三菱新型グランディス 4WD 試乗記
 新型グランディスが好調に売れている。発売されたのは5月14日。その後2週間が経過した6月1日までに月間販売目標(3000台)の2倍を超える7187台を受注しているというから凄い。
 
 人気の理由を知りたくて試乗車を駆り出したのは7月23日〜24日。ウォームホワイトパールと呼ばれるボディカラー(有料色)に「エレガンス」の外観を持つX。駆動方式はマルチセレクト4WDだ。
 
 品川の三菱自動車の新社屋から都内を走ってみてまず感じたことは、全長4755mmの大柄なボディの割に加速フィーリングが軽快だという点である。 車検証を見ると車両重量は1700kgもある。
 
 2WDよりも80kgの重量増だが、実際にアクセルを踏んでハンドルを握っていると車体の重みをほとんど感じさせない。時速40km〜60kmで走る市街地ではロードノイズも少なくスムースな走りを満喫できる。
 
 ただ勾配のある上り坂にさしかかると加速が若干だが、鈍くなる場面もあった。この時フロントシートに大人2名しか乗っていなかった点を考えると、6名フル乗車した時には「モアパワー」と声高に主張したくなってしまうだろう。因に搭載エンジンは2WDと同じ2400ccSOHCの4気筒エンジンで最高出力165馬力を6000回転で絞り出す。
 
 それでも上り坂以外で加速フィーリングに不満を感じさせないのは「3500回転で吸気バルブを中低回転域から高回転域へ切り換えるMIVEC機構の恩恵で、中低速トルクを引き出してくれるからでしょう」(グランディス開発SPL・露峯登氏)。
 
 時速100km時のエンジン回転数は軽くアクセルに右足を乗せている状態で2500回転しか回らない。高速走行時の静粛性が優れているのはこうした点からも理解できる。耳障りな風きり音や不快なタイヤノイズも皆無に近かった。おそらく長時間運転しても疲労感はかなり少ないだろう。
 
 運転席に座って実際2時間以上運転してみると納得できる。それはただフロントガラスが広くて前方視界が良好だというだけではない。運転席回りの操作が実に分りやすいという点にある。インパネ内の大小5種類のアナログメーターはブルーを基調にした透過照明で見やすい。短いATレバーの操作はやや慣れが必要かもしれないが、センターコンソールに設置された空調スイッチやオーディオスイッチの操作パネルが大きく表示の文字も大きく見やすい。
 
 こうした操作スイッチはどうしても走行中に指でタッチすることが多いため、操作ミスのない文字表示とサイズが重要だ。その点新型グランディスは高く評価できる。「扇子をイメージしたデザイン」(露峯氏)も斬新で他のミニバンには見られない個性だ。
 
 インテリアで見過ごせないのは多彩なシート機構である。中でも便利なのが新開発だというサードシートの床下収納機構だ。左右分割に操作できる点が嬉しい。荷物の積載量と乗車人数を考慮してサードシートのアレンジを自由に工夫できるからだ。 しかもシート自体の重さも半減できて女性や子供でも簡単に荷室スペースを創り出せる。

 女性に人気なのが助手席のユースフルシートである。着座面を前方に持ち上げることで収納ボックスとして使えるだけでなく、買い物袋を安定して置くことができる。ブレーキングによる荷崩れも解消。

 さらにセカンドシートにはシートクッションの角度を3段階に変えられるリラックスモード機能を採用。フロントシートのシートバックに装備されたパーソナルテーブル(ダンパー付)を利用できる点を考えると最も快適に寛げるのはセカンドシートということになる。
 
 だが、購入するドライバーにとって最も気になるのはスタイリングだ。その点開発SPLの露峯氏は「日本人が考えるカッコイイくるまを目指した」という。「日本的な美を持たせる意味で竹林の中の石庭をイメージした」(露峯氏)という点も面白い。
 
 外観デザインの発想は「つ」の文字を一筆書きで完結する流麗な曲線を強調している。ボンネットからルーフまでの滑らかなライン。さらにリアフェンダーの下端までを「一筆書き」のデザインに仕上げている。先代モデルの直線基調のデザインとは大きく異なる点だ。
 
 フロントグリルは試乗した「エレガンス」の他に「スポーツ」がある。真正面から眺めるとまるで鎧兜の兜に見えてくる。凛々しくて毅然とした武士魂の強さと恐さを感じさせる。高速道路の追い越し車線を走ると先行車が直ぐに道を開けてくるような威圧感も感じるのだが。「エレガンス」は「スポーツ」のフロントマスクを少し優しくソフトなデザインに仕上げている。
 
 新型グランディスは他の国産ミニバンと比較して存在感のある外観デザイン、多機能なシートアレンジ、一目で分りやすい操作スイッチ類など魅力的な点が数多くあり、しかも車両価格が4WDでも300万円以下に抑えている点は注目に値する。

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