満喫できた。
 結局、船中ゼロから5本という厳しい日にあたってしまったが、数日後の釣果はスソで10本に達しているので喰いが活発な週に即効で出掛けること。朝の釣り開始から1時間が勝負だと思って集ー中して誘いを入れること。以上、2点を守れば爆釣に遭遇できる日は近い。
ルアーマンの水野さんはスレで掛けた。何とも言えない表情がすべてを物語っている。
 また喰いが渋い日は針を1本にしてハリスも2mと短くした方がアタリを出しやすいし、混雑時でも取り込みが楽である。
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ムツ六釣船店のビシアジ(久里浜沖)
2007年8月5日
 梅雨明け宣言が出された数日後の8月5日、久里浜港のムツ六釣船店にビシアジ釣りに出かけた。アジは相模湾ではなく東京湾に限る、と美食家が語っていたが、異論は無い。
 型が良ければ10匹も釣れれば満足できると思い軽い気持ちで乗り込んだのが良かったのか当日はアジの活性が高くとても充実したアジ釣りを満喫できた。
 出船は午前7時15分。30分前に到着したら「もう1隻出すことにしたから」となんと2隻出しの盛況ぶりに驚いた。
 そのため運良く左舷胴の間に釣り座を構えることが出来た。コマセ釣りの場合、潮の流れ具合が釣り座に大きく影響するため、筆者はいつも胴の間を好んで選択する。当日も敢えて大ドモを避けて揺れの少ない胴の間で竿を出した。
 定刻よりわずかに遅れて港を離れ一路久里浜沖のポイントに向けてゆっくりと30分のクルージング。エンジンがスローになるとアジ狙いの釣船が10隻以上船団を形成していた。船長の「ハイどうぞ。水深は60m。下から3mでやって下さい」というアナウンス。
 早速、130号のビシを投入。60mジャストで着底してから2m巻き上げて1回コマセを振り、次にもう1m巻いて2回目のコマセを振出す。
 するとすぐにククッというアジらしきアタリ。3mほど手巻きでリールを巻いてから電動リールのスイッチをオン。ほぼ中速で巻き上げてくると掛っていたのはなんとシロギス。しかも20cm級の良型だ。
 付けエサは赤タンのみなのにシロギスが釣れるとは驚き。2投目にはアジ特有のクククという小気味良い手応えが伝わり手で少し巻くと、さきほどとは引きが強い。「アレもうサバが来たのかな」と思い中速からやや高速にスピードアップ。上がってきたのは約30cm級の良型アジだ。思わず「デカッ」と心の中で呟きながら今日はもしかして良い日に当ったかも、とニンマリ。
 左隣の二本木悟さんも良型をテンポ良く抜きあげている。だが、型が良いためどうしても口回りが弱いためか海面バラシが多かったようで、即効で玉網で掬う作戦に出た。
 確かに型が良ければ抜き上げ時にバレるケースは多い。だが、筆者は敢えて玉網使用を拒んだ。理由は2つ。ひとつは玉網を使って魚を掬うとハリが網に引っ掛かって手返しが悪くなる点。もうひとつはアジの口の硬い部分に掛けられなかった自分の責任だと考えたからだ。
 釣り人対アジの対決に伝家の宝刀は使いたく無いという筆者独自のこだわりがある。魚が掛るまでは運だが、掛ってから手にするまでは釣り人の「腕」と考えているからでもある。
 良型をキャッチ! 思わず、笑みをこらえながらポーズを取る二本木さん。
 実際は、玉網で掬う時間がもったいないほど入れ喰いタイムがあったからだ。釣り開始から約1時間もするとどうも潮止まりとなったようで船中パッタリとアタリが止まる。時計の針は午前9時15分。その後、50分前後はアタリが遠のいたが、場所を移動してから再開すると入れ掛りでアジが釣れてくる。
 右隣の牧野親子は不慣れな息子の指導で手間取ってはいたが、コンスタントに30cm〜35cm級の良型アジを連発。
 高校一年生の利紀(かずき)君も次第に釣り方や道具の使い方に慣れてくると面白いようにポンポンと30cm級アジを抜き上げている。
 お父さんの指導が良いのか息子さんのセンスが良いのかは分からないが、ビシ竿が気持ち良く曲がる強烈な引き味は快感に違い無い。
 筆者の竿も100〜150号負荷のヤリイカ竿だが、グイグイと引き込む良型アジの感触を久しぶりに体感できた。
笑顔が好印象の牧野君
 左隣の二本木さんは良型ダブルを数回続けて絶好調。写真を撮らせてもらうとハリのチモトにオレンジのフロートパイプを通してあるのが分かった。「仕掛けはいつも自作してます。フロートパイプを通すと潮が緩い時でもフワッと漂ってくれるようで喰いが違います」と目を細める。玉網の使い方も手慣れたもので針を網に引っ掛けないように掬っていたのが印象的だった。
 午後1時を過ぎると南西風がやや強くなると同時にアタリも遠くなり結局午後2時10分に沖揚がりとなった。筆者の釣果は28〜36cmのアジが25匹、外道にシロギスとシロムツ各1
匹という結果。海面バラシがなければ確実に30匹オーバーだっただろう。
筆者の全釣果
まずまずといったところ
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坂口丸のスルメイカ(初島沖)
2007年8月10日
 小田原方面でスルメイカが爆乗りと聞いて出かけたのは8月10日。金曜日だというのに坂口丸の7時船には筆者が到着した午前6時10分前にはすでに左舷が6人にも。早朝5時船に間に合わなかったというより少しでも空いている船で釣りを楽しみたいという釣り人が多かったようだ。
 それだけスルメイカの人気が高いということだ。爆乗り情報は数日前からネットで確認すると、もの凄い数字が踊っていた。小田原の早川港の乗合船数隻をチェックしてみてもスソで35杯、トップはなんと99杯という釣果。
 これならイカ釣りが不器用で下手くそな筆者でも20杯は釣れるのでは、と甘く考えて出かけたというのが正直な所である。
 当日は結局、片舷9人合計18人ほどの乗船客を乗せてポイントの初島沖を目指した。航行すること約50分。すでに早朝船がイカ船団を形成していた。その数はざっと20隻以上だ。スルメの群れが濃いを物語っていた。
 船長の合図で14センチのプラヅノが120号オモりに引き摺られて飛び出す。
いつみても爽快な光景である。タナは「80〜120m」とのアナウンスだが、どうも乗りは今一歩の様子。
 それでも筆者は運良く第一投から2杯のスルメ(ニセイカサイズ)を掛け幸先の良いスタートを切った。たぶん素早い投入が功を奏した感じだ。
 筆者の左隣(トモ)に釣り座を構えた世田谷区の渡辺さんは筆者の2杯を確認した直後に素早く仕掛けを直結からプランコに変更していたのが印象的。
 ベテランの渡辺さんはこう判断したのだろう。
「群れは広範囲に群れていても活性の高い群れは下の方のみ。しかも乗りが浅いためバラシが多くなりそう」と。このため仕掛けをブランコに変えたと考えられる。
世田谷区の渡辺さんはイカ釣り達人だ。表情にも当然とばかり笑みはない。
 さらに、群れの移動が早いためか朝の内(午前9時頃)までは潮回りの頻度が多く「ハイやって」と「ハイ上げて」のサイクルが早く忙しい。イカ釣りの宿命だから忙しいのは仕方がないのだが。
 やっと乗りが良くなったのは午前11時過ぎからだ。その頃になるとベテラン渡辺さんはいつのまにか直結仕掛けに交換しているではないか。しかもツノ数は驚異の14本だ。角の色をチェックしてみるとどうも淡い色が多くスルメ狙いというより混じりで乗ってくるヤリイカに的を絞っている感じだ。当日、乗りが比較的良かったのは淡いブルーとケイムラ。次いで薄いピンク系だ。筆者も色に関してはほぼ同じだが色の濃い青、黄緑、赤は乗りが少なかったようだ。
 角の種類としては特にコレが良く乗ったというタイプはない。筆者はいつもタマゴ針を好んで使っている。角にハリスを結びやすいからだが、数年前には「タマゴ針しか乗らないヨ」という某船長もいたくらい小田原では人気が高かった。
 ではベテラン渡辺さんはというと、ピッカピカ針、泡入り竹平など色々と織りまぜているオリジナル仕掛けが多く、特定の角に固執している様子は見当たらなかった。
 それよりも直結仕掛けの難点である取り込み時のバラシは少なく、実に手際よく再投入をしている姿は「お見事」と声をかけたくなるほど。
 誘い方も決して激しい体育会系の風ではない。鋭くシャクった後は少しソフトに段差をつけるといった変則的な誘い方が見て取れた。筆者も竿の調子が違うとはいえ同じ誘い方を続けているとイカもプラ角を見破るという話しも聞いたことがあるため、一気に20mも高速で巻き上げて途中で再投入するテクニックを使ったりしたがダメ。
 ベテランと初心者の差が大きく出る点を改めて痛感した。ひとつは素早い投入と仕掛け絡みナシで再投入できるか否か。もうひとつはマメな仕掛け交換。
 直結仕掛けを使えない釣り人でも乗りが渋い時間帯にはツノを交換するか、仕掛け全体を交換する手間を惜しまないこと。
 後はタナの下まで降ろさずに途中のタナからサミングをして落下スピードに変化を付けて降ろすというテクニックを使うという点。例えば、80〜120mの指示ダナが出たら一度90m手前で指でスプールを止めて軽くポーズを入れる。
 これで乗れば無理に下まで落とす必要はない。乗りが良ければ5mほどゆっくりリールを手巻きで巻けば追い乗りしてくるケースも多い。ただ乗りが渋い時には1杯を大切にして取り込んでから再度投入した方が得策な場合もある。
スルメの一歩手前がニセイカ
 昼を過ぎてからは乗りが良くなり2〜3点掛けをする人も増えた。渡辺さんは最後の流しでなんと8点掛けを達成したと言うから驚きだ。活性が高い時に直結仕掛けを扱えるかどうかが大きな違いである。時折混じるこぶりのヤリイカが渡辺さんのお好みのようで嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
午後2時の沖揚がりまでにトップは85杯、スソは筆者の14杯とか。
 渡辺さんは「今日は前半ノリが渋かったけどなんとか50杯はいったと思うよ。ヤリイカは3杯と少なかったけどね」と謙遜しきり。

 明確なことはとにかく外道のサバやソウダガツオがほとんど回遊してこなかったこと。潮の流れも適度に緩くあれだけ混雑している中でもオマツリが少なかったこと。数ー釣りの好条件として重要な点ではないだろうか。
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