孝太郎丸のイナダ釣り
(腰越港)2006年9月8日
 相模湾の夏の風物詩とも言えるカッタクリのワカシ。8月1日の解禁直後から湘南方面の船宿は連日爆釣が続いてたが、型が小さいため毎年9月上旬まで待つことにしている。
イナダクラスになってから釣るというのが筆者のこだわりである。
 というよりも釣趣も味も35cm前後に成長してからが魅力的だからだ。ただしその年によっては突然群れが消えてしまうケースもあり、少し時期尚早と思ったが、9月8日に腰越港の孝太郎丸に乗り込んだ。当日は月に2回の割引きデーということもあり、約16人の釣り客が両舷を埋めていた。
 不思議なことに竿釣りの人が多く、カッタクリは筆者を含めてわずか3名のみ。当日の天候は曇天で少し薄日が射す程度で過ごしやすかった。風は北寄りの弱風で海上は凪ぎ。ウネリは皆無だから体力を使うカッタクリ釣りにはうってつけだった。
 出船は午前6時。予定より若干遅れたもののポイントが航程約15分の江ノ島沖だから気にすることはない。船長は早々にアンカーを入れて釣り開始。「水深は約20mです。下から誘って見て下さい」という合図とともに50号のステンカンに魚皮(バラフグ&ハモ)の仕掛けを投入。すると筆者の右隣に座った清瀬市の西野さんが早速本命のイナダを釣り上げ「今日は爆釣で早上がりか」と思われたが、それは叶わぬ夢と消えた。
 1時間が過ぎても本命はポツリポツリしか釣れてこない。
 マメにコマセを詰め替えてもくもくと富士山のスタイルで渋糸を手繰るが海面下10m前後でソウダガツオ(当日は丸ソウダが多い)ヒットする人が多く、船長も困り顔。
 それでもウィリー仕掛けに替えた釣り人にイナダがヒットすることが多く船長も「バケより今日はウィリーの方が喰いが良いですから替えて下さい。ただ外道のソウダガツオも掛かりますけど」と的確な指示を出してくれる。
 西野さんは「約2年ぶりのカッタクリ釣りなので昨晩は興奮してなかなか眠れませんでした」と言いながらも順調にイナダを釣り上げる。話しを聞くと仕掛けは船宿仕掛けだという。
カッタクリで良型のイナダを多数ゲットし、クーラーを満タンにした西野氏は至極ご満悦というところだ。
 ただ誘い方が非常にリズミカルで軽くスイッと手繰っては待ち時間を長く取るスタイル。しかも、喰いダナが分るとそのタナでしばらく静止させると良いとのこと。実際、筆者もトライしてみたが、時々モゾモゾというハリに触っているだけといった感触は手に伝わってくるのだが、どうにも要領がつかめない。「モゾモゾときてもそのまま待つ方がいいですネ。魚が走ったら最初の手繰りで強くあわせれば良いだけです」と教わったものの、どうも掛かるのはソウダガツオが多い。本命のイナダは忘れた頃に釣れてくる程度だ。
 どうやら最悪の喰い渋りの日に当ってしまったようだ。混じりのヒラソウダも数が少なく、ついに昼前に船長は「沖に出てみますから」と告げて30分ほど走ったものの今度はサバの群れに遭遇したようで、しばしゴマサバの引きを楽しんだ。
 途中、仕掛け投入直後に小型シイラに喰いつかれて強烈な引きと海面ジャンプを体験。最後の流しでは何も掛からず、尻すぼみ状態で午後1時過ぎに帰港となった。
 筆者は残念ながら本命イナダは2匹のみ。外道はマルソウダ8匹、ヒラソウダ1匹の他ゴマサバ3匹、小型シイラ1尾をクーラーに納めてかろうじて青物五目を満喫することはできた。当日の竿頭は右隣の西野さんで13匹のイナダの他に33cmのカンパチもゲットして2年ぶりの釣りを堪能していた。今度はメジ&本ガツオでリベンジするしかないと心に誓った。
筆者の釣果。本命のイナダは2本にとどまったが、良型のゴマサバとソウダガツオとシイラが釣れたので、強い引きを楽しむことが出来た。シイラは外道だが高級魚である。
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ムツ六釣船店ワラサ釣り
(久里浜港) 2006年9月29日
 久里浜沖にワラサの群れが回遊してきたという情報をキャッチして、「今年も青物頂上決戦に向う日が来た」と血湧き肉踊る日を9月29日に決定。向ったのは久里浜港のムツ六釣船店。
 平日の金曜日だというのに出船の約1時間前にはすでに2隻が満席状態でビックリ。改めてワラサ人気の高さを思い知った。だが、ラッキーなことに「今日は3隻出すから大丈夫だよ」と受付で聞いて胸を撫で下ろす。筆者は左舷胴の間に釣り座を構え、準備に取り掛かる。当日のタックルは3.1mの中通し竿(オモリ負荷80〜120号)に小型電動リールを組み合せ。
 仕掛けは取りあえず無料サービスの船宿仕掛けをセットした。ハリス8号6m。出船は午前7時。乗り込んだ釣り人は6人。ポイントまではなんと15分弱という近さ。水深45mで釣り開始となった。80号のサニービシにオキアミコマセを9分目ほど詰め込んで投入し海底に着いてからコマセを振り出しながら指示ダナまで巻き上げる通常のスタイル。当日の船長の指示ダナは7〜9mだったので筆者は中間をとって8mと決め込んだ。3mで1回、6mでもう1回、最後に2m巻いてひと振りして待つことにした。
 最初のヒットは釣り開始から15分も経たなかった。しかし、1年ぶりのワラサの強烈な引きに耐えられず劣化していた道糸が途中でプッツン。あえなくバラシ。しかもビシも仕掛けもすべて失うという最悪のスタートとなった。
 だが、持参したバッグの中には予備の80号ビシを入れてあったため事なきを得た。今度の仕掛けはハリス10号の2本バリ。グレバリ14号とやや大きいサイズを付けた市販仕掛けである。オキアミを3匹ハリに刺すにはちょうど良い大きさだ。因にクッションゴムは3ミリ径50cmを選択した。
 コマセを3回に分けて指示ダナまで巻いてくると、2分程度で穂先がググッと入った直後に物凄いパワーで海中に突っ込んで走る。間違いなくワラサのアタリだ。5mほど道糸を出された後、慎重に手巻きでリールを巻く。だが、途中でまた糸が出てゆく。竿尻を左脇の下で支えるには辛いと判断して下腹に竿尻を移動させ、気合いを入れ直す。
 鋭い突っ込みがやや衰え始めたところで顔を上に向かせて巻き上げる。久しぶりの心地よい大物との力勝負に勝ち、海面に浮かせる予定だったのだが、なんと右舷側から「オマツリだから糸出して」の非情な声にガックリ。
 ところが、次ぎの瞬間に「あんたの仕掛けに掛かってワラサを今タモで掬ったからハリスを外して」と船長に言われホっと安堵の気持ちが込み上げて来た。オマツリの結果、ハリスの太い筆者の方が勝ったということらしい。ハリ掛かりした場所と刺さり具合にもよるようだが。後検量3.6kgで全長67cmの良型だった。
 午前8時30分を過ぎるとアタリはまったくなくなり周囲の船からも威勢の良い
船長たちの声が聞こえない。
良型のワラサを釣り上げてご機嫌の松浦氏。
 早朝の群れの回遊と時合はわずか1時間程度で去ったようだ。付けエサがそのまま戻ってくる時間が長く続いた。本日2回目の時合は昼12時直後に訪れた。
2本のワラサに続き、4キロ級のマダイを見事釣り上げ、今回の竿頭になった松浦氏。ワラサよりもマダイの方がいいと感じるのは筆者のねたみか・・・
 それは右舷で巨大なサメかエイを引っ掛けた釣り人の仕掛けが絡んでいて、それがほどけた直後に訪れた。「仕掛けは外したので大丈夫です」と言われて道糸を巻き始めてコマセを詰め替えようとした途端にギュギュギューと穂先が曲がって、食い付いたのを確認。なんだかラッキーな2匹目をゲットした。
 枝スのハリに喰っていたのは珍しい。全長6mの仕掛けだが、枝スまでは約4.5m。活性が高い時にはハリスは短くても喰ってくるという典型的な例だろう。
 結局、その後は何もアタリがなく午後2時30分に沖揚がり。運良く2匹のワラサを釣ることができた。
 筆者の左側大ドモに座った横浜市旭区の松浦さんは朝一番で4kg級のマダイを釣り上げた後、2本のワラサを釣って竿頭となった。
筆者の釣ったワラサ、どちらも60センチを越す良型である。左の写真と比較していただくと大きさがわかる。こんな大物を2本も上げると、嬉しい反面、体力自慢の筆者も疲れ果て、いささかくたびれ顔になってしまうものである。
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長三郎丸のキンメダイ
(葉山・あぶずる港)2006年10月9日
 9月下旬頃から食卓に並ぶ魚はワラサやメジなどいわゆる青魚ばかり。旬だから仕方がないが、たまには無性に根魚が食べたくなり10月9日にキンメを狙って葉山・あぶずる港の長三郎丸に出掛けた。
 3連休の最終日と凪の天候が合致したためか港は明け方前からクルマの列が長く続き凄まじい熱気を帯びていた。大半がメジ&本ガツオの釣り客のようだが、意外にも根魚狙いの釣り人も多く、沖の瀬のキンメを食べたくなった根魚ファン12人を乗せて、定刻の午前6時を少し回ってから港を後にした。
 当日の天候は朝のうち北風が少し吹いていたが気になるほどではなかった。沖の瀬までは航程約1時間だ。ポイントに近付くと北風が少し強く感じられたがウネリはほとんどない。秋晴れの爽やかな潮風が頬に心地よい。筆者の釣り座は左舷胴の間。ミヨシから数えて3番目である。魚探の反応やら潮ながれを考慮して巧みに操船するもののなかなか第一投ができない。
 やっと「ミヨシから順に入れて行くから」という船長の合図とともに200号のオモリに引きづられて思い思いのハリ数の仕掛けが海中に沈んで行く。時計の針はすでに7時30分を回っていた。水深は330mだが、どうも上潮と下潮の流れが違う典型的な2枚潮のようでオモリの着底が分りにくい。道糸の動きを見る限りでは特別速い潮とは感じないが、数回底ダチを取り直し、アタリを待つ。
 だが、周囲でも「アタリが出ないですネ」という声が多く、嫌な予感がしてきた。天気だけは良いけどネ、という凪ぎ倒れの様相が濃くなってきた。2回目の流しでも船内で本命を上げた人はひとりもいない様子。
 意を決してポイントを大きく西寄りに移動。「ここは浅いょ、200m少しだから」という船長の指示が言い終わらないうちにミヨシの竿から順にアタリが来た。
 キンメ特有の竿先を断続的に上下に小刻みに振動させるアタリがやっと訪れた。時間はすでに10時を回ろうとしていた。ほぼ全員の竿にアタリが出たのを見て「あげてみましょう」という合図で、ドラグを効かせてややスローで巻き上げに入る。
 途中で穂先がググンと絞り込まれ、確実に獲物が付いていることを物語る。
 ただ何が喰っているのか実際に海面に出るまで分らない。それがキンメ釣りの楽しいところだ。
 先に左舷ミヨシの方が本命と良型のメダイ、クロムツを釣り上げて御満悦。
 その隣に座った八王子市から来たという駒林さんも40cm級のキンメを3匹とメダイのおまけ付き。筆者はどうかというとこれが情けない。
八王子からお越しの駒林氏は、40センチ級をトリプルで釣り上げた。う〜ん、それにしてもいい型ですね。駒林さん。
最後の最後に右舷と仕掛けがオマツリして上がって来たためなんだか感動が薄い。それでも本命キンメが3匹も掛かっていたのでホッと胸を撫で下ろす。これでボウズは船中ゼロになった、と船長の顔に笑みがこぼれた。潮が濁ったためキンメの群れが浅場に浮いたとか。
 残念なことに仕掛けの修復と糸絡みに時間を取られたため筆者は恥ずかしてくも船長に「次回はパスしますので」と進言して新しい仕掛けを慌ててセットし、付けエサ(冷蔵ウルメイワシ&サバ短冊)の手間に追われた。筆者の仕掛けは幹糸12号、ハリス14号90cmのー8本バリ(ムツ19号)とややズボラ仕掛け。それでも次の流しではまたまた2匹のキンメを釣り上げて、順調なペースであった。
 ところが、11時過ぎからついにサバ軍団の猛攻撃に遭い始めて船中サバの大漁節が続き、仕掛けと時間のロスに泣くことになり、結局最後の流しでもサバの6点掛けで終了となった。竿頭は不明だが、トップでツ抜けは数人程度しかいなかったようだ。
 キンメは刺身で食するなら2〜3日氷漬けで寝かせてからが旨味が出るのでお試しアレ。
 さらに沖の瀬の秋サバは脂が乗っていて想像を絶するウマにビックリ。
 3だけ血抜きをして持ち帰ったのが大正解。
 でも結局、食卓に青魚が並んでしまった。旨けりゃ良いのだ。
筆者の釣果もまずまずというところであった。市場ではかなりの値で取り引きされる高級魚を新鮮な刺身でいただけるとは、太公望ならではの特権というところだろう。
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健洋丸のビシアジ
(走水港)2006年10月17日
 東京湾にアジが戻って来た。体高のある美味しい黄アジがやっと数多く釣れるようになったと聞いて走水港の健洋丸に出掛けたのは台風18号の影響が消え強い風も収まった10月17日だ。
 天候は晴れで気持ちの良い秋らしい爽やかな潮風が肌に心地よい。出船40分前の午前6時50分に受付をした時点では筆者ひとりだけだったが、「昨日も一人で30匹近く釣っているから大丈夫ですよ」と若女将の優しい言葉に救われて、乗船すると出船前には計5人になりホッとした。アジ釣りの場合、一人ではコマセが効かないために泣く泣く群れを足留めできないケースもある。その心配が解消されてひと安心。筆者は右舷胴の間からややミヨシ寄りに釣り座を構えた。右舷に計3人、左舷に2人の布陣。
 ポイントは港から10分弱という至近距離。船長はすぐにアンカーを入れて
「ハイどうぞ。水深は45mで、下から2〜3mでやってみて下さい」と合図が出た。
 当日のタックルは1.95mのヤリイカ竿に小型電動リールのコンビ。ビシは130号のアンドンタイプ。イワシのミンチを詰め込んで投入。潮の流れは適度にあり若干トモ寄りに流されるが道糸の角度からみて大した速さではない。一度ビシを海底から2mほど巻き上げて落とし直すとすぐに垂直に着底する。付けエサは船宿支給の赤タン。仕掛けは定番のハリス2号3本バリでスタート。普段週末で混雑している日には、オマツリを避ける意味でも2本バリ仕様を好んで使うが当日は船中5人の大名釣りだから気にする必要もない。
 釣り開始から15分程度でポツリポツリと上がり始めた。型はどれも22cmから28cmまでの中型と呼ぶ手頃な良型アジだ。これならまな板の上で捌くにも楽チンと思いつつも心の中では30cmオーバーが欲しいナと贅沢なことを考えていた。
 ところが、当日は型ではなく「数で勝負」となった。時計の針はまだ10時前だというのにバケツの中はすでに真っ黒。アジ同士が重なって泳いでいるためバケツの底がまったく見えない。
 ビシを回収してアジを針から外すとコマセが5分目以上入っていればそのまま投入。
 タナは底から2m20cm。1m巻いて1度コマセを振り、もう1m巻いて2度目のコマセを巻く。
 20cmチョイ巻きしてロッドキーパーにセットする間もなくすぐにアジ特有のククッと穂先を曲げる気持ちの良い引きが伝わる。その頻度が当日は面白いように続く。
 東京湾のビシアジでこんなに頻繁にアタリが続く経験はほほとんどない。少なくとも昨年は未体験である。
几帳面な釣りを展開する横須賀からお越しの団野さん。理知的な笑顔が印象的。
 右舷ミヨシ側に2人で釣っていた横須賀市の団野さんと副田さんは取り込みの際にタモを使って慎重なのが印象的だ。
 当日は活性が高いのか、巻き上げまでの水深が浅いおかげもあって口切れでバレるケースはほとんど見られなかった。
 うまく上顎にハリが掛かることも多く、筆者は結局1度もタモを使わずに取り込んだ。ここまで頻繁に釣れればバレてもまた釣れるという安心感があるからだ。
右)同じく横須賀からお越しの副田さん。お二人とも石橋をたたいて渡るような手堅い釣り様に思わず感心してしまう。
 アジの活性が高い日にはマダイも釣れるようだ。左舷に座った蕨市の大戸さんは
「サバにしては引き方が違うと思ったらやっぱりね。ハリスを3号にしておいて良かった」とニッコリ。良型のマダイを釣り上げた。
 大戸さんは言うにはマダイが釣れるこの時期は赤タンとアオイソメを一緒に刺すのが効果的。最初にアオイソメを刺してそれを留めるように赤タンを刺すと良いとのこと。
「11月頃まではマダイが釣れる確率は高いから今度試してごらんよ」と親切に教えてくれた。
 午前11時を過ぎると喰いが落ちて来た。沖上がりまでの時間はアジの血抜きに専念して、数を数えながらクーラーに納めたが、途中で挫折。自宅に戻ってから数えたらなんと37匹に大サバ1匹の自己記録更新となった。しかも、午前船の半日だけでコレだけ釣ったというのは初体験である。
「東京湾のアジよ、お帰りなさい」って気持ちで美しく食べたのは当然。
 血抜きをしたアジは釣り人にしか味わえない究極の旨さがある。ぜひお試しあれ。
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