沼津手漕ぎボート釣り
2007年11月16日
 秋が深まる11月中旬頃になると北東寄りの季節風が吹き始める。ボート釣りファンにとっては釣り場が限定されるため辛い季節となる。
 今回のボート釣りも季節風に翻弄された。当初の狙いは東伊豆の多賀沖でアマダイを釣ってみようと計画を立てた。手漕ぎボートで狙える釣り場が少ない魚だけに「もし風でダメなら狙いモノを変えるしかない」と思って出かけたわけではなかった。
 11月16日、朝6時少し前に起きて天気予報をチェック。曇天で寒いが風は強くはなかった。自宅の藤沢を出発した時には大した風は吹いていなかった。
 熱海ビーチラインを走っている際にも波やウネリの状態を確認しつつこの程度なら大丈夫だろうと考えていた。
 しかし、多賀釣具店に到着して店主に聞くと「もう無理だね、岸寄りでカワハギを釣るのも波が出てきたから危ないし、こんな日は釣れないよ」と言われガックリ。ボートを出せない気象条件を恨んでも仕方がない。だがせっかくエサも買ってあるので、隣の網代の貸しボート店を回ってみようと最初は考えた。北東の風ならたぶん網代湾も同じような海況だろう。
 と次の瞬間「そうだ。沼津に行こう。沼津なら風裏になるからボートを出せないことはないはず」と思い即決。山伏峠を抜けて伊豆半島の反対側に向った。時計の針はすでに午前8時30分を回っていた。その時点ではアマダイを釣るという当初の目的は断念していた。
 とにかく、釣れる魚を狙うしか手はない。クーラーボックスの中には自宅の冷凍庫に約1ケ月眠っていたアサリがあったのでシッカリ入れておいた。
 3本持参した竿のうち2本はやや硬めのカワハギ竿だ。とくれば、狙いをカワハギに変更するしかない。オキアミは万能エサだから捨て竿用のエサにすれば良い。などと頭の中で計画変更のシュミレーションを組み立てていた。
 降り立ったのは内浦漁港の隣に位置する長浜岸壁。湾奥だから風も弱ければ波も皆無。多賀とはまるで違う海況である。稲木ボート店(?エ055-943-2250)で手漕ぎボート(1日2500円)を借りて漕ぎ出した時には午前9時をとうに回っていた。だが、決して焦りの気持ちはなかった。それよりなんとかボート釣りが楽しめるという安堵感が先であった。数年前にも実は訪れたことのある場所だが、確かその時は風が強くて3時間程度の釣りしかできなかったという記憶があり、好ポイントを頭に叩き込む余裕すらなかった。
 さて、今回は波静かな湾内でのんびりした釣りを楽しもうとまずはヨット係留エリアを横目に見ながら漕ぐ。ボートが大きく幅もあるため動きがやや遅く感じた。とはいえイケス付だから生きエサを使う釣りモノには最高だ。
 ゆっくりと未使用イケスの周囲に浮かんでいる白い円柱型のブイにロープを括る。このエリアではアンカーを下ろすという習慣がない。約3mのロープがボートの前後に取り付けられているだけ。ボートの基本マナーとしてイケスに直接ロープを結び付けるのはオススメできないが、ブイなら問題はない。
 括り付けたブイに繋がれているイケスの上には無数の海鳥(カモメ)が羽根を休めている。空イケスだから網はかけられていない。
 釣り開始はなんと9時30分になっていた。最初の竿には片天秤にオモリを付けてアマダイ仕掛けを落してみた。底ダチをとって2.5mのハリス分のタナでアタリを待つ。すぐに2本目のカワハギ竿をセットして2本バリのカワハギ仕掛けに冷凍アサリを付けて仕掛けを下ろす。水深は35mとやや深いが、カワハギや居着きの魚が多く海底に棲息していそうな雰囲気がある。
 案の定、オキアミエサを付けたアマダイ仕掛けのエサは数分で跡形もない。
試しに着底後、すぐに竿を動かして誘いを入れてみた。なんのアタリもなく2分弱でもう付けエサがない。こいつは何かいる。もしかしてカワハギでは?
 その答えはすぐに出た。アサリを付けたカワハギ仕掛けも同じだったからだ。こうなれば、釣り方は叩き釣りに決まり。アマダイ用として持参した50号オモリはやや重いが、オモリ着底後すぐに糸フケを取って数回の叩きを入れてから少しだけ弛ませ、3秒後に聞き合わせをする。すると、数回の投入後にググッと針掛かりしてカンカンという金属的な引きを感じつつ海面に姿を現したのは良型のカワハギだ。メジャーで測ると全長23cm。キモをパンパンに張った旨そうな1尾にホッと気分が落ち着いた。写真を撮ってクーラーボックスに入れた。
キモのパンパンに張った23センチのカワハギ。著者の読みは見事にあたった。
速効で2匹目を狙っていると、10分後にまんまと叩き釣りに騙されて掛かってきた2匹目はややこぶりだ。「群れが固まっていれば数が期待できるかも」とひとりほくそ笑む余裕が出てきたのもこの頃。
 午前10時58分、強烈なアタリがカワハギ狙いの仕掛けに訪れた。引きは強いが、どうもカワハギとは違う感じ。硬めのカワハギ竿が胴から気持ち良く曲がり、リールのドラグが時折滑る。
 思わずタモを手にリールを巻く手をスローに変えた。海面直下に浮かんできたのはなんとマハタ。焦げ茶に白い縦縞が鮮やかである。今までボート釣りでは釣ったことのない稀少価値の高い高級魚にビックリ。冷凍アサリでの叩き釣りにマハタが反応したのはどうしてだろうか。場荒れが少ない好ポイントだと確信したことは言うまでもない。ただ不思議なことにこの後からカワハギの姿が見られなくなった。
 変わって集まり始めたのがサバフグらしきフグ。アサリ好きな魚は多いがフグだけは困り者。ハリスをアッと言う間に切ってしまうからだ。叩き釣りで運良く2匹は釣り上げたが、ボート内のイケスの中に一時保管させてもらった。その場でリリースすればまたハリスを着られることは確かだからだ。
 そこで場所を移動することにした。12時直前だったが、仕掛けとアサリを無駄に消耗したくなかったからだ。
 実はその少し前に冷凍アミコマセでサバ皮のサビキ仕掛けも1本沈めて置いたのが逆効果になったのかもしれない。
 湾の中央付近にも空イケスが浮かんでいたので、その四隅に浮かんでいるブイのひとつに係留。北東の風向きを考慮してロープを括ることは常識レベルだ。それでもやや風向きが変わるとゆっくりと位置が変わる。これがまた良い。わずかながら違ったポイントに仕掛けが落ちるため魚にアピールすることができるのだ。これが功を奏したかどうかは分からないが、ウマヅラが掛かった。カワハギの仲間だからカワハギもまた釣れるだろうと喜んだのが
きな間違いだった。
 なんとまた、サバフグが集まりだしたからだ。仕掛けのハリスが切られることが多くなり、オキアミを付けたアマダイ仕掛けだけでなく、サビキ仕掛けのハリも切られ、6本針だったものが午後2時50分頃には2本になっていた。これはもう無理と判断して午後3時に納竿とした。
著者の全釣果。

左上がマハタ。水深100メートル前後に生息している。側面に7本の暗褐色の縞模様があるが、これは成魚になれば消えてしまう。いずれにしても美味な魚で市場では高級魚として取引されている。

 結局、カワハギ2匹、ウマヅラ1匹に31cmのマハタが全釣果となった。
 アマダイ狙い転じてカワハギとハタが釣れたのだから決して悪い結果ではないだろうと考えている。
 これからの時期のボート釣りは出かける前にボート店に必ず電話を入れること。風の向きや強さによってはせっかく現地に到着しても竿を出せないことも多い。そんの時にも対処できる綿密な計画を立てることも大切である。
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