沖右エ門丸のアマダイ
(茅ヶ崎港)2007年1月4日
 新年最初の「めで鯛」釣りモノは毎年アマダイに決めている。理由は単純。マダイよりも釣れる確率が高く、本命がダメでも外道で土産を作れる公算が高いからである。
 出向いたのは1月4日の茅ヶ崎港の沖右エ門丸。使用するオモリが60号と他地域よりも若干軽くてアタリをダイレクトに取れて引き味も堪能できるのではないかという発想からだが、もうひとつは1日中誘いを入れるため少しでも軽量な仕掛けの方が疲れが少ないと考えたからだ。
 当日の天候は朝から晴れ。北東の弱風で海上は凪ぎ。絶好の初釣り日和となった。釣友の加藤氏と左舷胴の間に並んで席を構えた。出船は午前7時。定刻よりもわずかに早く港を岸払い。真沖のポイントまでは約15分と近かった。
「水深は72m。やってみて下さい」という船長の合図でスタートフィッシング。当日の筆者のタックルは1.8mの短竿に小型電動リールの組み合せだ。オモリ負荷は30〜80号。使用オモリは60号だから余裕がある。しかも竿とリールが軽量だから終始手持ちで誘いを入れても疲れは少ない。
 だが、予想に反して本命からのアタリは遠い。加藤氏もマメに竿先を上下に1m前後動かしているが外道のヒメコダイやレンコダイばかり。筆者も小さなカナガシラやアカポラばかり。たまにガンゾウビラメが新年の挨拶に顔を出す程度。
 朝一番に右舷胴の間で約40cmの良型アマダイが上がっただけで後は外道ばかり。どうも底潮が流れていない様子。痺れを切らした船長は何度か小移動するものの潮が流れないためかアマダイのヒットは少ない。
船内の様子、黙々と竿先に集中する様が感じられる。しかし、潮が逆なのか、釣果は今一つ。

あ〜あ・・・
全員のタメ息が聞こえて来そうだ。でもこんな日もある。だから釣りはギャンブルなのだ。

 やっと筆者の竿に本命らしきアタリがあったのは午前10時30分頃。リールを手巻きで5mほど巻くとグイグイッと外道とは明らかに違う引き味。
慎重に電動リールのスイッチを入れて中速より少し遅いスピードで巻き上げる。途中2回ほど強いアタリを楽しんで、海面を割ったのは紛れもないアマダイ。約1年ぶりの対面にホッと胸を撫で下ろす。1匹釣れれば御の字のアマダイだけにその後が楽になる。
 しかし、左隣でモクモクと誘いを入れ、エサの付け替えなどこマメに手返しを繰り返しているが本命からのアタリはない。ポイント変更後やっと底潮が流れ始めたのは昼近くになってからだった。
 周りではポツリポツリとアマダイが上がる。中には全長43cmの大物がタモ入れされて船内は一時活気を取り戻すが、なかなか連発がない。
 誘い方は簡単。オモリが着底したら全長2〜2.5mの仕掛けの約半分を巻き上げて底を切る。その後は1m前後の誘いを入れるだけ。もちろん、マメな底ダチの取り直しは当然。
やっと筆者にもアマダイのアタリが来る。釣れたのは良型だったが、その後のアタリが続かず、ややストレスを感じる釣りとなった。
 たまにシャープに1mほど竿先を跳ね上げて食気を誘う。付けエサのオキアミは色々な魚にかじられる万能エサだけに少しでも外道があたれば面倒でも仕掛けを一度回収してエサのチェックをすること。
 2本バリが一般的だが先バリのエサが取られた状態ではアマダイの釣れる確率は格段に落ちると考えて良い。特に当日のように底潮が流れていない場合は、積極的な誘いとマメな手返ししか対応策はないといっていい。
 結局、筆者は午前中に釣り上げた33cmのアマダイの他はすべて外道のオンパレード。加藤氏は残念にも本命からのラブコールはなかった。
 とはいえ、筆者同様色々なお土産外道が多数釣れたので「てんぷらネタにして晩酌のツマミにする」と納得の笑顔だった。
 当日船中の釣果は0〜2匹。乗船客の半分も本命を出来た人はいなかったはずだ。水温は14度台で例年並だから潮さえ流れてくれればもっと釣れたに違いない。
筆者の釣果、何やら赤い色が一杯という感じ。その中で、やはり33センチのアマダイが一際光っている。アマダイはつくりにして、外道は、すべて天ぷらのネタになったが、すこぶる美味であった。
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義和丸のクロメバル
(新安浦港)2007年3月10日
 今年は例年になく暖冬ということもあり春の訪れが早そうだ。春を告げる魚といえば、まっ先にメバルが頭に浮かぶ。東京湾のクロメバルの姿を見に出かけたのは陽春の暖かさが感じられた3月10日の土曜日。
 前夜の天気予報でも「絶好のお出かけ日和」と言い切っただけに足を運んだ新安浦港の義和丸でも朝から釣り客の応対にてんてこまいの女将さん。挨拶も早々に第五号船に乗り込むとすでに右舷は胴の間を除いて5名が支度に取り掛かっている。
 筆者は空いていた胴の間に席を取り、まず右隣の浦安市から来たという田川さんに挨拶をして話しを聞くと「クロメバルは初めてなので色々教えて下さい」と言われ和やかな雰囲気に包まれ緊張感もほぐれた。
 左隣の方は武蔵野市から来られたという荒尾徹郎さん。もくもくと仕掛けをセットし始めていると出船時間の午前7時20分となり、河岸払い。
 驚いたことに田川さんも荒尾さんもエビエサのメバル釣りと思い違いしていたらしく「エサがなかなか配られませんね」と話しかけられ「義和丸さんのメバルは独特のサビキ仕掛けで釣るので付けエサはないし、コマセも使いませんよ」と筆者が応えると「それじゃ、仕掛けを船宿専用のものに替えないとダメだ」と慌てる場面もあってノンビリした船内にその時だけ慌ただしさが漂った。
 それというのも、ポイントまでの航行時間がなんと約7分と近いからだ。
 ポイントに到着したらすぐにでも仕掛けを落としたくなるのが釣り人共通の性というもの。荒尾さんも「しまった、出遅れたな」と独り言をいいながらもしっかりイカ短も持参していた。
 当日の天候は朝から晴れ。弱い北風が朝の内だけ吹いていて多少揺れたものの概ね凪ぎ。メバル釣りには曇天の無風ベタ凪ぎが理想だが、釣り開始の合図から数分もすると左舷ミヨシの稲田義夫さんの軟調竿の穂先が勢いよく絞り込まれ良型メバルがなんと3点掛けと幸先の良いスタートを切った。水深は25〜30m。
 船長は「オモリがトントンと底を軽く叩く状態にしてアタリを待つこと」がこの釣りのコツだと教えてくれた。
 参考までに筆者のタックルは2.7mのメバル&マゴチ用のインナーロッドに小型両軸リールをセット。道糸はPE1.5号を100m巻いてある。オモリは25号を使う。
 肝心なのが仕掛けだ。一般的にエビエサを使う東京湾のクロメバル釣りだが、義和丸は前述した通りオリジナルのサバ皮サビキを使う。コマセも付けエサもない。だから環境に優しいだけでなく初心者でも手返しさえ早くすれば数釣りを楽しめる。面倒なエサ付けやコマセの詰め替えがない分のんびりとメバルの引き味を満喫できるというわけだ。
 ただし、数を釣るには「アタリがあっても待つ」という忍耐力が要求される。竿先がキュンキュンとしなって曲がっても絶対にアワセてはいけない。ただひたすら数が付くまで待つのが最大のコツ。
 とはいえ、竿が軟らかければなおさらリールを巻きたくなるもの。筆者の体験した印象では、約20秒待ってアタリが続かなくなったら巻き上げた方が良いと感じた。理由は魚が掛かった状態であまり長く放置すると1号ハリスにヨレが生じてしまいその後の喰いに影響するだろうと判断したからである。もちろんマメに仕掛けやハリスを交換すれば済むことだが、無精者としてはなるべくひとつの仕掛けを長く使いたいからだ。因に船宿仕掛けのハリスは20cmと長く、ハリ数も4本だから魚を外す際に絡ませないように手際よく捌くことが重要となる。ハリスを指でマメにしごいてヨレを取ることも大切だ。
 さて、実釣の方はどうかというと、午前8時45分を過ぎる頃になると、それまでの入れ喰いタイムは終了。
 船長はポイントを移動しつつ丹念に群れを探索してくれるが、太陽が昇り快晴に近い好天になると、案外喰いは落ちるもの。
 メバルは上から落ちてくるエサを喰う習性があるからたまに大きく竿を煽ってゆっくり仕掛けを落とし込んでやるといい。
 ググーッと強く引き込む時があるのでアタリが遠くなったら一度試してほしい。
アタリが多くなると、活性が高まってきた証拠。アジやカサゴなどの外道が混じるようになる。アジをゲットした稲田さん。
 午前11時を過ぎると再度アタリが多くなり、朝と同様に活性が高くなり外道に良型アジやカサゴが混じるようになった。オリジナルのサバ皮サビキ仕掛け、恐るべしといった印象を持ったのは筆者だけではないはずだ。
 結局、筆者はメバル18匹に良型アジ1匹に終わったが、12cm以下のミニ
サイズはすべてリリース。
 当日43匹で竿頭になった稲田義夫さんに仕掛けの極意を聞いてみた。
「数を付けるには道糸にナイロン3号を10m先糸として結ぶこと。PEライン直では追い喰いしてこないですから。朝一番で使ったのは自家製の緑バケ(サバ皮)のサビキ仕掛けです。根掛かり防止のために一番下のハリはムツバリにしています。オモリを丸(球形)にするのも良いと思いますヨ」と丁寧に教えてくれた後に「でも今日は喰いか悪かったネ。先週は93匹釣ったから」とサラリ。
義和丸には家族連れも乗り込んでいた。筆者は下船後に記念写真を撮らせていただくことにした。
上はクロメバルを両手に持ったお子さん。右はカサゴを手にしたお嬢さん。二人ともかわいい笑顔。こうした天真爛漫な表情を見ると、自然に心も和んで来るのは筆者だけではないだろう。
 クロメバル釣りは誰にでも簡単に釣れる魚だが数釣りを追求していくととても奥が深い釣りだと改めて思い知らされた。
 天気も良かったので午後のビシアジ船にリレーで乗ることにした。東京湾の黄アジは一度味わうとクセになる。もちろん良型なら引き味も魅力だ。
 午後1時、村上義人船長の操船で港を後にして一路久里浜沖に向う。航程は約20分。水深は約80m前後と深い。この時期は深場に落ちる時期であり、海底はまだ冬。陸上よりおよそ1ケ月遅れと考えていい。冬場のアジは腹にビッシリと脂を貯えるため最も美味しい時期でもある。
 ところが、当日は喰い渋りの日に当ったようで船長は観音崎沖に転戦。途中2枚潮で苦戦が続いたもののやっとアタリが出始めたのは午後3時を回ってからだ。水深は約80〜90m前後。下から3mがタナだが、当日の潮は速く、道糸がトモ方向に大きく流され、タナの取り直しに苦労した。
 それでも釣れるアジの型が良いのには驚き。筆者は運(腕?)悪く40cm級は釣れなかったが、24〜31cmを5匹釣り上げて午後5時に納竿となった。
 当日の竿頭は10匹というから決して悲観することはない。この時期のアジ釣りは潮具合によって食い気にムラが出るから仕方がない。
 対策としてはマメにコマセを詰め替えて入れ直す手返しとマメさが大切となる。また当日はサバがまったく混じらなかったのは底潮が暗かったからだろうか?
 自宅に戻って刺身で食べたが、当日よりも1晩寝かせた翌日のものが最高に美味であったことを追記しておこう。
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丸十丸のヒラメ五目釣り
(小網代湾)2007年3月18日
 ヒラメ釣りと聞くと外房か茨城県エリアを連想する釣り人が多い。だが案外知られていないのが相模湾の、しかも油壺沖周辺から城ケ島沖のヒラメ釣りだ。
 今回お邪魔した小網代の丸十丸は周年ヒラメ五目を釣りものに掲げている三浦半島でも数少ない貴重な船宿である。
 乗り込んだのは3月18日。日曜日ということもあって生きイワシエサで狙うヒラメファンが10人も集まって朝8時少し前に港を後にした。湾内のイケスからエサのカタクチイワシを船内のイケスに入れるため早めに出航したのだ。
 当日の天候は晴れであったが、前日からの北風が納まらず前夜の天気予報では風速15mで「波浪注意報」まで出ていた。
 小網代湾から外洋に出ると案の定、強い北風が容赦なく船上を吹き抜ける。助かったのは最初のポイントがとても近いこと。ゆっくりと走って約10分で「ハイ、どうぞ」という小菅裕二船長の合図で釣り開始。各人のイケスから元気なイワシを選んでエサ付けしてから投入。60号のオモリが着底して驚いた。水深がなんと20m弱しかないからだ。
 確かに筆者はヒラメ釣りの経験は今まで2回しかないのでそれほど浅いポイントにヒラメが棲息しているかも知らなかった。恥ずかしながら過去釣り上げたヒラメもソゲ前後が1匹だけだから仕方ないと言えばそれまで。
 船長が素晴らしいと感じたのはそんなに浅い釣り場でも「根が所々にあるから底ベッタリじゃ、根がかりするからね」と親切にアナウンスしてくれる点。
 船中誰にもアタリがなくすぐに移動。徐々に狙う水深が深くなる。そのたびに「ここは根が少しきついから根がかりに注意して」と適格な指示を出してくれる。
 だが、そんな丁寧で細かい指示を出してもらっても何もアタリが出ないことには辛いものがある。
 時折、外道の悪戯なのかググッと竿先を抑え込む微妙なアタリが出るこはあっても残念ながらハリには掛からない。
 イワシの体に僅かにかじられたような歯形があったのは1回だけ。それでも少しずつ海況は回復傾向にあるようだ。午前11時を回る頃には風も弱くなり釣りやすくなった。
 ポイントを城ケ島沖に移動したのもその頃だった。
全長33センチのソゲクラスをゲットした神戸氏。悪条件の中でのこのサイズはあっぱれだ。
 城ケ島大橋が見えるポイントに近付くと、ついに左舷トモに座っていた神戸正彦さんが竿を満月にしてリールを巻いている。
 船中一匹目のヒラメは全長33cmのソゲクラスだったが、厳しい悪条件が重なった当日としては値千金、立派な本命だ。時計の針は12時をとっくに回っていた。
 筆者の中通しの安竿はお辞儀をしたままダンマリを決め込んでいたが、左舷大ドモから竿を出していた日向真二さんが今度のヒーローとなった。
続いて同じく左舷に陣取っていた日向氏にもヒラメのアタリが!
40センチクラスのいい型だ。
 船長の差し出すタモに納まったヒラメは40cm級。「最初はなんだかフワッとした感触でイカでも乗った感じだったんですけど、軽くアワせを入れたらググッと魚らしい反応が出たので巻きました」と嬉しそう。最初の微妙なアタリからリールを巻くまでの「待ち時間」は20秒〜30秒だったと言う。
 ここの水深は約35〜45m。道糸はまっすぐ海底に延びて潮が動いていないことを告げていた。「水温も13度台に下げているし、潮色もすごく澄んでる。潮さえ動いていくれればね」と船長もボヤク。
 そんな悪条件下でもキッチリ釣る人は釣るようだ。
 もくもくとリールを巻いていた右舷大ドモの内海清さんが釣り上げたヒラメは当日最も大きかった。
 話しを聞くと「なんだかモゾモゾって感じでモタレた感覚だったのでヒラメではないかな」と当日の活性の低さを語っていたのが印象的だ。
 時間はすでに午後1時15分前。ついに深場を攻め始めた。約60mの場所では大物を期待したがそう簡単にはヒラメは釣れないのだ。
今回、右舷の内海氏のヒットしたヒラメが一番大きかった。ヒラメ釣りは数の出る釣りではないだけに、潮の条件、駆け引きなど、チャンスは有効的に活用せねばならない。
 その後、午後3時直前にさきほどの日向さんがライトタックルで良型のオニカサゴを釣り上げて当日のトリを飾った。港前の浅瀬でラストチャンスに賭けたが、残念にも筆者は不発に終わった。約30分の延長をしてもらったが、潮が流れない、水温低下、澄み潮の悪条件が重なり船中本命を手に出来たのは3人のみ。
 船長の話しでは「ヒラメはこれからがピークを迎える。4月から5月には20m以浅で3〜5kg級が何枚も釣れるから驚くよ」と言葉に力が入る。
 確かに船宿の壁に貼られたヒラメの魚拓はどれも4月から5月に集中している。
もう一度来るしない、絶対に。
 最後にヒラメ釣りのキモを船長に聞くと「一番大切なのはイワシのエサ付け。鼻穴に左右方向に親バリを刺して孫バリは肛門に突っ込んで抜く。それを3秒で付けらるようになること」だという。
「イワシの目を押さえれば大人しくなるから慣れれば簡単」とも言う。
 「あとはオモリが底についたら30cm弱底を切ってアタリを待つだけ」。筆者はまだまだ修行が足りないことを痛感して空のクーラーをクルマに乗せた。
リベンジを心に誓いつつ。
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