港清貢丸のアカイカ
宇佐美港(2007年6月8日)
 イカの種類は数多くあるが、伊豆半島のアカイカといえば熱狂的なファンが多い。しかも夜釣りの遠征といえばイカ大好き人間には黙ってはいられない。「だいぶ乗りが安定してきたよ」という清貢丸稲本貢一船長からの嬉しい声に誘われて出かけたのは、6月8日。
 宇佐美港の集合は午後4時だというのに3時を過ぎると三々五々と釣り人が集まり出し、出船の4時30分少し前にはなんと13人もの乗船客が乗り込んだ。平日の金曜日だというのになんという人気ぶり。胴長60cmオーバーのジャンボアカイカの虜になったイカフリークの顔は真剣そのもの。
 だが、そんな緊張感をヤンワリとぎほぐしてくれるのもまた稲本船長だ。出船前に乗船客全員をミヨシ側に集合させてアカイカ釣りの基本レクチャーが始まる。誘い方や仕掛けの種類、電動電源の有無、さらには夜光オモリの使用禁止など細かい指示が出される。イカが光るオモリに誘われて仕掛けの下方に群れが移動してしまうからという。
 結局、港を離れたのは午後4時45分。航程約1時間30分のロングクルージングの間にベッドにもぐりこむことができる。
 当日の海況は昼過ぎまで吹いていた風がピタリと止み、ベタ凪ぎ状態だ。ほとんど揺れを感じないまま到着したのは伊豆大島の間近。木々の緑と岩肌が目で確認できる近さにはビックリ。こんなに近いポイントでジャンボアカイカが乗ってくるものなのかと初体験夜のアカイカ釣りに興味津々。
 カメラ撮りは淡いオレンジ色の薄暮も風情があるだろうとシャッターを切ること数回。絶景のロケーションに見とれていると船長から「はいどうぞ。水深は60m。下に着いたら1m底を切ってから誘いを入れて下さい」との合図で一斉に掛けを落とす。ただ通常のイカ釣りと違うのが投入だ。浮きスッテ3号を多くても6本。平均して4個程度だから投入器は使わない。船に用意されているツノマット付板をロッドキーパーの下に挟み、スッテをマットに引っ掛けておく。
 船長の合図でオモリ(100号)からスルスルと海中に沈めて行く。とても簡単で昼間のスルメ釣りとは違いのんびりしている。枝スが50〜60cmと長いため仕掛けを絡ませずに投入することが大切だ。
 船長からの注意点をひとつ。夜光ボディのスッテは2個続けないこと。スッテの幹糸間隔は1.5m。それでもイカの微妙な乗りが違うようだ。
 釣り開始から約1時間が過ぎ灯火が灯りいよいよ夜のイカ釣りの風景が漂ってきた。
 雰囲気は最高なのだが、アカイカの機嫌は良くない。船中最初に上がったのはスルメイカ。
 乗りが渋いためか移動が2回繰り返されてやっと良型アカイカが取り込まれたのはすでに8時を回っていた。
 左舷トモから3番目の菅原美徳さんは慣れた手付きで胴長60cmオーバーの遠征サイズをキャッチ。
超大型級のアカイカの本命に思わず笑みが漏れる菅原氏。
 9時少し前頃からポツリポツリと.乗り始めた。船長は「今日は乗りが渋いので誘いの幅は短くソフトにして。大きくシャクルと逆効果になるから」と細かい指示が飛ぶ。
 基本操作は簡単。ロッドキーパーに竿をセットして底上げ1mから徐々に軽く誘いを入れて待つ。乗りがなければ5m前後巻き上げてまた竿を軽く40cm程度揺する感じで誘う。誘いの回数は2回程度で充分。待ち時間も10秒以上でもOK。タナは深くても60m〜65m。浅いと45m前後だ。もろちん、仕掛けの長さ(約7.5m)をプラスすると70m前後のタナを探っていることになる。
 筆者の釣り座は右舷胴の間。ミヨシから3番目。右側には大磯町から来たという伊藤幸一さん。

夜アカイカ釣りとしてはやや短い竿で頑張り、良型のアカイカを釣り上げ嬉しそう。

時々「ア、バレた。乗りが浅いのかな」とボヤきながらも電動巻き上げ速度を調整している。左手には軟調ロングロッドで順調に良型本命を取り込む姿が印象的な府中市の玉置英若さん。
ボヤいたり、自問自答をしながらイカを釣り上げて行く玉置氏の姿は、聞いていても面白く楽しいもの。
 その左手(ミヨシ)の明賀さんとは釣り仲間らしく乗りが渋いのが分かると海面近くを縦横無尽に走り回る大サバを見るや道具箱の中からサビキ仕掛けを出して海面に向けて投入。しばし竿を振りながらサバを次々に釣り上げ玉置さんに手渡す光景はなんだか漁師風で和やかな雰囲気を醸し出す。
 そんな合間に穂先がググっと曲がると、「乗ったよ」と言いながらリールを巻き上げる。明賀さんの効率的な船上二刀流釣法はお見事。
 結局、ノリが渋いまま午後11時30分の沖揚がりを迎えてしまった。アカイカのトップは7杯だが外道の良型スルメイカを含めると11杯が竿頭。
水槽内で泳ぐイカ。夏の夜の風情にふさわしい。

時々、潮を吹き上げたりして進む姿はロケットみたいだ。見ているだけでも面白い。
 筆者はアカイカ2杯にスルメが1杯。本当は3杯の本命だったのだが、巻き上げ途中で胴の3分の2を巨大な魚(サメ?)に横取りされてしまった。それを最後に沖揚がりとなった。ただ救いだったのはどれも良型だった点。胴サイズだけでも40cm以上。ゲソを含めれば軽く60cm級はある。
 自宅に戻り翌日の酒の摘みに刺身を食べたが、適度な甘味とコリコリとした歯触りが最高。さらにその翌日も食べたが甘味が倍加していて2日目の方が刺身ならオススメ。もちろん、煮ても焼いても美味であることは言うまでもない。
稲本船長に今後の展開について聞いてみた。
 「今日はノリが渋い状態でナギ倒れ状態だったけど、一番のピークは6月下旬から7月頭頃でしょう。水温もやっと20度になりましたから乗りが良くなるのはこれからです。その前に時化で一度海の中を掻き回してくれるともっと良くなるんだけどね」と語ってくれた。
 梅雨入りした後も今年は空梅雨とか。遠征の夜アカイカ釣りに一度挑戦するには最高の日和が続くはずである。
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治久丸のマルイカ根魚
宇佐美港(2007年6月17日)
 沖釣りファンとってリレー釣りというのはとても魅力的だ。特に美味しい魚を1日で2種類も狙うことができるのだからグルメ釣り師でなくても足繁く通いたくなる。
 そんなリレー釣りを周年楽しませてくれるのが宇佐美港の治久丸だ。今が旬のマルイカとオニカサゴを狙うというので早速向ったのは6月17日の日曜日。ただし出船が早朝4時30分というので藤沢の自宅を前夜10時30分に出た。早めに到着して港で仮眠をしようと考えたからだ。夜なら道中も空いていて渋滞知らず。
 途中コンビニで朝食を調達してから仮眠、と思ったのだが、深夜1時には遠征夜アカイカ釣りの船が帰港していて騒がしく、結局熟睡できたのは正味2時間程度。午前3時30分過ぎには早朝4時30分に間に合うように到着した釣り人のクルマのエンジン音で目が覚めた。
 当日の乗船客は筆者を含めて6人が乗り込んだ。天候は晴れ。海上はほとんど風のない凪ぎで快適な釣りを誰もが信じていたに違いない。定刻通りに港を出てからものの5分で釣り場とはさすがに思わなかった。
 木部知彦船長から「どうぞやって下さい」の合図が出たのは夜明け直後の午前4時40分少し前だ。宇佐美港の脇にある大崎堤防の斜め沖で、水深は約30m。投入器を使わず5本の浮きスッテを絡ませずにスルスルと海中に落として行く。オモリは50号(筆者は許可を得て40号)だからライトタックルを使える。筆者も1.5mの短い竿に小型両軸リールを使用。仕掛けは無難にブランコ式を使った。投入直後からマルイカの乗りは絶好調だ。
 3杯目を釣り上げたところで画撮りに船内を駆け回ることに。乗りの良い時間帯はえてして短いもの。活性の高い時間帯に写真を撮り終えてしまえば安心できるからだ。
 15分ほど乗船客全員の笑顔を撮り終えて自分の仕掛けを再度投入したらすでにノリが悪くなっていてガックリ。
 その後、伊東マリンタウン横の護岸堤防が目前のポイントに移動して再開。すると今度は小型に混じってアカイカサイズと見紛うような良型が竿を絞る。
 数釣りが当然のマルイカだが、たまにこんな良型が乗ると引き味が違う。グイグイ引っ張り、心の中でバレるなよと慎重にリールを巻く。
玉那覇さんは初心者とは言え、手返しの素早さは見事だ。(左) 佐藤さんは直ブラ仕掛けでマルイカをコンスタントにゲットする。(下)
 このポイントは水深がやや深く40m前後あるため海面まで顔を見せるまで緊張感が解けない。
 筆者は慣れているブランコ仕掛けを使ったが、「マルイカ釣りは始めて」という八王子市の佐藤さんは途中仕掛けを絡ませていたものの直ブラ仕掛けでコンスタントに釣り上げていた。
 釣友の玉那覇さんも初心者とは思えない手さばきでマルイカをイケスの中に放り込む。長い軟調竿を使ってソフトに誘いをかけても乗りの良い群れに当れば数が延ばせるという典型的なパターンだ。
 とはいえ、太陽が昇りきって周囲が明るくなると次第に乗りは悪くなり午前7時には、リレー釣りの後半戦、オニカサゴ狙いに変更された。結局マルイカのトップは23杯だった。修行の足りない筆者は7杯に。乗りの良い時間帯にカメラを持って撮影していたのは言い訳にはしたくない。ただ良型の引きが楽しめたのはラッキーであった。
 さて、オニカサゴのポイントまではわずか15分で到着。竿とリール、仕掛けをすべて根魚仕様に変更して釣り再開。天候は完全なベタ凪ぎで海面は湖状態。ノンビリと穂先を眺めているとグングンと小刻みに揺れ、何かが掛かった感触だ。水深235mという深海から中速で電動巻き上げを開始。
 途中120m前後で大きく竿が引き込まれ「もしや本命かも」と期待を胸に残り30mのところで再度大きく引き込みがあり海面にオレンジ色の魚体が見えた時は正直嬉しかった。型は小さいがなぜか海中では良型に見えたのが不思議。
とにかく船中トップでオニカサゴをゲットできたのは幸運としか言いようがない。
 その後、次第に浅いポイント(150m)に移動したものの潮が流れていないようで船長も成す術がない。
 掛かるのはサメとサバ。中には仕掛けをフグに切られるという釣り人もいて諦めムードが漂う。左舷の庄島和久さんはとうとう痺れをきらせて釣ったマルイカを料理して刺身を作り始めた。
イカの次は根魚だ。沖メバルをさっそくゲットした関和久さん。
 御好意に甘えて釣り立てのマルイカのお刺身を食べさせて頂いたが最高に旨く感じたのは船上だったからだろうか。心地よい潮風と海水で洗っただけの身肉はほんのり甘味があって、しかも適度な歯応えが口の中で広がり一瞬、船長に再度マルイカに戻りましょうとお願いしたくなったほど。
 筆者はオニカサゴを釣り上げる前にユメカサゴを1匹釣り、後はサバ攻撃に閉口。船中サバ攻撃に遭遇しない人はいなかったはず。巻き上げ途中で掛かってしまうのだから仕方ない。しかも2本バリに2本も掛かれば船内にあげるのも大変だ。
 だが、このサバはほとんどマサバで体長も太っていてしっかり血抜きをして自宅に戻ってから刺身で食べたが腹側の部分はまるでマグロの大トロのようで驚くほど脂が乗っていた。
 午前11時20分、無念の沖揚がり。確かに根魚狙いはパッとしなかったもののマルイカは順調に釣れていたから各人美味しいお土産は確保できたはず。筆者は船中唯一のオニカサゴを自慢に港を後にした。
 午後船も根魚からスタートするとのこと。知彦船長に今後のオススメリレーを聞いてみた。「これからもマルイカは良いと思います。もうひとつ確実なお土産というならキントキが好調なのでマルイカとキントキのリレーがベストだと思います」と自信たっぷりに即答してくれた。
 治久丸では最初の予約した方の希望を優先してリレーの組み合せをきめるとのこと。今後もリレー釣りが楽しめる治久丸の人気が高まることは間違いないだろう。
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秀吉丸のマルイカ釣り
森戸海岸の真沖(2007年7月1日)
今年のマルイカは昨年よりスタートが早く5月から6月にかけて快調に飛ばし好調な日には1束を超える凄まじい釣果を記録していたのはまだ記憶に新しいところ。
 おそらく読者の中にも「夢よもう一度」と意気込み何度かマルイカ狙いに挑戦されたことでしょう。ところが、マルイカに限らずイカという生き物は潮具合などで突然活性がダウンすることがある。今回お世話になった秀吉丸のマルイカ釣りはまさにこの絶不調の真只中での釣りとなってしまった。
 7月1日の日曜日、天候は薄曇りだが無風ベタ凪ぎなのに乗船客は数日前からの悲惨な釣果で尻込みしたのか筆者を含めて7人。定刻の朝6時よりも少し早めに港を離れた。
 マルイカのポイントは水深20m以浅という港からわずか10分足らずの森戸海岸の真沖。手漕ぎボートが点々と浮かぶ名島回りが最初のポイントだ。
 赤い鳥居と白い裕次郎灯台も近い。船長からの合図とともに一斉に仕掛けが投入された。水深はなんと17m〜18mと浅い。一投目から素早く乗せたのは左舷胴の間に釣り座を構えた江東区の内田京司さんだ。
 船長曰く「今日の竿頭は内田さんだから」と朝受け付けの際に聞かされてビックリ。それもそのはず、5月中旬には今年トップの120杯を釣り上げた猛者だからである。
 筆者は釣りもそこそこに内田さんの仕掛けやタックルなどについて色々と話しを聞いてみた。
「乗りが渋い日はマメにスッテを変えることが多いけどそういう日は釣れない日。釣れる日はスッテを交換する必要がないしそのヒマもないから。今日も100個は持って来てます。仕掛けは直結だけどスッテは5本まで。乗りの良い日は逆に手返し重視にするためスッテを3本にします。幹糸は5号でハリスは3号で枝間は1.2m。今日の潮具合は分からないけど底潮と上潮の濁りが大きく違う日は難しい。日がカッと照ってくると明るい黄緑色のスッテに良く乗ることがあります」と話ながらもサクサクッとマルイカを掛けて取り込む一連の動作に無駄がない。ベテランの域を通り越して達人の域にある人と感じた。
驚異的な数の浮きスッテ。

内田氏の差し出す色とりどりのスッテを前に筆者はそこにイカ釣り名人の極意を見たような気がした。
 釣り方や誘い方は直ブラと大差はない。まずオモリ(直結は30号、直ブラは40号、ブランコは50号)が着底したらジッと10秒間は静止状態を保つ。
 その後、聞き合わせながら竿先を軽く煽って仕掛けを浮かせ50cm程度上で叩きを開始。回数は大体7〜8回、多くても10回前後。その直後はピタッと竿を静止させ、10秒は待つ。待ち時間は触りがある場合とない場合で違うようだが、基本的に10秒間は待つ。軽くフッと竿先を煽って乗せる。
 乗りがない場合は道糸がトップガイドに絡まないように「の」の字を描くように穂先を回して仕掛けを再度ストンと落とす。釣り開始から30分は決して乗りは悪くはなかったが、その後はもう厳しい状況になる。
 それは潮回りの時間が長くなるからすぐに分かる。船長は「群れが小さくてその数もパラパラで探しつらいね」とボヤク。
 それでも内田さんは午前8時頃までにパタパタと乗せ続けて見る間にバケツが埋まる。スッテの交換もとてもマメ。ポイント移動の合間に素早くスッテを交換しているのには恐れ入る。
「大体、下から2番目と3番目のスッテに乗りますからその状況から前後スッテを交換する場合もある」とか。朝のうちの曇天の時間帯の仕掛けと日が昇ってからの仕掛け(スッテ)は大分異なっていたのが印象的だ。潮の濁り具合との関係もあるので一概に決められないようだ。
 午前中の最も良い時間帯に内田さんは4点掛けを披露してくれた。ムギ2杯にマルイカ2杯の4点掛けである。直結仕掛けの真骨頂を拝見できた瞬間だ。
 午前9時20分頃、大きく移動して亀城根回りにポイントを変えたものの大きな進展は見られない。
小さくても1杯は1杯、久々に釣り上げて思わず笑みがこぼれるというところか。
緊張の一瞬! 撮影の途中でバレないか少し緊張の面持ちの様子、練馬区の五十嵐さん。
 水深は深くても25m程度。海底は砂地もあれば岩礁帯もあり群れの定着性はない様子。難しい日に来てしまったものだと後悔するが、頑張るしかない。
午前10時を過ぎても筆者はわずかに1杯を釣り上げたのみ。恥ずかしながら今回初めて直ブラ仕掛けに挑戦したからという言い訳はしたくないが、乗りが激シブ状態では腕のない筆者では太刀打ちできないのも確か。
 参考までに筆者の仕掛けはフラッシュベビー布巻5本仕様。ハリス3号に幹糸5号、枝間1.3mの全長7.2m。と書いても1杯しか釣れていない仕掛けなど参考にもならない。
 因に1杯乗ったスッテは内田さんから頂戴した今年の新作「ピンク/黄緑」。市販の1本をこれに交換した直後に釣れたもの。
 最後に船長に激シブ日の対応策について聞いてみた。「対策があるとすれば乗りの良い群れに遭遇した時に素早く手返しをして多く乗せること」しか手はないようだ。
 結局、午後1時の沖揚がりまでにトップの内田さんがムギイカ2杯を含めて21杯を釣り竿頭に。
 船中釣果は0〜21。筆者は1杯のみ。ただ2日後の釣果は10〜25杯に回復したから当日は最悪の激シブ日に当ったと嘆くしかない。
 船長の話では例年8月末までは続ける予定。ただし「激シブ日は3日ほど続くことがあるので要注意」とのこと。釣行前に船宿HPの釣果欄は絶対に確認しましょう。
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