ソ○ックスポーツ物語
 オー○ムスポーツが発売されて以来、EXやアクロなどの後継機が発表された。どれも明確な目的をもった良い機体で、価格の点を除けばお客様の受けも非常に良かった。一通り販売したので、次は廉価版に戻ろうかというところだが、同じ製品になってはいけないということで、設計者は、彼なりの工夫をしてきた。設計者とは、言わずと知れた元世界チャンピオンのGN氏だ。予定する購買層は、中級者:つまりJRAのスポーツマンクラスである。
 通常製品は、一度購入されれば廃棄されない限り同等製品を「買い足す」お客様は少ない。したがって、新製品には何かしらの特徴を持たせることが必要になるわけである。これによって新製品には「手軽さ」をアピールさせることとなる。
 既存製品は結構マニアックな面があり、たとえば引き込み脚付スタント機であったり、スパッツ付アクロバット機であったりした。今回の「手軽さ」は、価格と外観から検討することになったので、下手をすると安っぽいだけに終わりかねない。
 困ったもんだ。図面から製作された試作機はなんと、ピアノ線脚に加え、後部胴体は「三面カット」だ。まるで木村模型のUコン機「メッサーシュミット」みたい。主翼も前縁のみプランクされており、たしかに軽量で安価になるが、相当に安っぽい。私なら多少高価でも、既存製品を購入したいと思った。
 設計者は「既存機との明確な区別化」といっていたが、困ったもんだ。しかし、考え方を変えれば、たしかに大幅な価格の低下が可能だし、カラーリングもぜんぜん違うので、「お遊び用のお手軽飛行機」でいけそうだ。
 既存の製品は、それぞれ小型機としては贅沢なつくりで、カウルやスパッツは当然グラス製。主翼は全面バルサプランクなので高級感抜群である。しかし価格もそれなりなので、全機種購入してくれるお客様なんて、一体何人いるかしらん。しかしそこに新型機である。価格は既存機より約1万円も安い。さらに若干軽量になり、結構元気にも飛ばせられる。そして中級者にも充分にコントロールできる安定性能も備えている。設計はさすがだな。
 工場に問い合わせて見た。脚をピアノ線からジュラルミンに、後部胴体を三面カットから曲面プランクにそれぞれ変更した場合の工賃の変化をだ。結論はお笑いの「変化なし」であった。わはははは。
 しかし設計者は「元世界チャンピオン」というより、頑固な千葉のおじさんである。勝手なことをすると、あとで怒られるだろうな。と、言うわけで妥協点を探ってみた。久々に私の独断である。
 新製品は「お遊び用のお手軽飛行機」なので、万が一の墜落にも修理で対処できるという安心感も必要だ。つまり、修理しやすそうな形状をとることでそれを満足させるというと、胴体形状は変更できない。荒い着陸をも考慮すると、残念だがスパッツも省略になる。残すは脚のみになってしまったが、これをジュラルミンに変更するだけで結構高級に見えるからたいしたもんだ。
 毎度のことだが、営業サイドは売上を伸ばしたいという一心で、勝手に発売予定日を決定してしまう。建前を言わせれば「予定通りに仕上げるのがプロよ!」だそうだ。
 さらに毎度のことだが機体のセッティングは同時進行として、とっとと取り説の作成に取り掛かることになった。機体の仕様に大きな変更がないことを祈ろう。
 またまた困ったことに、良く考えたら取り説に使える試作機が無い。いや、無いわけではないが、つまり市販バージョンの「KMCoメッサーシュミット」はテストフライトでくみ上げてしまって、のこりはサンプルとして作った「後部胴体曲面:丸胴バージョン」しかないのだ。結局、取り説というのは外観ではなく、組み立て方を解説するものだし、「印刷では良く見えないだろう」ということで丸胴バージョンで作成することになってしまった。
 さすがにシリーズを通して同じリブを使用しているだけあるな、ディメンションも大きな違いが無いのでオー○ムスポーツと同様の飛行をしてくれる。当然変なクセなどないし、変更点なんかあるはずも無い。工場には生産の指示が送られ、予定通りの発売にこぎつけられた。毎回こう言うおいしい機体なら、開発も楽なのにい。でも、それじゃあ開発ではなく、ただ買ってきて売るだけの「商社」だな。
 現在我が家には「丸胴バージョンのソ○ックスポーツ」がある。取り説製作代金を値切られた腹いせにもらってしまった試作機だ。何回か飛行したが周囲のマニアの目は鋭く、「キットとちがうじゃん。」と、すぐにばれてしまった。もう人前で飛ばせないじゃん。






ハイパーゼロ開発記
 開発といえば聞こえは良いですが、とどのつまり、第一回の「RCAW主催:スケールパイロンミーティング」に参加するための機体を選んだにすぎません。他にも機体はありましたが、まず念頭においたのは、「ノーマルではいやだ!」ですね。
 主催者・というか、山崎さんは当初から「雰囲気を楽しみましょう」という様子でしたから、やっぱりなにか変わったというか、目を引く機体が必要です。そこでいろいろと考えてみました。
 エアレースですから、脚は引き込みが必須です。さらにエアレースですから、実機のレースに参加している機体はたくさん出てくるでしょう。そしてエアレースですから、空気抵抗の少ない、大馬力エンジンの…と、考えていた時にふと思いました。「いかん。みんなと同じじゃあないか」

 学校じゃああるまいし、「みんな仲良く横並び」なんて私には絶えられません。所有している機体の中で、レースに使用されたことの無い機体をピックアップすることにしたのは、当然の成り行きでした。
 「レースに使用されたことの無い機体」とはいっても、あまりレースとかけ離れた機体では、場合によってはひんしゅくを買うこともありますね。たとえば、セスナ188:アグワゴンなんかがそうです。外観はユーモラスで、さもレースなどとは縁遠い雰囲気ですが、「こんなのがパイロンを回っていたら、気持ち悪いだろうなあ」ということで、実は候補の1機だったのです。こわいこわい。
 しかししばらくして正気にもどり、現実を考えて機種を絞ることにしました。機種選定の基準はこうです。「過去にエアレースに参加しておらず、しかしレースに参加していたら面白いだろうと推測される機体」です。
 結局ピックアップされた機体は、メッサーシュミットとゼロ戦でした。第二次大戦における敗戦国の機体で、しかも名声を馳せた機体ですが、悲しいかな現存機は少なく、ましてやレース仕様機なんて夢のまた夢ですね。しかし、その夢は模型飛行機で現実となります。

 私が所有しているキットは、京商のSQSです。そしてテスト飛行の結果、メッサーシュミットは急旋回時に尾翼まわりが失速しやすいことが判明し、残ったゼロ戦が採用となりました。
 機種が決定したのは良いのですが、問題はカラーリングでして、なにせ今までレースに出ていない機体ですから、どんな配色にしようかとか、スポンサーはどうしようというところで気がつくともう12月!あまりにも早くにレース開催を知ったからでしょうか、結構のんびりと構え過ぎましたね。いくら京商のSQSでも、あと半月で完成させ、テスト飛行までなんて、ちょっと無理かな。なにせフィルムを剥がし、カラーリングの変更がありますから。
 しかし、ここからが早かった。「早かった」というよりは「早くした」という表現が正しい気がしますが、この際どちらでも構いませんね。つまり、機体は真っ白に決定です。
 さまざまな配色によって派手になるのは結構ですが、下手をすると元の機種がわからなくなることがありますし、なんたって、手間が省けますものね。
 もともとレース機には単色の機体が多く、あっさりと入ったレースナンバーが印象的だった記憶があります。今回は諸事情により(手抜きと表現しないところがいいですね)同様の手法をとることにします。
 基本色は白に決定です。飛行中の視認性はもちろん、ゼロ戦にはありえない色ですから。もっとも、キットの緑色の上に載せるには、結構苦労しそうですが、こちらは高級ウレタン(普通の東邦ウレタンですけどね)で解決です。主翼と尾翼はというと、もう仕方なしにフィルムで勘弁です。
 もともと京商のSQSゼロって、浮いてしまえばトレーナーみたいに安定してますから、逆から見ればパイロン機としてはおとなし過ぎます。したがって、動翼の面積を大きくし、主翼上半角をやや減らす事にします。結果としてターンは元気良くなりました。
 キットそのままではつまらないので、キャノピー内には友人からもらったパイロット人形をのせ、さらに操縦したらお腹もすくだろうと考えて、ミニチュアの「天丼」も載せました。さらにとどめとして、RCAW誌を縮小スキャニングののち、製本して無造作に放り投げておきました。こちらは結構受けましたね。あとはコンピュータのおかげでレースナンバーや様々なデカールを作ることができました。ぺたぺたと貼ると、結構格好が良く見えます、しめしめ。これなら「手抜き」と、ばれないだろう。でも、手抜きって言ったって、ここまでやったらARFの利点なんてないですね。

 完成重量はキット指定のなかでも軽量な2500g!ところが機体が軽くても機首の短いゼロでは重心位置は後方になります。しかも完成したのが出発の数時間前だったので、「もう、いいや」です。
 結局第一回のミーティングでは飛行することはありませんでした。飛行しなくても他機のフライトで充分見応えがありましたからね。やっぱり格好いいですよ、スケールパイロンって。
 初飛行はというと、年も明けた1月下旬。近所の河川敷でおこないました。結構風も吹きはじめましたがとにかく飛ばしてみます。結果はまあまあ。重心位置はやはりもっと前方でなければいけないようで、僅かな舵でも機体はピッチ方向に暴れます。しかし着陸は結構安定していましたが、停止寸前で前転してしまい、キャノピーを割ってしまいました。帰宅後、早速120gのおもりをカウリング内に固定することにします。
 セカンドフライトは、あろうことか第2回スケールパイロンミーティングの当日です。つまり、半年もフライトしなかったんですね。しかし今度は非常に安定した舵の効きをしています。飛行中に送信機側で若干のセットをした以外、そのあとはもう元気なパイロントレーナーです。

 私のパイロンレース歴は、10年ほど前に10ジュニアクラスをちょっとと、数年前に京商T33のイージーパイロンレースに参加したくらいです。つまり、もう初めてのマニアよりは「まし」程度でしたが、やっぱりパイロンを見るとどんどん高度が下がってきます。しかし、ゼロは巻き込んだり失速したりなど、危険な癖はなく、安心して飛行することができました。さすが、京商のキットは基本設計がしっかりとしています。
 トップスピードはさておき、ターン時や離着陸時の安定性能は抜群で、これならスポーツ機としても遊べそう。12月のレースでは、ちょっと攻めてみようかな。(結果的に、優勝!でしたね。)

 「スケールパイロンミーティング」は、都合2回開催され、3回目以降は「スケールパイロンレース」となりました。これは参加者の練習・慣熟飛行とともに、主催者側の状況把握のためだそうです。実機のレースの雰囲気を楽しむのが本来の目的ですから、JMPRAの規定は合致しません。レースのスタートや着陸など、方法を含めて楽しむための慣熟飛行でした。
 さらに、参加できる機体の種類やエンジンなどは、細かく規定されているのですが、単なる「性能重視」でなければその参加は大目に見ていただけています。なんたって、2回目の特別賞って、自作機ですよう。これはもう完全な「違反機」なんですが、不覚にも私は「やったぜ、粋だねえ」と思ってしまいました。まあ、いいか。

そして、いよいよレースですが、実機のターンって、結構ゆっくりなんですよ。アクセルを絞って、ゆっくりと飛行させなければ実機らしくないんですが、それじゃあRCのレースになりませんよね。どうしよう。
しばらくしてふと思いました。脳裏に焼き付いているスケール機の競り合いが、戦闘シーンになり、「うん、やっぱり次は、CL(Uコン)のスケールコンバットだな。」もう、病気ですね。
 RCならスケールパイロンレース、CL(Uコン)ならコンバット、やめられませんわ。