国産車のミニバン比較 (積載と収納)
 国産車の種類はここ数年でかなり増加している。中でも安定した販売台数を確保できるミニバンは
以前のファミリーカーにとって代わった感が強い。理由は簡単である。大勢の人数が乗車できて、
しかも積載量が乗車人数に応じて自由に変更することができる。別の言い方をすれば、人と荷物を
自由自在に積み込める便利な移動手段といえる。

 もちろん、室内空間も一般的な4ドアセダンと比較しても雲泥の差がある。要するに、室内スペ
ースに余裕があるのだ。それでいて荷物もそこそこ大量に積めるとなれば、実用性を重視するファ
ミリーカーの筆頭に格上げされても可笑しくない。


 そこで今回は、国産ミニバンの中から「積載と収納」に優れた3台をピックアップして、順列を付
けてみた。外観デザインやエンジンの動力性能、あるいは足回りのハイテク機構には言及せずにあ
くまで「積載と収納」の部分にスポットを当てて比較解説していく。ただし今回は国産ミニバンの
全車種の中から選び出すのではあまりに焦点がボケてしまうので、一応L(ラージ)クラスのミニバ
ンから話しを進めて行こう。エンジン排気量で言うと、2001cc以上3500cc以下の中に
入るクラス区分である。

 現行Lクラスミニバンの中で最も魅力的に見えるのが三菱のグランディスと日産の新型プレサー
ジュである。両車種とも今年の5月と6月に新登場したばかりだからライバル他車に対する研究が
行き届いていて、機能面での優劣は実際に使ってみなければ明確な回答は出せない。

 ここではまずカタログ数値から比較してみたい。
具体的には、ホイールベースの長さ。グランディスは2830mmなのに対してプレサージュのホ
イールベースは2900mmと長い。70mmの違いは数値上では対した差ではないが、室内スペ
ースに与える余裕は図り知れないものがある。

 だからといって単純にプレサージュの居住スペースが優れているとは限らない。ボディサイズに対
するバランスの上でホイールベースの長さは決められるため、ボディ全長を比較する必要がある。
 グランディスの全長は4755mmなのに対してプレサージュのそれは4840mmである。

 つまり、プレサージュの方が85mmも長い。ということはホイールベースの長さはボディに対
する比率の関係で長くしているたけで、そのために室内の居住スペースが極端に広くなっていると
は考えにくい。ほぼ同じホイールベースを持つライバル車を挙げるとすれば、ホンダのオデッセイ
とトヨタのイプサムがある。2830mmのオデッセイと2825mmのイプサムだから同じと考
えていいだろう。

 だからといって、上記の4車種がすべて同じ居住スペースを持っているわけではない。積載の面
から考えれば、シートを倒して確保できるラゲッジスペースはどれくらいなのか。またシートをフ
ラットにするのに時間は掛かるのか、無駄な労力を必要とするのか、荷物を積み込む時のフロアの
高さはどうか。低いのか少し高いのかなど細かい部分をチェックしていくと、枚挙に暇がなくなる
し、重箱の隅を突つくことになり、あまり意味がない。

 ならば、車種別に積載と収納の魅力のポイントを抑えておこう。まずグランディスから。
 積載の時に大きなメリットになるのが3列目シートの左右分割床下収納機構の採用だ。左右を2
分割することで荷物の収納時に軽々と折り畳むことができる。また、収納後はラゲッジのフロアが
フラットになるため、荷物の分量に応じて従来以上に柔軟に使いこなせるようになった。

 もちろん、セカンドシートの分割機能と組み合わせれば色々な用途に対応できる。無理なく多彩
なシートアレンジを使い分けることができる点が最大の特徴である。

 細かい収納機能も見逃せない。フロントシートには上下2段式のグローブボックスやセンターテ
ーブルが装備される。全3列シートにはそれぞれドリンク&カップホルダーが標準装備されている。

 また、コルトで好評の助手席ユースフルシートが採用され、買い物袋や手提げバッグを安定して
置くことができる。ユースフルシートは、シートの着座面を前方へ持ち上げることで大きな収納ボ
ックスが出現する。嬉しいのはさらにその下にコンパクトなボックスも備えられている点だ。使い
勝手に優れた収納機能といっていい。操作する時の力もそれほどいらないので女性でも容易に操作
できるはずだ。

 こうした点を踏まえた上でプレサージュと比較するとどうだろうか。最大の特徴のトップに「ら
くらくシートアレンジ」を掲げているほどだからさぞ積載や収納に関しては自信を持っているもの
と思われる。室内長はこのクラストップの2995mmを実現している。前述した通りボディ全長
がグランディスと違うので単純に比較はできないが、広いラゲッジスペースを確保しながら開放感
のある頭上空間と足元空間を拡大し、大人6人がゆったりと座れる空間を実現している点は高く評
価できる。

 一番魅力的に感じたのはセカンドシートの横スライド機構だ。用途に応じてキャプテンシートモ
ードから3人掛けのベンチシートモードにできるセカンドシートは便利で快適といえる。

 さらに驚いたのはラゲッジ左側のリングを1回引くだけでサードシートを床下に格納でき、簡単
に広い荷物スペースに変更できる点。簡単に言えば、ワンタッチサードシート床下格納機構である。

 ラゲッジスペースも荷物の積み降ろしが楽にできる。それはクラス最高水準の荷室開口幅と低い
荷室地上高によるメリットが好影響を与えている。

 細かい点では、バックドアのガラスハッチが単独で開閉できる点も積載や積み荷の時には魅力的。
 このガラスハッチを開けたままの状態でバックドアを閉めることもできるというから便利である。

 上記2車は優劣付け難い魅力を持ち順列を決めかねる。ただシートアレンジの操作が若干簡単で
力が不要という点ではプレサージュが優位にあるといえるだろう。

 一方、グランディスの優位点は左右分割床下収納機構にある。積載する荷物量に適応したサード
シートのアレンジは魅力的だ。どちらを重視するかはユーザーの判断に任せるが、一律に優劣を決
めることはできない。

 さて、対抗馬として前述したオデッセイとイプサムはラゲッジスペースという点では負けてはい
ない。特にサードシートを折り畳んだ状態での荷物スペースの長さはイプサムが最も長い。ただし
フロアが完全にフラットにはならないため軽い荷物では積載は可能でも運搬時に荷物が安定しない
可能性が高い。スワリが悪い状態になるということだ。速度によっては緩いコーナリングでも荷物
が転がることも予想される。


 その点はオデッセイはグランディス同様サードシートを折り畳んだ状態でもフロアがフラットに
なっていて積載した荷物は安定するだろう。つまり、荷物スペースがたとえ長くて広くても実際に
フロアがフラットにならないのであれば、積載した荷物はすわりが悪く走行中に揺れ動きやすく、
品物によっては傷付けてしまうことも考えられる。安心して荷物を積載できるラゲッジに仕上がっ
ているかを判断するのは実際に各車を借りて比較試乗するしか手はないだろう。 ラゲッジスペー
スがただ広くてフラットならそれでいいというならカタログ数値とメジャーによる測定値で単純比
較は可能だが、実際に荷物を積載してみてどうなのかを判断、評価するにはもう少し詳しい取材と
調査が必要になるだろう。


 とはいえ、購入ガイドという観点を加味するならグランディスとプレサージュは03年5月以降に
新登場したばかりで、デサイン的な新鮮味もある。一方、オデッセイは02年10月にマイナーチェ
ンジを受けてい入るが、03年の10月にはフルモデルチェンジが予定されている。イプサムも今年
6月にマイナーチェンジを受けたばかり。つまり2年後にはフルチェンジされる可能性が高いのだ。

 ということは、基本設計が新しいグランディスかプレサージュが最も新鮮味があるという点では
お薦めモデルといえる。

 この他にも03年6月にマイナーチェンジを受けたばかりホンダのステップワゴンや5月にマイナ
ーチェンジされたエスティマもライバル車として候補には上がったが、積載と収納という点では前
述した4車に絞られただけで決して性能や機能面で見劣りする車種ではない。

 次にエンジン.排気量が2000cc以内のミドルクラスのミニバンから積載と収納に優れた魅力
的な車種を調べると、トヨタ対ホンダという対決図式が見えてくる。

 具体的には今年1月に新発売されたトヨタのウィッシュ対ホンダのストリーム。デザイン的な新
鮮味は薄れたが総合的な実用性で安定した人気のノア&ボクシィの連合軍も見逃せない。

 外観デザインから見てもウィッシュとストリームは見事に対抗意識剥き出しの姿形である。後発
となったウイッシュはストリームの弱点を改善して設計、開発しているだけに販売台数は凄い勢い
である。月平均で1万3300台以上を記録しているという。


 ではどこが魅力的なのか。ストリームと比較して明確なのはサードシートの居住性とスペースの
広さ。さらに2750mmというクラス最長のロングホイールベースも注目に値する。居住スペー
スの広さはラゲッジスペースの広さに直結するからだ。参考までに室内長は2670mm、室内幅
は1460mm、室内高は1310mmである。全長が4550mmという寸法を考えれば十分長
い室内長といえる。シートの機能面では、まずセカンドシートが6対4の分割可倒式を採用し、ダ
ブルフォールディング、リクライニング機構を装備する。さらに、195mmの前後スライド機構
も備えている。

 サードシートでは、ワンタッチでチルトダウン格納機構と簡単に引き起こせる5対5の分割可倒
式を採用。もちろんリクライニグ機構も装備する。

 一方、ストリームの機能はどうか。サードシートは後方へスライドさせてクッションと背もたれ
を反転させるだけで簡単に収納できるリバーシブル機構が最大の特徴だ。予想以上に広々としたラ
ゲッジフロアが確保できるという点では注目に値する。

 セカンドシートは分割可倒式を採用し、大型センターアームレストを倒せばスノーボードなど長
尺物も積み込める。片方を倒せば乗車人数は3名となるが、荷物の積み込み量はぐっと拡大する。

 とにかく、サードシートもセカンドシートのフロアもフラットな状態で荷物を積載できるという
点は使い勝手に優れていると思う。荷物の積載量と乗車人数に応じたシートアレンジが自由に展開
できるのは両車ほぼ互角といえる。

 ただホイールベースの長さが30mmウイッシュよりも短いストリームはその分のマイナス面を
抱えているはず。大差はないがラゲッジスペースのわずかな余裕に差が出てくる。

 もしもう1台このクラスで比較検討の引き合いに引っ張り出すとすれば、ノア&ボクシィがある。
 発売時期が2001年11月だからデザイン的な新鮮味はないが、使い勝手の良さや実用性の高
さから幅広いファミリー層に支持されているという。

 月平均の販売台数は約8600台。安定した人気を確保している。開発するに当たってステップ
ワゴンとセレナを研究したという。

 最大の特徴はリアの両側スライドドアという点。それでいて車体の重量増加を極力抑えているの
は高く評価できる。また、乗車定員は全車8人乗りだから上記2車の7人乗りに対して若干優位に
ある。

 シートの機能面では、セカンドシートのワンタッチタンブルシート機構が標準装備される点がウ
リ。マルチ回転シートは全車オプション設定となっている。フロアは低くてフラットだから室内に
座っても頭上空間に余裕があり、長距離でも疲れない。

 もちろん、積載の分量は乗車人数によってシートをアレンジすれば自由に決められるから不便は
感じない。要するに欠点が見当たらない優等生ミニバン
といったクルマである。

 ただ現行モデルが登場したのが02年11月のマイナーチェンジ後。次のマイナーチェンジは03年
の冬頃だと噂されている。つまり、そろそろ新鮮味が薄れてきたということだ。

 積載&収納には関係ない要素ではあるが、購入を考えているユーザーにはフルモデルチェンジ時期
ぐらいの情報はチェックしておいたほうが良いだろう。


 買ってから数カ月で新型車が登場したのではあまり気分の良いものではないからだ。
 結論として、積載と収納に重点をおけばグランディスとプレサージュが両者互角でトップ。5ナン
バーサイズの2リッターエンジンクラスではトヨタのウイッシュが頭一つストリームを抜いている。
 


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