松栄丸の大アジ釣り
(走水港)2007年3月24日
 桜の開花が待ち遠しい3月24日、美味しい走水のブランドアジが食べたくて松栄丸に向った。地上は徐々に春の匂いが漂い始めているが、海の中はいかがなものか。不安と期待を胸に大アジを釣らせることで走水では最も老舗で知られる松栄丸を選んだのは理由がある。「1匹でもいいから40cm級の脂の乗ったブランドアジ」を釣ってみたかったからだ。
 だが、春の海は筆者に厳しい試練を与えてくれた。ただのビシアジなら何も走水沖で釣らなくても良いのだが、一度で良いから松栄丸の船から巨大なアジを釣り上げてみたい。それだけ魅力ある船宿と船長ということは噂には聞いていた。それは電動リールの貸道具のセットは無料、仕掛けも手作りオリジナル仕掛けまで無料という点からも分かる。
 さて、当日は土曜日で夕方から天候悪化の予報が出ていたからなんとか午前中に勝負をかけたかった。乗船者6名と一緒に港を河岸払いしたのは定刻の午前7時30分より10分も早かった。海上は多少風も弱く薄曇りながら快適なクルージングで最初のポイントに約10分で到着。流し釣りで釣り開始となったが、ものの15分もしないうちに「ハイ、上げて下さい」の合図で次のポイントへ。
 アンカーを入れて釣りを再開したのは午前8時頃。水深は50m前後、エンジンを切ってノンビリとしたビシアジの雰囲気が漂ってきた。
 船長の話しでは「ここは置竿でのんびりと狙うのが御当地流だよ。コマセもガンガン撒くと逆に大アジは釣れないよ」と教えてくれた。周囲を見渡すと誰ひとりとして竿を手にコマセを振っている姿を見かけない。ロッドキーパーにセットしたままクイックイッと軽く穂先が曲がる程度。あとは竿先を眺めながらアタリを待つ。タナは底から3mだから他地域のビシアジと変わらない。
 しかし、驚いたのはビシの重さ。180号なのだ。潮の流れが速いことは知っていたが、最初からこのビシを使うとは。筆者の竿は一応120〜150号負荷と表示されている硬めの竿を持参したので問題はない。
 感心したのは大アジを釣るために船長自ら考案した手作り仕掛け。全長2.5mのハリスはこだわりの2.5号で枝スには丁寧な編み込みが施されていて絡みが少なく、大アジが枝スに掛かっても微動だにしない。唯一オレンジのビーズ玉が1個ずつ入れてある。
釣り座によっては当たり外れがある。それは海中でのコマセが海流の流れる方向に影響されるからである。
 これで目論み通りに大アジが釣れれば万歳なのだが、春の海は難しい。何度もポイントを移動してやっと喰いが出始めたのは午前9時30分頃からだ。
 ただ不思議なことに釣れるのはすべてトモ周辺だけ。胴の間からミヨシ側の釣り座にはアタリすらこない。完全な喰い渋り状態だ。左舷ミヨシに座ってアンカーの上げ下げのアシストをしていた地元横須賀市の小野大吉さんに大アジを釣るコツを聞いてみた。
 「正確なタナ取りとマメなコマセワークだね」と普通のビシアジ釣りと変わらないと語ってくれた。筆者もマメにコマセを詰め替えて、タナも道糸のマーカーを見てキッチリとタナ取りし、数分経つと底ダチを取り、やるべきことはやっているのだが、アタリが来ない。
 どうやら釣り座が不利ということのようだ。ミヨシから胴の間の人が振り出したコマセがトモ側に座った釣り人数人にうまく好結果をもたらしている。
潮が動いている時間帯なら理解できるのだが、潮が止まって道糸がまっすぐに落ちいている状態でも釣れるのはなぜかトモ側のみ。
 それでも喰いが浅いのか海面で口切れバラシの人もいて、タモで掬うようにしないとバレてしまうことが多い。もちろん30cmオーバーの良型ならタモで掬いあげるのは当然だが、松栄丸では写真に撮られるのも恥ずかしいと画撮りを拒否されるサイズもチラホラあった。
「喰いが悪い時は型も悪い。走水じゃ30cmでも小型だからね」と真顔で語る横浜市の村田さんは、午後に入ってやっと調子が出てきた様子。バケツの中に良型3匹を泳がせていた。
 その村田さんはとうとう沖上がり1時間前に竿を仕舞って「魚も全部人に上げちゃった。大アジじゃなけりゃ、ウチに持っていかないよ」とこだわりの釣り人である。
 15時に沖上がりだが、ついに全長35cmの当日最大を釣り上げたのはやはり左舷大ドモの磯川純一(大和市)さんである。
当日最大(35センチ)の大アジを釣り上げた磯川氏。持つ手にも思わず力が入ってくる。
 粘って釣り続けたという点では左舷ミヨシの小野大吉さんも表賞もの。残り時間30分を切ってから良型2匹を立て続けに釣り上げていた。釣りは最後まで諦めてはダメという教訓を教わった。潮流れが不利でも、潮が止まってもコツコツ、マメに手返しする努力が報われたといった印象を受けた。カメラを向けた時の自然な笑顔がとても清々しい。
 午後3時、沖上がり直前から降り始めた雨が今日の渋い喰いを最後まで象徴していたようだ。
 最後に船長に今後の大アジの釣れ具合について聞いてみた。
「毎年、釣れる時期は決まっている。桜の花が散った直後がベストだね。潮回りは中潮から小潮回り。スバリ言うけどXデーは4月14日だね。この日には間違いなく大アジは出るヨ」と断言してくれた。
 大アジファンは松栄丸に足を運んでトライして欲しい。
最後まで奮闘努力した小野さん。やはり、何事もあきらめてはいけませんね。
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大久丸カレイ釣り
(鹿島港)2007年4月1日
 魚は棲息する地域や生活環境によって釣り方や仕掛けが異なることはよくあること。今回初めて訪れた茨城県の鹿島港沖のカレイ釣りでそれを痛感させられた。
 東京でも満開の桜が春景色を演出し「明日は絶好のお花見日和です」と天気予報で声だかに気象予報士が告げていた4月1日。念願の茨城県鹿島灘でカレイ釣りに熱中する予定だったが、前夜からの南西強風がウネリを置き土産にしてくれた影響で残念ながら筆者だけ大漁とはいかなかった。
 お邪魔した船宿は大久丸。普段は職漁船としてカレイやヒラメの刺し網漁に精を出す地元では老舗船宿である。
 早朝6時出船だがお客が揃うと定刻より早く港を出るのが地元では当然のことのようだ。筆者が最後に乗り込むと午前6時10分前に忙しく舫いを解いて一路ポイントに向けて全速力。航行すること約15分で最初のポイントに到着。天候は薄曇りだが、寒くない。ただ鹿島灘だけに風の影響は残っていた。ウネリが高く画撮りで動き回るにはチト辛い状況だ。
 そこでとりあえず先に臨場感溢れた明るい写真を3名ほど撮り終わったところで自分の竿を出そうと決心して動くことに。
 運良く右舷ミヨシに座った新宿区の林幹厚さんがトップバッターを切って開始直後10分で良型のイシガレイを釣り上げた。水深は約33m。砂泥地帯だから根がかりはない。
 その数分後には隣の目黒区から林さんとお友達の武山さんが続く。時計の針はまだ6時30分を少し回ったところ。回りを見渡すと鹿島港からカレイ狙いの釣り船船団が形成されていた。昨年の爆釣で人気と実積が広まったようだ。
 釣り方について武山さん聞いてみた。「ここのカレイは小突いて少し間を開けて聞いてみる。その繰り返しがポイント。ハリ数は2本でも3本でも構わないけどダブルで釣れることは希。ただハリ数が多くなればハリスが長くなってエサが海底に落ち着いてくれる。潮が速い日は長ハリスが有効だね」と解説してくれた。
 自家製の仕掛けは蛍光グリーンのビーズ玉を中心に派手な装飾が施されていて興味深い。潮が濁っている日は効果的というのは東京湾とも共通点がありそうだ。よく見るとミヨシの林さんも仕掛けは派で目。天秤やビーズ玉のほかにオモリも白いナス型を使用していた。
 そんな話しを聞いていると突然、武山さんの竿が大きく弧を描いた。最初はコツコツと微妙なアタリだったというが、途中から大きくグイグイ曲がる。
 画撮りも忘れて何が掛かったのか海面を凝視していると、なんと巨大なカレイ、しかもマコガレイがあがった。後検でジャスト50cmの大物であった。
船内は一気にヒートアップ。イシガレイ混じりで順調に数を伸ばす人が増えてきた。
 筆者も午前7時過ぎからやっと竿を出したが、朝から揺れる船内を動き回ったためか数年ぶりに船酔いモードに入り、2匹上げたところでダウン。
派手目で個性的な仕掛けが釣果を上げる。良型の2枚のイシガレイをゲットした林幹久さん。
 徐々に風も弱まりウネリも解消されてきたものの前夜の素泊まりで睡眠時間が約3時間半では到底太刀打ちできない。
 マグロ状態になりながらも時折竿を手に釣りを再開。数回小突きを入れて30秒待つと、ゴツゴツという明確なアタリが出る。3秒待ってからリールをゆっくり巻きはじめるとググーッと突っ込む感触が手に伝わる。筆者のライトタックルは30〜60号負荷の先調子。小気味良い引きを体感しながらレギュラーサイズ35
cm級を抜きあげる。その直後に朝食が胃から込み上げ一人でコマセ釣り?に変更する場面もあった。
 ベテランの林さんや武山さんは何が違うのかと言えば、決定的な点は手返しが素早い。カレイ釣りの場合、ハリを飲み込まれ上がってくることが多い。
 そのため、常連の方は自家製のハリ外し棒を持参している。カレイの口の中にハリ外し棒を突っ込み魚体をグルグル3回ほど回すと、不思議とハリが口元まで出てくる。筆者も武山さんに借りて一度使わせていただいたが、魚体を2回転させただけでハリが口元に出てきてビックリ。間違いなく咽奥に刺さっていたハリがどうして口元に出てきたのだろうか。
 とにかく、ほとんどの場合素早くハリを外すことができるというから数を釣るには専用ハリ外しは必需品といえる。割る前の割り箸でも代用できるとか。
 残り時間が1時間足らずとなった午前11時には汗ばむほどの好天となり上着を脱ぐ人も多くなりラストスパートに拍車がかかる。前述の林&武山さんコンビは抜きつ抜かれつのデッドヒートで数を伸ばす。
林さんは3本バリのロングハリスで一荷を数回披露して武山さんに追い付こうと頑張る。船内はカレイの甲板を叩くバタバタという音が鳴り響く。最後の入れぐいタイムが展開中だ。
かなりの大型マコガレイをゲットした渡辺健一さん
 筆者は8匹を上げたところでもう充分と竿を置いた。昼12時5分でタイムアップ。左隣の武山さんはついに33匹で竿頭。しかも50cmのマコガレイをゲットして当日の大物賞に輝いた。公式な釣り大会ではないが、船内羨望の眼差しは明白だ。
 最後に大川船長に今後の展望などについて話しを聞いた。「昨年12月頃からやっているけど最初は昨年が良かっただけにパッとしなかったね。でもここにきて安定した釣れ具合になってきた。水温が15度位になるとメゴチが多くなってくるのでメバル五目に変更するけれどまだ4月いっぱいは間違いなく順調に喰い続くと思うよ。魚影は濃いから時化でない限り大丈夫。大きいクーラーを持ってきた方がいいと思うよ」と口元が弛んだ。
 また、イシガレイに限らず魚はすべて血抜きと内蔵の除去を港に着いてからやってくれる。このサービスは釣り人にとっては嬉しい。心置きなく数釣りを満喫できるというもの。自宅に持ち帰ってからの手間が半減することは確実だ。
 船長に聞いてイシガレイの刺身を薄造りで食してみたが、まったく臭みなどなくマコガレイとまったく同レベルの味と断言できる。
 竿頭の武山さんの話しでは昆布締めにすると約1週間は美味しい刺身を口にできるという。次回はぜひ試してみたい。
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ボートカレイ釣り
久里浜港沖(2007年4月11日)
 今年は暖冬の影響で桜の開花が早くそれに伴い水温の上昇も早かったためか3月中旬頃から「花見ガレイ」の便りを東京湾でも耳にするようになった。
 毎年「花見ガレイ」は手漕ぎボートで狙うというこだわりがある。しかも新規のポイントで釣ることが好きな筆者は久里浜海岸を選んだ。理由は昨年の同時期に潮と風向きに恵まれずボウズを経験したからだ。
 リベンジに向ったのは4月11日。久里浜で唯一貸しボート店を営む黒船釣具店(?046-835-0372)に到着したのは午前8時を少し回った頃だった。クルマを慌ただしく有料駐車場(くりはま花の国内1日600円)に止めて支度を済ませ漕ぎ出した。
 当日の天候は朝の内北東の風が少し吹いていたがボート釣りをするのに支障はなかった。薄曇りだが雨は夕方頃からという予報だからボート返却時間の午後3時まで目一杯楽しめる予定。
久里浜は手漕ぎボート釣りでも距離が近くて楽だ。
 その前にエサのアオイソメがなくなることは予想できただけになんとしてでも早めに結果を出したかった。潮は小潮3日目。前日も凪ぎだったから底荒れの心配はない。満潮時間が午前8時30分頃。カレイは潮の変わり目にバタバタと釣れる傾向があるためボートを漕ぐ手にも力が入る。
 店主の小林泰一さんにカレイの好ポイントを聞きノリ棚の手前の白い発砲スチロールブイの手前でアンカーを投入。風向きとアンカーロープ20mの長さを考慮することが肝要である。
 当日のタックルはボート釣り用のコンパクトロッド3本に小型スビニングリールの組み合せ。長さは1.8〜2.1m。リールの道糸はPE2号を100m。オモリは18〜20号を使用。2本は赤いスバイクオモリでもう1個は蛍光グリーンを選んだ。カレイにエサを逸早く見つけさせるためである。2〜3匹のアオイソメを房掛にハリに刺してアピールする点も大切なポイントだ。
 仕掛けは市販のカレイ用のもの。ビーズ玉や極小シモリウキのついた少し派手なものを選択した。仕掛け全長は65〜80cmと一般的。潮変わりが過ぎる前にと早速第一投。軽くフェリー航路側に向けて20m程度投げ込んだ。もう1本のロッドの準備をしていると軟調ロッドの穂先がブルブルと不連続な動きを伝えてきた。
もうきたのか」と半信半疑でリールを巻き始めと明らかに生体反応がある。
ゆっくりと慎重に巻き上げてくると、茶色い魚体がフワ〜と浮いてきた。やったとほくそ笑んでタモ取りにも成功。時計の針は午前8時44分を指していた。体長は後検で35cmあった。
「だが、その割りに最後の突っ込みが海面近くで見られなかったのは残念だった。」
 その後はヒトデ攻撃の連続で閉口。店主も「今年は例年以上にヒトデが多くてエサの消耗が激しい」と言っていた通りの展開となった。
 そのため午前10時30分に場所を移動することに。
ボートカレイ釣りでタモ取りした直後の魚体
 ただカレイ釣りの場合は釣れた場所からあまり大きく移動するのは得策ではないと聞かされてきたため、白い発砲ブイとノリ棚のブイの中間にアンカーを入れ釣り再開。移動距離は約30m。水深も同じ9mだ。
 釣り方はシロギス釣りと変わらない。だがヒトデが多いため置竿のままではダメ。2〜3分毎に一度リールを巻いて仕掛けを手前に動かす操作が不可欠。20〜30cm程度で構わないから動かしてヒトデにエサを喰わせない努力が必要だ。そのマメな動作が同時にカレイへの有効な誘いになるようだ。
 それが証拠に午前11時と同11時12分に立て続けに2枚が釣れた。投げる方角を岸側(少年院敷地)に変えたりして探るのも効果的だったようだ。
 昼を回ると晴れ間が広がり風も凪ぎてきたためしばしボート内で仮眠をとっていると、竿がガタンと倒れボート縁をギーッと引き摺る音が聞こえて慌てて竿を手にリールを巻くと30cm級の良型が上がってきた。
 果報は寝て待てを実践した感じになった。その後、17cmのシロギスを追釣した頃にエサが底をついたので、午後1時40分に納竿とした。
当日の筆者の釣果。黒船貸しボート店で計測板に乗せて撮影。
 当日の釣果はカレイ35cmを筆頭に30cm、26cm、24cmに17cmシロギスと満足のいくカレイ釣りとなった。新規ポイント2年目で念願の良型カレイを釣ることができたのは幸運であった。また、この久里浜港沖の釣り場はポイントが分りやすく、水深も約9mと手頃で潮流も速くないため初心者でも釣りやすい点を追記しておこう。
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