一郎丸のビシアジ釣り
鴨居大室港(2007年4月9日)
 春先の沖釣りはムラがあり案外難しい日もある反面、良い潮に遭遇すれば半日で大満足の日もある。先月走水港のビシアジ釣りで初めてボウズとなり悔しい思いをしたのでリベンジ釣行となったのが4月9日。
 鴨居大室港の一郎丸のビシアジ船に乗り込み午前7時半に出船。乗船客は月曜日ということもあって筆者を含めて4人だけ。久里浜沖のポイントまでは航程約10分と近い。当日の天候は薄曇りながら北風微風で快適であった。ただ朝のうちはまだ風が冷たく航行中はフードで頭を被いたくなる場面もあった。
 筆者の釣り座は左舷トモから若干胴の間寄り。といっても左舷は筆者だけだから気にすることはない。平日はのびのびと釣りができるんだなぁと改めて感じた。
 ポイント到着後数分の潮回りで船長から「ハイどうぞ。水深は66m。下から3m前後でやってみて下さい」との合図。一斉に13号ビシが海中に沈められた。仕掛けはムツバリ10号ハリス2号2m2本バリでスタート。夜光玉ナシの銀針でサバ除け対策仕様を使った。
 スタート直後はどうもアジに食い気が出ていなかったようで、船中ポツポツとマサバが釣れる程度。本命アジのアタリが出始めたのは午前8時30分を回ってからだ。ビシが着底して2回ほど底ダチを取り直してから道糸のマーカーで確認しながら2mで1回目、3mで2回目のコマセを振り出してアタリを待つスタイル。
 アジの食い気が出て活性が高まると大体10秒以内にククッというアジ特有のアタリが穂先に出る。
 竿先をわずかに持ち上げてリールを数メートル手で巻いてから電動リールのスイッチを入れる。
 午前9時頃には良型が釣れ始め、タモで掬う釣り人が多くなり電動リールの忙しくも心地よい音が船に響く。
 本来ならタモを使うとハリが網に引っ掛かり手返しが悪くなるため嫌う人もいるが、当日は皆無だった。全長が35cm近い魚体では海面から抜き上げる際に口切れしてしまうからだ。
 午前10時頃に一旦食い気が落ちる時間帯もあったが、マメに底ダチを取り直してコマセを振ると1分程度で結果が出るという理想的な釣れ具合に船内は明るいムード。
大アジを釣り上げましたベテラン新倉さん
 中には「今日はサバが少ないですね、アジばっかりですよ。欲しい時には釣れないものですね」と贅沢な悩みを口にする人もいた。筆者も釣れてくるのはアジばかり。型は大中小と色々。ミニサイズでも20cm、中型で23cm。良型は37cmを超え40cmといビッグサイズを釣るベテランもいたようだ。
 潮は濁り潮の2枚潮。持参したアオイソメを赤タンで抑える形でハリに刺す。濁り潮に効果的なアオイソメは今後初夏までビシアジ釣りには必携。
 潮流に関しては上潮が速く、下潮が緩い感じだからビシ着底後2回ほど正確に底ダチを取る基本操作が重要である。なお水温は14℃だった。
 当日は満潮から下げ潮が続く状態だから流れが速く感じられたが、130号のビシで対応できた。
 途中風向きが西寄りに変わったが、活性は高く午前11時過ぎになって少し食い気は落ちたものの青空が広がり春らしい清々しい春の潮風が頬に心地よい。釣果に恵まれると周囲の景色や天候の変化を感じる余裕も出てくるものだ。
 結局、午前11時30分の沖揚がりまで釣り上げた筆者の釣果は16匹。匹数自体は別に驚くことはないが、33cmオーバーの良型が多く引き味をビシアジで満喫できたことが何より嬉しい。もちろん、今が旬の東京湾のアジはどんな調理でも美味。
 筆者は刺身、タタキ、塩焼き、フライなどにして食したが、どれも最高に旨かった。船中の釣果は25cm〜40cmが10〜19匹だったという。
筆者の全釣果
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島吉丸のビシアジ釣り
片瀬江ノ島(2007年4月29日)
 2007年のゴールデンウィークの4月29日、地元片瀬江ノ島の船宿、島吉丸にアジ狙いで釣行した。結果は厳しいものであったが、毎年ゴールデンウィークはどの釣りものも混雑し、船中の釣果もパッとしないのが通例だ。だが、乗船料金が6000円と通常より2500円も安くなるため、魅力的である。
 当日は大物狙いのスーパー五目は予約しないで訪れたお客は乗船できなかった模様。1万円で割引きナシなのに大物釣りの人にはあまりセコイ人はいないのかも。大物とはいえ大半がシマガツオということだから味覚的には食指は動かない。
 そこで今回のビシアジ釣りに決定した。5月はアジの旬。産卵期に当り脂が乗っていることは知られている。それをジックリ味わいたくて早朝7時の船にもかかわらず、ゴールデンウィークということもあって約1時間前には乗り込んでいる人もいてビックリ。確かに混雑を避けて到着するには時間的に余裕を見て来るに越したことはない。ただ運良く当日のビシアジ船はあまり混雑はしていなかった。とはいえ出船直前には片舷7人で合計15人は乗っていた。
船内の様子、あまり混雑していると、潮の強弱によってはお祭りが頻発するので注意が必要だ。
 さて最初のポイントは約1時間も走って城ケ島西沖。水深は約100m。当日の天候は晴れで風も北風微風で爽やかな感じ。ただ朝の気温は10度を切っていたとか。
 とにかく、凪ぎの日の釣りは気分が良い。これでそこそこ本命のアジが釣れれば文句なしなのだが、世の中そううまくいかない。
 最初のポイントでは第一投からアタリがきたが、これはトゴットメバルとヒメのダブル。
 だが、考え方としては潮が効いて魚の活性は高いのではとみた。回りでもメバルの良型がポツポツ上がっている。本命の姿は一向に見られない。9時過ぎにポイントを移動。15分程度走って違うポイントへ。水深はそこも大体100m。タナも基本的に3m〜4m前後。
 釣り方は相模湾のビシアジの基本的な釣り方でOK。ビシが着底したらコマセを2mで1回、3mで1回振り出す。2分待ってもアタリが来なければ、再度タナを取り直す。それでもアタリがなければ一旦巻き上げコマセの詰め替えと刺し餌の点検。当日の刺し餌は船宿で300円で購入したアオイソメ。当日はアオイソメのお客が多く、船中で赤タンを付けている人は少数派だった。
 さて、当日やっと本命の姿が見れたのは午前10時近くになってからだ。嬉しいのは型が30cm級と良型が多く、抜き上げ時にバレるのでは心配になるサイズが多かった。100mの海底から電動で巻き上げてくるのだから海面で口切れするケースも決して少なく無い。
筆者の仕掛け。

波は穏やかで、風もなくコンディションは最適。穂先きを見る目にも、幾分か楽観的なムードが漂ってはいるが・・・

 当日、筆者は1度だけ1荷を体験したが、不覚にもタモ入れがうまくできずに1匹はバレてしまった。型は両方とも28cm前後の良型だ。その後は定番の外道サバが回遊してきたが群れとしては大きく無かったのかポツンポツンと掛かる程度で、辟易するほどではなかった。
 サバのサイズも良く、35cm前後が多くマサバが多かったようだ。筆者も良型サバを4匹釣り上げた。即刻エラをちぎって血抜きをしてからクーラーへ。
 昼過ぎになっても外道のメバルとサバに混じってたまにアジが顔を見せる程度となり、3回目のポイント移動。城ケ島周辺からは大きくズレることはなかった。島吉丸のHPで確認すると「東沖」としか表記されていない。
 結局、2時ギリギリまで粘ったがアジは7匹のみ。外道としては沖メバル6匹、サバ4匹、ヒメ2匹で4目釣りとなった。数多く釣れば釣ったで満足感はあるが、後の処理が大変。という点を考えればちょうど良い数と種類ではなかったか。当日の船中の釣果は0〜12匹だったようだ。
 ここ数日間の中では最も悪い数字らしい。外道のメバルがそこそこ釣れていたから不満タラタラ言う客はほとんどいなかった。帰りに船宿に立ち寄るとミリン干し(たぶんシマガツオ)をアジ船のお客に配っていたのでもらって帰路についた。3日間に渡ってアジ、サバ、メバルの魚料理中心のヘルシーな食卓となったことは想像するまでもないだろう。 
筆者の全釣果

青ものは鮮度を保つために取り込みと同時に血抜きをすることを忘れないで欲しい。

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多希志丸の根魚五目
腰越港(2007年6月2日)
 海が最も穏やかな顔を覗かせるのが6月。風も弱く天候に恵まれた2日の土曜日に出かけたのは腰越港の多希志丸。ほぼ周年根魚五目船を出している老舗の船宿である。
 定刻の午前6時よりも10分ほど早く港を離れて向ったのは伊豆大島の島陰がクッキリと目視できる沖の瀬。総勢8人の根魚ファンを乗せて鈴木雅則船長の操船で凪ぎの海上をクルージングすること約1時間20分。爽やかな潮風が今日の大漁を予感させる。釣り人至福の時間の始まりだ。狙いはキンメとムツ、そしてメダイなど美味しい根魚だ。
 ポイントの沖の瀬に到着すると、すでに根魚狙いの釣り船が4隻ほど潮回りを続けている。茅ヶ崎、逗子、葉山の各港から来ている著名な釣り船が目に飛び込んでくる。
 いよいよ戦闘開始だ。「ミヨシから順に投入しますから合図があってから仕掛けを入れて下さい」という船長からの指示が出た。時計の針はすでに午前7時15分を回っている。オモリ300号につながる8人分の思い思いの仕掛けが順序よく船縁から海へ滑り落ちていく。
 「水深は380m。オモリが底に付いたら1〜2mほど底を切って下さい。少しずつ浅くなます」と親切なアナウンスが嬉しい。期待に胸踊る瞬間と思いきや何やら不穏な空気が流れる。まだオモリが着底していないはずなのに筆者の右隣に釣り座を構えていた吉田政二さんの竿が大きくしなって電動リールは早巻き状態。
 まだ水深は200mにも達していないのにどうししたのだろうと聞くと、「シマガツオですよ」と不機嫌そうな口調で答える。ギュンギュンと強烈な引きは傍目には楽しそうだが、仕掛けを海底まで降ろさせてくれない邪魔者なのだ。
 今度は筆者のリールが変。ロッドのガイドに道糸が絡み付き落ちて行かない。船長の指示で一度道糸を中途で切りガイドを再度通して結び直すというドジに近いハプニング。筆者の最初の投入はこの時点で終わった。
 今日の釣りを案じているかのようなトラブルだ。船中でシマガツオの洗礼を受けなかった左舷大ドモの山口浩史さんはメダイの2点掛けで幸先の良いスタートを切ったようだ。
 気を取り直して第2投。筆者のタックルも無事復帰でき、今度こそという期待感が膨らむ。リールのカウンターは385mを表示している。底から2mほど切ってアタリを待つ。数年ぶりの深場竿に明らかなキンメ特有のアタリが出たのは午前8時を過ぎた3投目だった。
 少し弱々しいアタリだが、リールの巻き上げに入る。390m近い深海からいったいどんな魚が浮かぶのだろう。この巻き上げ時間がなんとも楽しい。本命のキンメなのかそれとも外道のカサゴ類か、はたまたムツというケースもある。とにかく海面に顔を見せるまで誰も分からない。それを考えるのがこの釣りの醍醐味でもある。
 注意したいのは巻き上げ途中でもシマガツオがハリに掛かる点。豪快に暴れ回るため最初に掛かった本命魚が外れてしまうこともある。こればかりは運しかない。無事に上がったのはキンメだ。船長の差し出すタモのアシストを受けて取り込めた。ボウズを逃れた安堵感から船中の釣果が気になりカメラを持って画撮りに駆け回る。リールの巻き上げ音が合図。竿の曲がり具合と時折訪れるグングンという魚からのシグナルを確認してから「来ましたか。キンメですかね」と聞くようにする。釣り人も「うん、何か掛かっているようだけど上がってくるまで分からないね」と言う人が多い。恐らく予想はしているのだろうが、巻き上げの楽しみは最後まで残しておくということだ。
 時計の針は午前9時を回り船中キンメやムツを釣り上げた釣り人が続々増え始めてきた。潮流は速くなく、どちらかといえばトロリとした緩い潮のようだ。沖の瀬では潮が速いというだけで仕掛けが隣同士でオマツリというケースは多いが当日はそれがない。時々シマガツオの強烈な引きで道糸が隣の人と絡むこともあるが、その程度。
 仕掛けは典型的な胴突き仕掛けでハリ数は10本が目安。船長に聞くと幹糸は16号前後、ハリスは10〜12号で良い。因に無精者の筆者は8本バリ仕様でハリスは市販の14号1mにムツ19号が結び付けてあるもの。自分で作った部分は8個の親子サルカンに12号の幹糸を結んだ程度。これでも当日は運良く1組で強引に押し通せた。ただしハリスの予備(ハリを結んだモノ)だけは多く持参すること。ハリスがよれたりキンクすれば喰いは落ちる。
 「仕掛けはシンプルなのが一番良いです。ムツは目が良く神経質だから変なビーズ玉やタコベイトなんか付いている仕掛けはやめた方がいい。ハリスもあまり長くなく70cm前後が最適でしょう」と教えてくれた。
 根魚釣りが好きな人ほど仕掛けに凝る人が多いようだが、それは逆効果のようだ。ハリスのハリに近い部分をワイヤーハリスにしたり、付けエサのサバを2匹掛けしてみたり、目立つことをすると釣れるのではないかと釣り人は考えてしまうが船長に聞くと「そういう人はほとんどの場合、キンメやムツは釣れないです。シンプルなのが一番」と言い切る。
 後はエサ付け。当日はサバの短冊と氷漬けの新鮮なシコイワシの両方を使ったが、サバは先端中央にハリを刺すチョン掛け。皮が外側でも内側でも関係ないようだ。シコイワシは下アゴから頭上に刺し抜く。最も硬い部分にハリ先を抜くと良い。外れないことが大前提だ。
 筆者はサパ短冊とシコイワシを交互に付けていたが、途中でバラバラに。
 ただ鮮度を保つため直射日光に当る場所で保管しないこと。理想はクーラーボックスの中にしまい使うたびに小出しにすること。イワシは暖かい状態では魚体がフニャフニャになりハリを刺す所がなくなってしまう。海中で外れてしまっては意味がない。当日は紅染めしたイカ短を持参している人もいたが、これも根魚五目の楽しい点。当日の潮具合によっては特効エサが変わるという話も聞く。ただ船長は「当り外れが多いエサだからウチでは使わない」と語る。
 さて、話を実釣に戻す。午前11時を過ぎると陽射しも強くなり、カッパの上着を脱ぐ人も多くなりノンビリムードが漂う。シマガツオの回遊も減り順調に数を伸ばす人も出てきた。右舷大ドモに釣り座を構えた川口市の細江和明さんはキンメ7匹にメダイ1匹、ムツ5匹でトップ。細江さんに釣り方のコツを聞いてみた。「こまめに底ダチを取り直すことだけ。あとは運次第だね」と目尻にシワを寄せる。
 朝からシマガツオ攻撃に遭遇して運悪く辛い思いをした右隣の吉田さんも昼近くにムツの2kg級とキンメのダブルを達成。満面の笑みが印象的だった。
良型のキンメダイ(左)と2キロのムツ(右)のダブルでご満悦の吉田さん。溜飲が下がる思いだったことでしょう。
お疲れさまでした。
 左舷ミヨシに座った鎌倉市の磯崎智一さんも昼直後の流しでキンメの3点掛けを披露。当日の状況を思えばお見事である。午後1時30分に納竿。通常より30分の残業という。港に戻ったのは午後3時。
 最後に今後の沖の瀬の根魚五目の釣れ具合を聞いてみた。
 「もうシマガツオはいなくなるから大丈夫です。昨年から比べると喰いは今一歩だけれどお土産になる魚は釣れますから安心して来て下さい。季節に関係なく釣れれますから」と頼もしいお言葉を頂戴して腰越港を後にした。
 自宅に戻り数匹持ち帰ったシマガツオを料理したが、ウロコを取らずに剥がすこと。これがポイント。後は血抜きをしたものは刺身に、後はフライにタルタルソースをかけて食べたが、予想を上回る旨さにビックリ。淡白な白身だからフライの他に空揚げやバター焼きも合うはず。刺身も小骨が少ないから捌きやすくワサビ醤油を付けて食べればバカ旨に驚く人は多いだろう。姿形では魚の旨さは判断できないものだなとつくづく感じた。

 またキンメは氷りの入ったクーラーの中に2泊させておくのが良い。特に刺身で食べたければ死後硬直後にアミノ酸が滲み出る2日〜3日後が最高と聞いている。
筆者の全釣果。良型のキンメダイ、ムツなど高級魚が目白押し。光沢がたまらない。久々の納得のいく釣りであった。
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