東京オートサロン2004 見て歩き
毎年1月に入ると、「真冬のモーターショー」が幕張メッセで開催される。「東京オートサロン」だ。
 日本最大のカスタムカーの祭典として認知度はかなり高く、最近では国産大手メーカーもこぞって出
展ブースを出すほどである。来場者数も開催期間の3日間で約25万人を記録している。
 

ダイハツ工業の販売企画室販売促進グループの山本剛氏はオートサロンの出展に関してこう語る。
 「ダイハツとしての出展は実は2年目なんですがドレスアップしたダイハツのクルマをパーツメーカ
ーやドレスアップ&チューニングメーカーに依頼して独自に出展してきました。ただここ数年カスタム
カーの人気が高まり、メーカーとしても軽視できないショーになっていますので、ユーザーの趣味趣向
を実地で把握する意味でも良い勉強になります」という。
 
 そこで国産主力メーカーの出展車両を見て歩いた印象を中心にカスタムカーの製作を本業にしている
車両との比較もしていこう。

 まずトヨタのブースから。全部で11車種が展示される。メインステージに展示されたクラウンアス
リートは、外観からするとあまり派手に着飾った印象は受けないが、ノーマルのクラウンとは異なる。

 具体的には、ボディの前後左右に定番のエアロパーツを装着し、シャープでエレガントな雰囲気を演
出している。例えば、低く構えたフロントハーフスポイラーやリアスポイラーがスポーティ感覚を盛り
上げている。全体的に大人しい印象である。

 だが、中身が凄いのだ。足回りではオリジナルの専用サスペンションチューニングを施し、19イン
チのタイヤ&ホイールを装着している。エンジンでは吸排気系に手を施し本格的なプレミアムスポーツ
セダンに仕上げている。

 もう1台はトヨタの特装車両を一手に手掛けるモデリスタが担当したエスティマ・スーパーチャージ
ャーだ。「トヨタの天才たまご」をロー&ワイドなスタイリングに仕上げたのは足回りに専用のスーパ
ーローダウンスプリングを組み込んでいるためだ。さらに19インチタイヤ&ホイールで着飾って全体
をスポーティに造り上げている。注目は搭載エンジン。オリジナルのスーパーチャージャーを装着しハ
イパワーな心臓部に作り替えている。

 外観では、フロントエアロバンパーやボンネットエアアウトレットダクトなどスポイラー類で武装し
なかなかスポーティなエスティマに仕上げている。ただし上記2車種はあくまで参考出品車だというか
ら市販される可能性は低い。


 さて、トヨタがカスタムパーツメーカーに依頼して製作した車種に目を向けてみよう。アルファード
のDAMDバージョンである。エアロパーツの製作会社として人気が定着したDAMDは独自のデザイ
ンセンスでアルファードをコンプリートカーに仕上げている。ベース車両はMX。シルバーメタリック
のカラーはそのままだが、フロントスポイラー、サイドスカート、リアハーフスポイラーはDAMDら
しい個性が溢れていて好感が持てる。同じブースにTRDが手掛けたアルファードも展示されていたが
外観だけを見た限りではDAMDバージョンの方がオリジナリティが前面に打ち出されていて注目度が
高いように感じた。

 2台のドレスアップしたアルファードは販売店の装着オプションとして購入できるというから嬉しい。
 メーカーの手掛けたカスタムカーとドレスアップ専門メーカーが手掛けたデザイン的な比較ができる
格好の車両がもう1台あった。シエンタである。メーカー系では、TRDとモデリスタ仕様。専門メー
カー系ではWALDとGIALLAだ。見た目の印象は、TRDの外観が最もスポーティに仕上がって
いるといえる。確かに永年モータースポーツの分野で培ってきた独自のノウハウと実績があるからかも
しれない。フロントスポイラーのアンダーカウルの部分はなかなかセンスが良い。比べてWALDやGIALLAのスポイラーはデザイン的に冒険心が足りない感じを受けた。良く言えば、都会的でオ
シャレなのかもしれないが、個性と迫力に欠ける。
 

 日産のブースで目立ったカスタムカーを見てみよう。日産のカスタムカー製作はお馴染みのNISM
OとAUTECHの2社が思い浮かぶ。日産の特装自動車メーカーとして高い信頼を持つAUTECH
では、3種類のブランドを提案している。

 具体的には、「Rider」「Trabis」と「AXIS」である。ハイクオリティなカスタムカ
ーとして高く評価できるが、全体として迫力が足りない。少なくとも外観から受ける第一印象は大人し
い感じで特別スポーティでスタイリッシュという印象は受けない。全体のデザインのバランスと取れて
いるのだろうが、もう一工夫が欲しい。

 出展車種の中ではエルグランドの「Rider」Sが最も完成度が高く注目に値する。それは単にエ
アロパーツのデザインが個性的で迫力があったからというのではなく、フロントグリルのデザインとア
ルミホイールのデザインの統一感が都会的でセンスが良いと感じたからだ。一見するとどこかアメリカ
車っぽい感じは受けるが、個人的には好きである。

 NISMOの方はどうか。印象としては全体的にAUTECHの仕様よりもハード面、つまり技術的
なチューニングに振ったモデルが多く展示されていた。中でも「S−チューン」コンセプトのフェアレ
ディZは完成度が高く、注目に値する。

 例えば、アクセル操作にクイックに反応するエンジン特性、走行性能と乗り心地を両立させたサスペ
ンションチューニングなどストリート仕様として最大限にスポーティな味付けに仕上げている。外観の
印象を決定付けるエアロパーツでも単にデザインだけにこだわることなく風を味方にする空力特性を十
分考慮した上で設計されている。その上でクルマ全体のバランスを考えた美しさを演出している。

 走りの高性能は言うまでもない。S−チューンのサスペンションやブレーキパッド、ヴェルディナの
ステンレスマフラーや19インチのアルミホイールなど卓越したスポーツ走行を思う存分楽しめる仕様
となっている。それもそのはず。NISMOは国内最高峰のレースであるJGTC2003シリーズを
制した「XANAVI NISMO GT−R」を手掛けているのだから。この他にもエルグランド、
マーチ、スカイラインクーペが人目を引いた。ハードな印象のNISMOに対してAUTECHはソフ
トなイメージが強い。

 日産のブースにもカスタムカー専門メーカーが手掛けたクルマが数台展示されていた。例えば、DA
MDやGIALLA、KENSTYLEやDAYSが代表的なところだ。どれも個性的なエアロパーツ
を装着して独自のデザインを演出している。スポーティさをどのように演出するかを各メーカー同士で
競い合っているようで興味深い。

 素晴らしいことにこうしたカスタムカーのパーツを装着してコンプリートカーとして販売する専門会
社(株アルティア)がある。そのブランド名が「OWN」だという。自動車メーカーも大変幅広い事業を
展開するようになった。販売店オプションとして扱うのではなく、独自のカスタムカー取扱い販売会社
を作るのだからユーザーの趣味趣向も相当広大だ。
 

 足が止まったのはホンダのブースである。ホンダらしいオリジナリティ溢れる3台が展示されていた
からだ。注目度の高さから挙げるとオデッセイのコンセプトモデルが一番かも。走りとスポーツフィー
リングが際立つ「エクストリームパフォーマンスオデッセイ」がそれだ。フロントパンパーの開口部は
大きく、テールゲートスポイラーの形状などなかなか個性的で見た目の迫力もあって注目度は高い。

 驚いたのは車体の腹部、つまり下回りがフラットボトムになっていてまるでレーシングカーのようだ。
 インテリアでは、セカンドシートをセパレート化し、センターフロアにオーディオをレイアウトした
点は高く評価できる。ルーフ部にはエンタテイメント系の装備類を配置し、ルーフセンターモジュール
としている。

 軽自動車のライフは「女性のための、女性が作り上げたクルマ」である。ホンダのカー用品会社であ
るホンダアクセスの女性スタッフと女性雑誌編集部が中心となって集められたカラーセラピスト、スタ
イリスト、ヘア&メイクアップアーティスト、シューズデザイナー、ファッション新聞の女性プロジェ
クトが本当に作りたいと思うクルマを作ったのがコレ。外観で目立つのはなんといってもツートンカラ
ーに塗り分けられた点。なんでもヨーロピアン・ネオクラシックとも呼べるプレミアム感を提案したの
だという。車両コンセプトは「スウィーツ・オブ・
ホンダ」。スウィーツのイメージを表現しているのだが、正直あまり意味が分からない。甘いお菓子を
イメージしてクルマを作るという発想がユニークではある。

 3台目はアコード。名前はアコード・スポーツスタディ。コンセプトは「トゥルースポーツセダン」
である。ヨーロッパで確固たる地位を築いているスポーツセダンとして知名度は高い。そのスタンダー
ドモデルの上に走りとスポーティなスタイルを追求したパフォーマンスモデルが展示のアコードだ。外
観は筋骨隆々なマッチョな筋肉美を演出したエアロパーツデザインが個性的で好感が持てる。見た目の
迫力もあってスポーツセダンらしく仕上がっている。インテリアでも、アルミやカーボンに加えてレザ
ーも使用。上質な大人の味わいを大切に完成させたアコードでもある。


 最後にマツダのブースも覗いておこう。マツダのアフターパーツメーカーといえばモータースポーツ
の分野では名の知れたマツダスピードがある。そのマツダスピードがコンプリートカーを真剣に作ると
こうなるという典型がRX−8マツダスピードBスペックである。RX−8の発売と同時に導入された
Aスペックの走りをさらに追求し、グレードアップを図ったのが新開発のBスペックだ。過酷な連続走
行に高い効果を発揮する冷却系パーツ、高速コーナリング時にクイックで安定したハンドリングを実現
する高性能サスペンション、強化ブッシュ、19インチ鍛造アルミホイール、強化クラッチ、スポーツ
サウンドマフラーなどサーキットでのスポーツ走行にも対応したチューニングパーツを採用している。

 とにかく、純粋に走りを突き詰めた仕様としてロータリーファンには見逃せないモデルといえよう。
 アクセラスポーツマツダスピードAスペックも捨て難い良さがある。チューニングの部分はどこかと
言えば、スポーツサスペンションに18インチタイヤ、排気効率の向上と音質チューニングによってス
ポーツマイドを高めスポーツサウンドマフラーなどによってストリートでの性能向上を目指した点だ。

 外観ではエアロダイナミクスを改善したエアロパーツは、スポーティで洗練されたモダン&エモーシ
ョナルなスタイリングも追及している。

 この他にもアテンザやデミオのマツダスピードAスペックが展示され、注目を浴びていた。ワークス
チューンならではの高い技術力と信頼性が盛り込まれたマツダスピードが手掛けるカスタムカーは今後
も目が離せない。




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