2003年下半期国産車総括
 2003年は10月下旬に東京モーターショーが開催された関係で9月以降に新登場したニューモデル
が多く、自動車メーカー各社から矢継ぎ早に出される新型車を吟味できないまま購入を決めてしまった
読者もいたのではないだろうか。

 国産車の人気モデルは相変わらずミニバンとコンパクトカーに集中しているようだが、トヨタのプリ
ウスに代表されるエコカーも注目の的になってきた。低排出ガスや燃費経済性を重視した設計は今や当
たり前の時代となったが、どのモデルを見ても大差がないように見えてしまう。

 そこで今回は2003年下半期にデビューした新型車を走行性能だけでなくエコカーとしての魅力を
加味しながら各車を総合的にチェックし、独自のランキング付けをしてみた。

 とはいえ、搭載エンジンやボディサイズを無視して総合評価は下させないので一応軽自動車クラスと
コンパクトカークラス、小型車以上のクラスの3区分に分割して見て行こう。


 まずは軽自動車クラスから。新型ホンダライフが登場したのは9月5日からだが、ターボ車の設定も
あって走り好きの若年層から注目度が高い。人気の理由は他にもある。新開発のコンパティビリティ対
応ボディを採用した点にある。これは車対車の衝突時の衝撃エネルギーをエンジンルームで効率良く分
散、吸収させることで乗員を守るための自己保護性能を向上させている。つまり、ぶつかった時の相手
車両へのダメージを少なくしているということだ。

 また、新開発の660cc3気筒i−DSIエンジンも見逃せない。軽自動車としては異例なほど高
回転まで力強く回るエンジンと評価が高い。1気筒当たり2本の点火プラグを備え急速燃焼させて燃焼
効率を高めている。だから低回転から高回転まで静かで滑らかな加速フィーリングを体感できる。

 しかも、新開発の電子制御オートマチックトランスミッション(アクティブロックアップ機構採用)と
組み合わされることで低燃費とクリーンな環境性能を両立している。10・15モード走行燃費では、
リッター当たり19.8kmの数値を叩き出している。ターボエンジンを含めた全エンジンが国土交通
省「超-低排出ガス」に認定され、4WDのターボ車を除いてグリーン税制の対象となっている。

 リサイクル率も素晴らしい。塩化ビニール樹脂に関しては軽自動車として初めて内装部品から全廃し
クルマ全体の90%以上のリサイクル可能率を達成しているという。以上の点からエコカーとしての総
合評価は高いといえる。
 気になる価格は95万円から128万円。買い得のオススメグレードはノンターボのFで105万円
である。全国のプリモ店で購入できる。

 スズキのワゴンRも9月30日にフルモデルチェンジを受けて全面リリニューアルされた。ワゴンR
と言えば軽自動車のヒットモデルとして圧倒的な人気を誇り、2003年8月末までの10年間で累計
194万3000台を販売している。

 新型ワゴンRはデザインこそ角形のトールデザインを踏襲したキープコンセプトで少し新鮮味に欠け
るものの室内居住スペースを拡大し、使い勝手の機能性をさらに高めている点は高く評価できる。

 新開発のプラットフォームを採用することで車体の軽量化を居住性アップにも関わらずかなり抑えて
いる点も注目に値する。軽量衝撃吸収ボディ「TECT」や運転席・助手席エアバッグの全車標準装備
などによって衝突安全性能を向上させている。車体の前部に歩行者傷害軽減構造を取り入れて点も安全
対策への深い配慮といえる。

 搭載エンジンでは、環境に配慮した軽自動車初の直噴(DI)方式を採用したターボエンジンをRR−
DIに設定。燃費は2WDの4AT車でリッター当たり19.0kmで「超-低排出ガス」車に認定。

 当然、グリーン税制に適合している車種が大半だ。
 価格は最も安いFAのマニュアル車が77万円。最も高いのが直噴ターボの4WDの4ATで151
万2000円。買い得グレードとしてオオスメできるのはFXのAT車で96万5000円である。

 ダイハツの新型軽乗用車タントも魅力的なニューモデルである。最大の特徴は軽最長の2440mm
のロングホイールベースと2000mmの室内長だ。とにかく、広々とした室内空間と豊富な収納スペ
ースが魅力の軽カーである。コンセプトは家族みんなと毎日楽しめるクルマだという。

 搭載エンジンは俊敏な加速フィーリングを満喫できるツインカムDVVT3気筒エンジンとターボエ
ンジンを設定。最高出力はノンターボが58馬力でターボが64馬力。組み合されるATは電子制御式
4ATだから快適な加速性能と滑らかなシフトフィールに加えて優れた低燃費も見逃せない。

 環境性能については、貴金属の使用量を大幅に低減したインテリジェント触媒を全車に採用したこと
が注目に値する。ダイハツが世界に先駆けて開発したもので、触媒用貴金属(パラジウム)に自己再生機
能を持たせたものだという。省資源に貢献している点は高く評価できる。

 また、ツインカムDVVTエンジン搭載の2WD車は電動式パワーステアリングの採用などによって
2010年の燃費基準に適合し「超-低排出ガス車」認定を受け、グリーン税制にも適合している。

 車両価格は最も安いLが99万8000円。最も高いのが4WDのRSで146万円となっている。
 買い得グレードは2WDのXで113万円。


 スバルR2は12月8日に新発売された個性的なデザインの軽カーである。最大の特徴はなんといっ
てもフロントードからリアルーフへと流れるボディシルエットだ。昨今の軽カーのお決まりデザインに
「ノー」を叩き付けて敢えてスバルらしい個性を主張したスタイルは好感が持てる。具体的にはダイナ
ミックなフェンダー部分や大径タイヤ(14〜15インチ)によってスポーティな走りのイメージを演出。

 全体的にもボリューム感のあるドッシリとしたフォルムとどこかヨーロッパ車的な雰囲気のリアビュ
ーも好印象である。

 注目は3種類も設定された新開発の搭載エンジンだ。主力は自然吸気のDOHCで電子制御スロット
ルや可変バルブタイミング機構を採用。パワフルな加速性能と低燃費を両立している。パワー重視派に
はDOHC16バルブインタークーラー付スーパーチャージャー仕様もある。燃費経済性重視派にはS
OHC仕様もあり、幅広いエンジン機種から最適なクルマを選択できるという点は魅力的といえる。

 組み合されるトランスミッションは通常のATとは異なるi−CVTを採用。魅力はこのi−CVT
との相乗効果によって優れた低燃費を実現した点だ。

 2WDのi−CVT車はリッター当たり24kmも走るという。参考までにSOHC車はリッター22
.5km、スーパーチャージャー付エンジン車は18.8kmを達成。特にスーパーチャージャー車は
マニュアルモードを備えた7速スポーツシフト機能を装備し、スポーティ感覚の走りを堪能できるよう
に工夫されている。

 気になる価格は最も安価なiの5速マニュアルが86万円。最も高価なSのAWDがスポーツシフトi
−CVTで140万円となっている。買い得のオススメグレードはRの2WDのi−CVT車で112
万円。
 

 軽カークラスの4車種の中で評価を下してランク付けするというのはかなり難しい。環境性能や燃費
経済性を重視するならスバルのR2がトップにくる。ただしホンダの新型ライフも僅差で付けている。
デザインの好みや価格を加えて最終判断をして欲しい。個人的に残念に思うのは新型ワゴンRのデザイ
ンにまったく新鮮味が感じられないことだ。その点でいえば、ダイハツが新開発して登場させたタント
は室内の広々感や使い勝手の良さなど子供連れの若いファミリーには最適な1台といえる。
 そうなると、順位は3位がタントで4位がワゴンRという結果になる。ただし、車両価格や3年後の
リセールバリューは何も加味していないのでご了承下さい。


 次にコンパクトカークラスの2003年下半期の新型車の中から魅力的な車種をピックアップしてみ
ると、まず忘れてならないのがトヨタ・プリウスだ。新世代トヨタハイブリッドシステム「THS?」
を搭載し、世界最高レベルの燃費リッター当たり35.5kmと低エミッションを実現している点が注
目ポイントである。しかも従来モデルとは比較にならないほど加速性能に磨きをかけている。発進加速
でのモタつき感はまったくない。実際に試乗した感覚では、2000ccのガソリンエンジン搭載車と
同等以上の発進加速、追い越し加速を確保している。

 簡単に言えば、モーターパワーとエンジンパワーの相乗効果を革新させることで達成したという。
 具体的な数値を表記すると、従来型のプリウスではハイブリッドシステムとして計測した場合、最高
出力は101馬力だったものが、新型では111馬力まで引き上げられている。もちろん変速ショック
のない滑らかで静かな加速フィーリングも向上しているから快適な走りを楽しめる。


 さらに、世界初と言われるステアリング協調車両安定性制御システム(S−VSC)が採用され、これ
まで以上に優れた操縦性と走行安定性を向上させている。驚くのはまだ早い。世界初のインテリジェン
トパーキングアシストは画期的だ。電動パワーステアリングとバックガイドモニター技術を応用し、縦
列駐車や車庫入れ後退時のステアリング操作を支援することで駐車ができるというもの。要するにドラ
イバーがステアリングに触れずに駐車できるということだ。EVドライブモードも素晴らしい。スイッ
チを押すだけで騒音が少なくクリーンなモーターのみで走行を選択できる。このため、早朝や深夜など
の始動や発進時に迷惑をかけずにすむ。

 とにかく、画期的な先進機構や革新的な装備が多く枚挙に暇がない。車両価格も良心的な設定だ。最
も安価なSが215万円。最も高価なGのツーリングセレクションは257万円。買い得なのは廉価モ
デルのSで満足。どのグレードでも基本的な燃費と環境性能は同じなのだから価格の手頃なSが経済的
で決して不満は感じないと思う。

 同じトヨタのシエンタもコンパクトなミニバンとして高く評価できる1台である。「小粋でユースフ
ルな7人乗り」が開発テーマになっているという。

 シエンタの最大の特徴は使い勝手の良さにある。例えば、赤ちゃんを抱えたママさんにも簡単に片手
でポンとシートアレンジができる親切機構が随所に設けられ、後席回りの乗降性を含めた使い易さは注
目に値する。


 搭載エンジンは新開発の1500ccエンジンで無段階変速のスーパーCVTとの組み合せが魅力だ。
 環境性能でもライバル車には負けていない。全車超-低排出ガスレベルと平成22年燃費基準を達成。
 しかも10・15モード燃費はリッター当たり19.0kmを実現し、3列シートを持つ7人乗り乗用
車ではトップの数値だ。価格も手頃で嬉しい。最も安いXのEパッケージが137万円。最も高い4WD
のGが184万円となっている。経済的で買い得なのは2WDのX。価格は149万円だが普段の使い方
で不満を感じることはたぶんないだろう。販売店は全国のカローラ店とネッツ店両方で購入できる。


 このシエンタに対抗するのが日産のキューブキュービックだ。特徴は全長3900mmのコンパクト
ボディの中でクラストップレベルの室内空間を確保している点である。実用性の高い3列シートを採用
し、7人乗車が可能なだけでなく乗降性や使い勝手に優れたシートアレンジも魅力のポイント。リアド
アの開口面積も広くかさばる荷物も容易に積み込める。しかも、最小回転半径は小回りの効く4.7m
を実現しているから狭い路地の多い商店街通りでも軽快に走り回れる。

 搭載エンジンは1400ccDOHCのみだが、トランスミッションはキュービック専用に最適制御
されるから快適。またマニュアルモード付6速のエクストロニックCVT−M6の設定も注目。滑らか
な加速感と燃費向上を両立しつつ、スポーティに操作性にも配慮しているというから嬉しい。ステアリ
ングスイッチによって親指一本でシフトダウンが可能という点も魅力的である。

 気になる価格はというと、最も安価なのがSXのAT車で139万8000円。最も高価なのがEX
のエクストロニックCVT-M6で164万円だ。
 買い得なのは最も安いSXのAT車。普通に使うのならなんの不満も出ないだろう。販売店は全国のブ
ルーステージ、レッドステージの両店で購入できる。

 マツダのアクセラはかなり力の入った新開発コンパクトカーとして高く評価できる。ボディは4ドア
セダンと5ドアを設定。搭載エンジンは1500cc、2000cc、2300ccの3種類を用意す
る。最高出力は順に114馬力、150馬力、171馬力である。外観デザインはなかなか個性的で存
在感のあるマツダ車らしいボリューム感がある。

 特に「アクセラスポーツ」と位置付けられる5ドアはスポーティなデサインとキビキビとした俊敏な
走りを合わせ持つ車種でありながら、5ドアとしての使い勝手の良さも見逃せない。ホイールベースは
2600mmと長く、フロントトレッドは1530mmとワイドだが、最小回転半径は同クラスの5ナ
ンバー車と同等の5.2mを実現している。

 またAT全車にマニュアルモード機能付のアクティブマチックを採用し、運転する楽しさを追求した。
 最上級モデルの2300cc車にはファイナルギアレシオを4.416というローギアを採用し鋭い
加速性能を高めている。最もスポーティな走りを堪能できるモデルとして位置付けられている。

 また、ヨーロッパのアウトバーンで走行テストを繰り返し、ドイツ人やスウェーデン人の開発エンジ
ニアも加わったマツダの世界戦略車だけに技術力を結集した自信作といっていい。

 価格は最も安い15Fのマニュアル車が139万5000円。最も高い23Sが195万円である。
 買い得モデルは15Fのアクティブマチック(4EC−AT)で148万円。ただし走りよりも実用性
と経済性を重視した選択方法の場合である。

 2003年下半期はこの他にもホンダのオデッセイやスバルのレガシィなど魅力的な車種が数多く市
場に投入されたが、今回はライバル他車と比較する関係で価格帯の異なるミニバンや3ナンバーワゴン
車を持つ上記のニューモデルは割愛した。


 さて、上記のコンパクトカークラス4車の中で順列を付けるとしたらやはりプリウスがどうしても環
境性能と先進機構、そして割安な価格設定の点でトップにくる。次は使い勝手と実用性、経済性を重視
した感のあるシエンタが2番手にくる。ただ純粋に走ることに楽しみを見出せるという点ではマツダの
アクセラも同率2位に推したい。クルマとしての完成度の高さ、豊富な車種バリエーション、価格設定
の安さも考慮すると個人的にはシエンタより上にしたいのだが。すると4番手がキューブキュービック
ということになるが、3列シートを持つコンパクトミニバンとして見た場合には、特別不満点はない。

 あくまで上記の4車種の中で優劣を付けランク付けした場合の結論に過ぎない。後は販売店に足を運ん
で実際に試乗車のハンドルを握ってから決めて欲しい。



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