ランドクルーザー新型プラドTZ試乗記
 ランドクルーザーと聞いて道なき道を勇猛果敢に駆け回るクロカン4WDを連想する読者は多いだろう。今回試乗に駆り出した新型プラドは同じランドクルーザーシリーズの中でも100系とは異なりハイラックスサーフから派生した都会派オフロード4WDの要素が強いモデルである。
 開発テーマは「ニュートラディショナル4WD」だという。具体的には、過酷な使用条件下における卓越した走破性と信頼性を進化させながら、一方でオンロードでの快適な走行性能を追求している、とトヨタでは主張している。そこで実際に快適なオンロード走行や使い勝手など総合的な性能をチェックするべく外房・飯岡付近まで試乗をしてきた。
 
 駆り出した試乗車はプラドシリーズの最上級モデルであるTZのガソリン車。ボディタイプは実用
性を重視した5ドアである。ドアを開けて運転席に座ると、すぐに分かるのは前方視界の良さだ。シートの着座位置が4ドアセダンとは異なり、乗り込む時にサイドステップに足をかけないと乗りにくいのは何もプラドだけではない。それだけ最低地上高を上げて悪路走行をする時に有利な設計が施されているからだ。また今回のフルモデルチェンジでタイヤのサイズを16インチから17インチ(265/65R17)に拡大している点も見逃せない。タイヤのインチアップがわずかだが車高を上げることつながるはずだ。
 
 とにかく、運転席からの前方視界はすこぶる良好でボンネット左右の角が目で確認できる。つまり、運転免許証取り立ての初心者でも運転はしやすいということだ。しかも、助手席側を含めたフロントシートの頭上空間はゆったりしていて圧迫感がない。
 室内寸法のカタログ数値をチェックすると、旧モデルに比べて室内長と室内幅でそれぞれ75mmも拡張している。ただ室内高はなぜか5mm低くなっている。それでも運転席の頭上空間に余裕があるのは長時間ドライブでの疲労を軽減してくれるだろう。
 
 マニュアル風シフトレバーをDレンジに入れて走り出す。最近流行のゲ−ト式を採用するATレバーはなぜか中途(Dレンジ)で3速に左手前方向に切り替える操作が必要となる。力を入れなければスムースに3速に入るが、どうしてゲート式にしてDレンジの所でワンクッションを入れる操作を加えたのかトヨタ広報部に問い合わせている段階だが、10月末の段階での回答はいただけないままとなっている。
 
 確かに、Dレンジまで軽くスムースに操作できるのだから一般的な市街地走行なら3速にシフトダウンする必要はない。ただし、山坂道を下るような場面では積極的にシフトダウンをするドライバーも少なくない。
 つまり、ゲート式によってDレンジと3速レンジを区分する必要があるのか疑問をもった。開発を担当した技術者に直接インタビューしてみたい点である。
 
 加速性能は軽快で気持ちがいい。低回転から太いトルクを発生する3400ccDOHCエンジンを搭載するためたとえ車両重量が2トン弱とヘビー級でも発進加速でも鈍さは微塵も感じなかった。アクセルに対するレスポンスも鋭く渋滞の多い都心部でもストレスはあまり感じないで済んだ。因に最高出力は185馬力で最大トルクは30.0kg・mである。
 
 加速性能以上に感心したのは乗り心地の良さだ。まるでクラウンクラスの高級サルーンのリアシートにでも座っているような気分にさせてくれる快適な乗り心地である。ライバル他車を一歩以上リードしていると感じた。たぶん旧型プラドと比較してもかなり足回りの熟成は進んでいるに違いない。

 高速走行時の目地の乗り越えの瞬間も路面から受ける衝撃が最小限に抑えられていてひと昔前のオフロード4WDとは隔世の感を禁じ得ない。
 だが、それはあくまで一般道路や高速道路を中心としたオンロード性能の一面だ。試乗コースには悪路を試す場面がなかったため実際には走っていないが、乗り心地を重視したサスペンションの味付けのためにブレーキング時にフロントが前傾するノーズダイブ現象がたまに感じられた。若干強めにブレーキを踏み込むとわずかだが、フロント(ボンネット)が沈み込む感触が残り乗り心地を重視した足回りの弱点をみせていた。
 
 確かに、2トン近いボディを加速させて途中でブレーキをかければどうしても制動姿勢が前のめりになるのは仕方のないことかもしれない。だが、そうならないように車体の軽量化、特にバネ下重量の軽量化をもっと進化させて欲しいと願うのは何もクロカンファンだけではないだろう。
 
 静粛性も驚くほど向上していると感激した。この点に関しては、新設計した専用高剛性フレームや吸音材&遮音材の適切な配置によってエンジン音の他ロードノイズや風きり音を低減させているという。走行中に室内が静かだということはドライバーにとっては疲労が蓄積されないため、長時間ドライブには重要な性能といえる。
 
 ひとつ残念に感じたのはセカンドシートの居住性の向上の反面、サードシートの居住スペースが犠牲になっていたように感じた点だ。5ドアのホイールベースは2790mmで旧型に比べて115mmも延長されているが、その大半をセカンドシートの居住スペースに割いている。つまり、5ドアの3列目シートはあくまで補助的な使い方ができる程度で成人男子を長時間腰掛けるには多少苦痛を伴うかもしれないということである。荷物と乗車人数を考えればサードシートは荷物スペースのシートといってもいいだろう。
 
 それでもフロントシートのフルフラット化や折り畳み可能なセカンドシート機構など使い勝手に優れた多彩なシートアレンジはファミリーユースとしても魅力的である。
 
 全体的に見て都会派クロカン4WDのトップブランドとして高く評価できる1台であることは間違いない。3年後のリセールバリューもクロカン4WDの中ではかなり値落ちの少ない人気モデルとなりうるだろう。



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