またまた来ました、MAMIYA09

 今度のMAMIYA09は、西麻布の巨匠の品です。タイトル写真だと、別に問題は無いように見えますけどね。

 じつは、シリンダーが抜けるんです。MAMIYAエンジンって、09も29も、始めのモデルはシリンダー部とクランクケース部を、鋼の「円盤」を用いてスポット溶接しているのでした。左写真の排気口部分のすぐ下にある円形部分が、実は穴が開いているのです。そこに入れた同寸法の鋼円盤と、内部のシリンダースカートとをスポット溶接(電気抵抗溶接)で固定しています。爆発圧力の大きな29クラスは、後に破壊(単に外れるだけでしょうけど、やっぱり怖いかなあ)事故が起きたために、最終的にビス留めに改良されたそうですが、09はそのままみたい。

 アルミ鋳物のクランクケースと鋼のシリンダーの固定は物理的に困難なので、こういう手法をとったのでしょう。ビス留めの方が確実でしょうけどね。

 他の部分は生きていても、こうなってはどうしようもないので私の所に入院となりました。現代なら高性能な接着剤がありますから、それでも平気な様な気がしますけど、どうかなあ。

 こちらは破損したMAMIYA09。鋳鉄で製造されたピストンは、1mmもない厚みのピストントップを簡単に破るみたい。ここが破壊するって言うことは、シリンダーのスポット溶接は平気でした。

 でも、シリンダーが抜けないってことは、ピストンを作っても入れられないってことなんです。ぎりぎりの寸法で上から入れるって考えもあるでしょうが、ならしていないピストンは、すぐにスカスカになってしまうでしょうね。MAMIYA09のシリンダーって、ほとんどテーパーがついていませんから。

 それだけではありません。2台目の「ピストントップ・バキ!」エンジンは、その影響かクランクケース下部も破壊しておりました。ですから、こっちのエンジンはパーツ取り用です。

 この他何点かのパーツを受け取りましたが、どれをどう活かせば良いのか。ちょっと思案です。

(2009年3月8日)

 結局つぎはぎ!

 よく調べると、抜けたピストンの方のジャンクMAMIYAのほうが、シリンダーがきれいでして。内径もやや小さかったので、こちらを再利用すべくクランクケースから外しました。しかし、こういうときの分解って、なかなかできないみたい。結局クランクケースのスポット溶接部をグラインダーで削り落とし、とどめとしてケースにノコをいれてやりました。写真の○印がスポット溶接のなごりです。

 このシリンダーをもう片方についていたピストンと組み合わせれば、結構な圧縮が稼げるはずですね。他の組み合わせでは、どいつもこいつもスカでしたし。で、さらにこういう場合は問題が発するもんです。実は、こちらのシリンダーは後期型らしく、もう片方のそれよりも外径が0.3mm太いんです。仕方ないので旋盤で切削しておきましたけどね。

 このくらいのことは旧型エンジンのレストアで「日常(にちじょう)茶飯(ちゃめし)事(ごと)」ですので、別に驚きません。UEDAエンジンでも慣れたことだし。

 このあと、ピストンと寸法を合わせるために、ラッピングを2時間・・・・・自作した方が・・・・・考えるの、よそうーっと。

 こちらのクランクシャフトは、やはり製造年が異なるらしく、左が外径φ6.0mm、右側はφ6.5mmです。おまけにプロップスクリューまでM4とM4.5です。つまり、ドライブワッシャともども互換性の効くパーツはあまりありませんなあ。

 今回は西麻布の巨匠から、特に「直せ」とも「あげる」とも言われていないのですが、もらうにしても互換性の効かないパーツだしなあ。ちなみに私の保有しているMAMIYA09は、後期型みたいです。太い方ね。

 写真を見ていて気付いたのですが、左写真はクランクピンを下にして置いた画像なのですが、ちょっとおかしくありませんか?この角度でクランクシャフトを置くと、通常は吸気の穴がはっきりと見えるはずなんです。吸気タイミング、結構遅いぞ!

 外径は同じものの、なぜか長さの異なるクランクピン。ひとつひとつのパーツは良くできているのですが、マイナーチェンジかなあ。

 そう言えば、フロントハウジングも「MAMIYA」のロゴが入っていない物があったしな。

 フロントハウジングにクランクシャフトの前面が当たると、とーってもパワーを損いたします。そこでクランクシャフトの肝心な場所に段差をつけたりボールベアリングをいれたりするのですが、このエンジンってば真鍮の薄いリングをかませてます。

 この角度で裏側から見ると、フロントハウジングって重そうですね。でも、このフロントハウジング、前方からは結構な肉取りをしてあって、結構軽いです。前後割型だから可能なんですね。

 当初スポット溶接してあった箇所は、きれいに外れていました。今回はとりあえず、ハンダ付けでテストランです。シリンダー側にハンダメッキをしたあと、ガスケットをかませたシリンダー部をケースに入れ、バイスで軽く挟み込んだ後、60Wの半田コテではんだを盛ります。

 先にハンダメッキしてあるし、ヤスリで隙間も設けてあります。うまく流れ込み、シリンダーには溶着すれば、運転中も平気でしょう。でも、ハンダって冷めると体積、減るよなあ。

 そうそう、エンジンは取り付けラグの穴まで、寸法が異なりました。エンジン載せ換えできないじゃん。

(2009年3月31日)

で、回るには回ったのですが、なぜか連続運転いたしません。結構なオーバープライミング状態でないと始動しないし、そうなると始動してもすぐに停止するし。

 で、「プライミング分だけ回っておしまい」という同じ状況が延々1時間。McCOY09Dの時みたいな「全く回らない」っていう雰囲気では無いのですが、どうもおかしい。そのうちにシリンダーが0.5mmほど持ち上がってきました。

 様々な状況を考えて、シリンダーヘッドガスケットは4枚作っておきました。ヘッドも接触面の精度を向上させ、加工に問題はないと思います。と、言うことは根本的な問題かな。新旧両タイプのハイブリッドエンジンですから、なにか肝心なところの見落としかも知れません。どのみちシリンダーの固定をやり直さなければいけませんから、またバラしてみますね。PCの「あたり」は良好みたいって言うのが、せめてもの救いでしょうか

去る4月11日に開催された「ディーゼルエンジンのつどい」で、西麻布の巨匠にエンジンを返しました。私が他に気を取られている隙に、無事回ったそうです。改良点は、シリンダー部とクランクケースを接着剤で接着したことです。弾性エポキシを使用したので、衝撃にも耐えたのでしょう。

(2009年4月14日)