アマダイ狙いの五目釣り(多賀港)
2008年1月8日
 赤い魚で新年を祝いたいと考える釣り人は多いはず。ただ1月の寒い時期にマダイ狙いはボウズのリスクがある。まして手漕ぎのボート釣りとなればその可能性は倍増する。そこで考えたのはアマダイだ。同じ赤い魚でもアマダイならなんとか釣れる確率は高い。
 アマダイをボートで狙えるところと言えば、東伊豆の多賀が有名。水深が40m?50m前後という浅場で良型が釣れるという情報はボート釣りファンなら衆知の事実である。
 出掛けたのは1月8日。前夜の天気予報では「3月下旬の陽気で最高気温は14度に達する」という。波と風の予報も悪くない。アマダイは凪ぎ続きの日が高確率で釣れるから期待できると思って午前6時前に藤沢の自宅を出発。
 多賀(戸又港)に到着したのは午前8時過ぎ。多賀釣具店(エ090-8498-4254)で手漕ぎボートを借りようと思い店主にお願いすると予想外の返事が返ってきた。
 「今日は、昼過ぎから西風が強くなるという予報だから心配なんだけどね。
今は凪ぎだけど強い西風が吹くと岸に帰れなくなるから」と言われたので、「西風が吹き始めたら岸寄りに戻ってカワハギを狙いますから大丈夫ですよ」と言ってなんとかボートを借り出した。
 港内の無料駐車場に止めて支度を済ませ港のスロープから漕ぎ出した時にはすでに8時20分を回っていた。
 当日の潮は大潮。満潮が午前6時15分、干潮が午前11時31分。ということは下げ潮に入り潮具合さえ良ければなんとか顔は見れるのでは、と期待に胸を膨らませてポイントへ急いだ。
 最初のポイントは戸又港のほぽ真沖に位置する水深40m。正面は港の堤防のテトラポットが目視できる場所だ。早速仕掛けを準備してエサを付けて海中に下ろす。アンカーは入れずに自作のパラシュートアンカーを投入しただけ。
オモリ40号にアマダイ用の2本針仕掛けをセット。竿は1.65mのカワハギ竿。リールはギア比1対6.2というハイギアなものを使用。手巻きリールだから少しでもギア比の高いリールで手返しを早める作戦に出た。
 案の定、適度な潮流れで魚の活性は高そうだ。付けエサはオキアミと冷凍アサリのミックスという贅沢な使い方を敢行。なんでもアマダイはアサリも好物だという情報を某専門誌で知り、今回ぜひ試してみたかったのだ。
 しかし、オキアミだけエサ取りの雑魚に横取りされることが多く、アサリは残ってくる。それでも時折、プルプルというアタリが出て、ヒメジやらトラギスが顔を見せる。第一投ではマダコが掛かってきたが海面でバレてしまった。とにかく、海底付近の魚は食い気が旺盛だから粘ればなんとか本命の型は見られるだろうと悠長に構えていた。午前9時を回ると弱いながら西風が頬を当たるようになり、なんとか1匹でも釣り上げてからカワハギ狙いに変更すれば良いだろうという甘い考えが運を逃したようだ。
 不穏な西風は忘れた頃にソヨ?と吹く程度で海面はほぼベタ凪ぎ状態だから流し釣りでも気にならない。水深は時折50mを超えて55m前後になることもあったが、潮流が速くないのでオモリ40号、道糸PE1.5号でも釣りにくいと感じたことはなかった。
 港方向や網代方向の山立てを目で常に確認しながらボートを元の位置に漕ぎ戻り、なんども底を探った。釣り方はいたって簡単。オモリが着底したら1m(ハリス全長は2m)ほど底を切って上下に竿を上げ下げするだけ。頻繁に底ダチを取り直すことも忘れない。コマセを使わないシンプルでクリーンなアマダイ釣りはなかなか面白い。たとえ、本命がダメでも多彩な外道が釣れてくるため飽きない。アタリを感じてから3mほどリールを巻き上げると大体、本命か外道かは判断できる。
 アマダイが針掛かりしていれば最初の3mでググッと強い引きを見せ、巻き上げ途中でもう一度30m付近で穂先を曲げる強い引きを堪能できる。
 これが外道の場合、特にトラギスやヒメジだと引きがまず弱い。巻き上げ途中で再度穂先を抑え込むような引きを感じることもまずない。もちろん、良型のホウボウやオニカサゴの場合は話が別。海面まで終始強い引き込みを見せるオニカサゴは別格といっていい。
 時計の針が12時を過ぎる頃になると西風の勢いが少し強まってきた感じを受けたので、残念ながらアマダイを断念することにした。これだけ何度も海底付近を探っても本命からのシグナルはなかった。定番外道と言われるヒメコダイも釣れないのなら仕方ない。
 もちろん、西風が吹かなければ続行していたことは間違いない。ボート釣りの場合、まして単独釣行の場合はいつも安全第一を心掛けること。店主の言葉を思い出して岸寄りのカワハギポイントに行くことにした。
 場所はとても分りやすい。ベージュ色、白系、薄グリーン系の3棟のマンションが並ぶやや熱海寄りの水深20m前後。海底は岩礁帯と海藻が繁茂するいかにもカワハギが身を寄せたがりそうなポイントである。こんどはアンカーを投入して釣り再開。竿とリールはそのままで仕掛けとオモリを25号に交換するだけ。海底はゴツゴツした岩礁帯のようで、底を取り直すと20cmほど仕掛けが沈み込むことがあり、なかなか手強そうなポイントだ。
風光明媚な多賀港内の様子。対岸にはリゾートマンションなどが立ち並んでいる。景色でポイントを覚えておくのも大事だ。
 最初に掛かったのはキタマクラ。この魚が棲息している場所には間違いなくカワハギもいる。その数分後、叩き釣りの直後に1秒ほどポーズを入れて聞き合わせると、カンカンというカワハギ特有の引きで18cm級が釣れた。
 やっと絵になる魚が釣れたので写真を撮ってから釣り再開。群れていればすぐにアサリエサにアタックしてくるはずなのだが、コレがどうやら群れからはぐれたカワハギだったらしくその後のアタリはまったくない。エサがそのまま戻ってくるということは何も魚がいないと判断できる。
 そこでポイントを変更してゆっくりと流し、水深25m付近まで探りながらアンカーを入れる場所をチェックする。西風は午後1時30分頃には弱くなり岸に近い場所だけに気にならない。とはいえ、いまさらもう1度アマダイを狙う気力と漕ぐ時間はない。カワハギをなんとしてももう1匹という気持ちが強くなっていたからだろう。
 アンカーの上げ下ろしも水深20m前後だとあまり苦にならない。頑張って何度もポイント周辺を探ったが、アサリがハリに付いたまま戻ってくるのでは仕方ない。納竿しようと思ったが、港前の岩礁帯を最後に探ってみたら突然パワフルな引き込みが。なんだか分からないが、ゆっくり慎重に巻き上げてきてガックリ。全長36cmほどのエソであった。ルアーフィッシングでも良く引くファイターとして知られるエソだが、ここまで大きなサイズは釣ったことがなかったのでクーラーに入れて自宅に持ち帰った。
 結局、午後3時少し前に竿を仕舞って港に戻った。アマダイが釣れなかったことは残念だが、凪ぎの日にのんびりとボート釣りを満喫できたことを海に感謝しつつ戸又港を後にした。
 多賀ボート店主や地元ボート釣り好きの人の話しでは「今年のアマダイは数がそこそこ出ていて悪くない。けど水深は浅くても60m?70mラインを探る方が高確率」とのこと。常連客の多くは船外機で好ポイントを丹念に探り2人で9匹も釣った猛者もいたという。
 悔し紛れで持ち帰ったエソだが、蒲鉾の材料になる魚ということは知っていたのでつみれ汁にでもして食してみた。小骨が非常に多いので3枚に下ろしたら皮ごとフードプロセッサーに入れてからつなぎの小麦粉を入れて団子状にしてツミレ汁にした。捕れたての魚はたとえエソでも旨く食べることができるのだと改めて感心した。
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