ステアマンには2種類あります!
 パイパーJ3カブに始まった廉価版完成機もクオリティの問題が解決したために定着し、さらに多くの機種を開発する事になりました。ユーザーが要求し、しかしためらう機種に複葉機があります。主翼は2枚だし各部の取り付け角の設定は難しいしと、ためらう理由は数知れず。
 だからこそSQS複葉完成機となれば、それこそ「飛ぶ様に」売れてがっぽがっぽ儲かる・・・・かどうかは存じませんが、人気機種のアクロバットステアマンの開発とあいなりました。
 正式には「スーパーステアマン」って言うらしいのですが、私はどちらでも構いません。サイズはいつもの50クラスの4ストロークサイクルエンジンを想定します。設計はSさん、複葉機なんか数え切れないほど作っている人だから、設計に間違いはないはずでした。
 主翼はさておき、胴体はストリンガー構造でスケール感を出し、グラス製スパッツまでつけたらもう完璧。文句無しに格好良い試作機ができあがりました。つまり、工場で試作したキット状態のものを、私が仕上げただけなんですが、工場のやつ、何を勘違いしたか肝心な上下翼の支柱と止め金具を作っていません。仕方ないので設計図から取り付け角を算出し、支柱と金具類を作りました。
 で、なんかおかしいと思ったら下翼が+1度に対し、上翼は+2度もあります。「アトラス」のポーカー40や60と同じセットですが、ポーカーは両クラスとも着陸進入時みたいな低速旋回中に、いきなり「ころっ」と失速することがありました。おそらく上翼が下翼よりも先に失速するからでしょう。 その証拠に、上翼の取り付け角を減らしたポーカー40はそういうクセは無くなりましたからね。また、エンジンや水平尾翼の取り付け角のバランスも重要で、アクセルワークによる姿勢の変化にも気を配る必要があります。
 さらに、差動の出ないようにリンケージすると、アクセルサーボが付きません。左中央の写真が、その慌て振りを物語ってます。(サーボマウント、追加してますね。)
 大ベテランで超有名人のSさんの顔を立て、一応設計図通りにセッティングしたわけですが、自分の経験から上翼の取り付け角を減らした方が良いと思ったので、支柱にアジャスト部分を設け、調整出来るようにしておきました。
 そしてテストフライト。案の定機体は、アクセルワークで変な姿勢になります。さらに背面飛行でエレベータートリムが決まらないし、着陸時の不安定さが顕著で、危険な状態になりやすいときたもんだ。
 「では、私のセッティングに換えますね。」と支柱をアジャストし、上翼の取り付け角を0度にして再度フライトです。結果は、どんぴしゃ。へんなクセは一掃されていて、もう快適みたい。でも、一応他のセッティングも試しましたが、結局私のセットに落ち着きました。過去の試行錯誤:失敗が役に立ちましたね。
 キットの箱絵(写真です)は、時間の関係上その試作機が用いられました。従って、乗っている人形は私が塗った他メーカー製ですし、主翼支柱にはアジャスト部がしっかりと写っています。
 余談ですが、機首とカラーリングを換えるだけで、簡単にPT−17のできあがりいー!ずるいな。



複葉機って、難しい!
 私は複葉機の経験が数機しかありません。なのに担当でもないDH−82タイガーモスのフライトテストにおつきあいです。
 この機体の開発までは、結構正確で細かい設計図が必要だったのですが、工場も慣れてきたらしく「アウトラインをくれれば構造は考えるよ」ということみたい。したがって、今回は設計のSさん、その通り概要しか書きませんでした。しばらくして工場から大きな箱がごろごろ送られてきます。もちろんその中の一つがタイガーモスのはずですが、探し当てて箱をあけたら「どっひゃー!」。
 なんと、主翼が発泡スチロールコアに全面バルサプランク!!当然高性能間違いなしの段差なし平滑翼面、スタント機じゃあないんだぞ!40クラスのサイズなので、せいぜい半リブ2枚を1枚に減らすだろうくらいにしか考えていませんでしたが、これではせっかくの複葉スケールがだいなしじゃん。
 普通ならそんな試作機でも組み上げてテストフライトを行うところではありますが、たまたま締め切りにゆとりがあったために、リブ組み翼バージョンが来るまで一休みとなりました。もちろん他機の開発は平行して進んではいますが。
 しばらくして今度は「本物のスケール機」が届きました。主翼はもちろん、胴体の構造もまあまあ、強いて言えば水平尾翼が単板に肉抜きってところが難ですが、まあ、勘弁でしょうね。
主翼上下の支柱や機首のカウリング形状がおかしいので、これらはすぐに改善指示です。あとは飛んでみないとねえ。
 「予期せぬトラブル」のおかげで初フライトは私が一人で行いました。とてもクラブの飛行場では飛ばせませんので、近所の荒川河川敷に行きます。倒立の小型4ストロークサイクルエンジンって、スロットルの調整が難しい時があるのですが、最近は各社解決しているみたい。あまり苦労なく準備が完了し、フライトです。
 予想通りそれっぽくゆっくりと飛行し、舵も穏やか。でも、ラダーを大きく切るとダウン側に大きくとられます。水平尾翼の位置が悪いかもしれません。上下翼の取り付け角は、ステアマンの反省が効いているのか、いじらなくても良いようです。強いて言えばアクセルと機体のピッチがおかしいので、水平尾翼の取り付け角をやや増やすことくらいでしょう。壊すとまずいので、この日は1フライトで撤収です。
 今度はSさんも交えてテストです。Sさんも近所に住んでいるので、飛行は同じ荒川で行いました。会社の開発員を交えた3人で飛ばした結果、私のインプレション通りの共通見解となり、問題は水平尾翼の位置と言うことに落ち着きました。水平尾翼の取り付け角をリセットし、エンジンのダウンスラストも調整したので、エンジンスラストから主翼、尾翼までインシデンスメーターで取り付け角を再計測してテストは終了。そのデータを工場に送り、最重要点とします。
 と、言うわけで、今回は大きな問題がなく、比較的平和なお仕事でした。いや、本来担当ではなかったからただ働きか。悔しいからテストに使った機体をもらっちゃいました。試作だからクセがあるし、フィルムもつやつやのやつですが、愛着がありますね。(05年2月、一部追記)




ゼロ戦は突っ込んだ!
 某K社のSQS(スーパークォリティシリーズ)には廉価版のものと、高級グラス胴体のものとがあります。廉価版の被覆は「例の」印刷済みPVCフィルムが貼られ、「すぐ剥がれるじゃん!」との苦情をいただくタイプで、高級版の方はというと、グラス胴は塗装ですが、主翼と尾翼は同色のフィルムを貼ってあります。
 あるとき、スケール機の定番である「ゼロ戦」を造ることになりました。基本設計はいつもの「近所の」Sさん。私は試作機の製作とテストフライト及び撮影等を担当いたしました。
 そのころゼロ戦の有名色である濃緑色がフィルムになく、どのフィルムを貼るかでけんけんがくがく。そんなこと、機種選定会議にのせる前に解決しておくことだと思いますが、相変わらずいいかげんだな。
 幸い機体は高級版なので、やや高価になっても問題の少ないバージョンで助かりました。つまり、高価ですが色種が豊富なスーパーモノコーテが、もうじき濃緑色を販売すると言うことが情報として入ってきたのです。
 しかしスケジュールの関係上、とにかく機体の撮影をしなければならなくなり、ついでに「飛行テストもやりなさい」ときたもんだ。そして飛行テストが撮影の前になってしまい、つまり、飛行テストでは「壊しちゃあだめよ!」ってことですね。
 今回の工場は、香港のR社から分離?したC社です。FRPの製作に長けていて、カタリナPBYやテキサンAT−6、DF機F86Fセイバーなども製造しています。
 さすがに型抜けや表面処理が良く、Sさんの設計が忠実に具現化されているみたい・・・・って、機首の短いゼロだよなあ。きっと重心合わないぞ!
 さて、天候の問題もあって、会社が借りている飛行場で夕方からテストフライトです。もちろんエンジンのならしなんかやらないです。毎度の事ながら、怖いな。
 スローの調整を行い、やや甘めのニードルでスタートです。やや狭めの滑走路ではありますが、ゼロ戦はすんなりと離陸していきます。メカの搭載に苦労し、重心位置を当初の設計上に定めたためか、飛行も楽みたい。
 しばらく何の問題もなく飛行していましたが、「なーんか拍子抜けー」って思った矢先、いきなりエンジンストール。よりによって飛行場から遠ざかって行く途中です。試作だし失速特性もわからない。パイロット(私ではありません)は、ここは危険を冒すよりそのまま軟着陸と判断したようです。結果は小振りの立木に主翼をぶつけ、小破。当然1日で私が修理:と言うよりも撮影でごまかせる範囲に修復いたしました。このときの試作機の垂直尾翼には私のJPNナンバーが入っています。
 その後、私もこのゼロを飛ばしましたが、本当にスポーツトレーナーですね。どこがスケール?って感じ、おとなしいです。RCAWのスケールパイロンレースに製作したのはこのキットがベースですが、例の「緑フィルム無いよ」事件のため様々な「緑色」で彩色された試作キットがありまして、(黄緑色まであった!)そのうちの「ましな1機」を使用しました。めちゃ遅いですが非常に飛ばしやすいです。
 修正個所は、重心位置対策でメカプレートの位置だけですみました。