新発売!!って、ちょっと古いな。
私は開発者!!
私は縁あって神奈川:厚木の某RCメーカーの開発を手伝ったことがある。僅か6年ほどであるが、様々な意味で良い経験になった。

毎年、CL日本選手権とKMA全国大会は、JRMのホビーショーとバッティングしている。今年も例外ではなかった。つまり、もう何年もホビーショーに行っていない。
 ホビーショーといえば、バイヤーに対する新製品の展示や受注がメインである。客に対してはプレゼンテーションに過ぎないし、なんといっても偏ったマニアはきわどい質問をしてくることが多く、解説にこまるので、一般解放日は逃げることにしている。
 新製品発表のためのホビーショーではあるが、当然既存製品もいくつかは展示するので、つまり、展示見本の製作は、時としてとんでもない数に登ることがある。
 開発担当者の仕事というと、生産の管理や発注数の選定、コスト概算や組み立て説明書の作成準備など、本来の試作やテスト飛行以外にも及ぶことがある。他部署の仕事の範疇でさえ、開発担当が関与しなければ話が進まないことが多い。さらに本来の仕事ではない展示見本の製作などでも、そういえば開発者が製作しているなあ。
 2001年の3月まで私は、厚木の某RCメーカーの開発の仕事をしていた。開発といえば聞こえは良いが、つまり下請け業者なのである。なぜか待遇は平社員なみ以上であるが、仕事のオーダーはきつく、工場と会社との連携をはかり、独自に仕事を進めることもある。
結果を振り返ると、私個人の判断で進めた仕事も多々あり、良く考えると製品の性能や売上に大きくかかわることもあった。これは通常部長判断であろう。われながらすごいことをしてきたもんだ。
 もはやばればれだが、昨今のRC完成機は、ほとんどの場合中国製である。しかし問題はその文化である。几帳面さと鷹揚さが両立する国であるため、量産に関しては結構注意する点が多い。でも、そんなことは社員が中国に出張し、目を光らせればよいことで、私は依頼を受けても中国出張は断ってきた。
 さらに問題は中国の正月である。ご存知のとおり、中国における正月とは、2月である。言うまでも無く日本の正月は1月なので、つまり日本が正月休みであるにもかかわらず、私は中国の工場とやりとりし、開発や取り説の仕事を進めることがあった。もちろん発注先の日本の某RCメーカーはけしからんことに正月休みである。
 独自の判断で仕事を進めなければならない理由はこのような所にもあるので、そこは「私の責任ではない」と思っている。自分で判断しているにも関わらず責任が無いなんて、言葉の意味があっていないなあ。
 某RCメーカーの開発担当者は、皆さん結構模型マニアである。飛行機担当の社員は元CLマニアだったり、F3Bチャンピオンだったりする。開発部長にいたっては、元1/8レーシングカーのチャンピオンである。
 これらの経歴は開発技術の高さを示すことになるはずだが、実は一般のマニア対象の製品を開発するにあたっては、障害となることもある。具体的には「凝りすぎ」ることである。特にスケール機のカラーリングの選定など、かかる時間は半端ではないことが多い。さらに
営業(当時の営業担当者のH.P.にリンクしてます)サイドの意見を聞いていると、話は数日も伸びることもあった。私に言わせれば、「こんな安いキット買う人は、ディティールなんかここまで見てないぞ」であろう。
 特に、RC飛行機の開発には日本国内はもちろん、世界でも活躍している選手を採用することも重要だ。まあ、ネームバリューってやつに頼るといわれればそれまでだが、しかしやはり様々なノウハウを持っていることには変わり無い。
 ある時、RC世界チャンピオンに機体の設計を依頼したことがあった。小型機であるにもかかわらず、性能は非常に良く、飛ばしていて楽しい。しかしチャンピオンの指示は「カウルはグラス成形、スパッツも同じ」である。飛行性能には変わり無いので、通常は安価なプラスチック成形となり、コストダウンのための恰好の要素であるが、指示は逆であった。
 つまり、「カウルやスパッツは消耗品であり、交換パーツで対処する」というのがメーカーの考えであるのに対し、チャンピオンは「劣悪な部品で機体の評価を下げたく無いので、多少価格がつりあがっても、良いパーツで構成したい。」と考えた。結局、会議でチャンピオンの指示を採用することになったが、価格の点で営業から要望が入り、はじめのロットは発売記念価格として安価にすることで対処した。
 この高級カウル、スパッツ事件はマニアの要求に合致したらしく、その後販売される半完成スタント機のスタンダードになった。
この機体は「G−202」です。試作のデカールなので、フォントがちがいますね。調子が良かったのですが、会社にもっていかれてしまいました。
当然チャンピオン設計の機体を担当することもあるわけだが、相手が相手だけに基本設計なぞいじるわけに行かないと考えていた。しかし仕事が進むにつれて、どうしても寸法や取り付け角の変更が必要になってくる。意外にもチャンピオンは「てきとーになおせー」であった。いい加減なのかこちらを信頼しているのか、まあ、どちらでも構わないな。
というわけで、チャンピオンや周辺の方々とおつき合いさせていただく機会にも結構めぐまれ、私も有名人の仲間入りだ。つまり、趣味のRC機として知り合ったわけでは無く、仕事のRC機で知り合ったのであるから、彼等とは仕事仲間で、友人だ!いいのかな?
 通常の私の仕事は、会社で開発決定した機種を販売可能な状態に仕上げることである。つまり、設計者からもらってきた図面で機体を試作し、飛行テストの結果さまざまな改造を施して万人向けの性能にし、工場に指示を出し、撮影し、取り説をつくることである。あらためて思い出すと、たくさんあったな。
 この他にも海外等からプレゼンテーションされた製品のテストやRCイベントにおける説明やデモ飛行、さらにそのアナウンスや広告にまで担ぎ出されたことも有ったが、つまり、便利に使われただけということかもしれない。
 一度だけであるが、自分の機体を売り込みにいったことがある。当初社員のだれもが「こんな小さな機体、飛ぶわけない」と思ったそうだ。私は機体やバッテリー一式を置いて、会社を後にした。4日ほどして、電話が鳴った、係長からだ。「あの小さい機体、売りましょうよ。」 
 当時としてはかなり小型ではあったが、小型モーターと小型バッテリーを使用し、結構軽快に飛行する機体だった。モーターはギヤによって減速され、大径プロップを回すことによって、相当な推力を得ることができる。
 ギヤユニットやモーター、バッテリーなど、新規に製造するものが多いため、工場に対する指示は多く、墓穴を掘ったような状況に陥ったが、なんとか発売にこぎつけ、各地でデモ飛行を行った。
 海外の展示会では、やはり「こんな小さな機体、飛ぶわけない」と思われたそうだ。しかし当時の社長が社員に命じ、その場で製作した機体をバイヤーの目前で飛行させると、飛行後にかなりのバックオーダーが入ったそうだ。私の自慢の作品である。しかし、設計者である私の名前は公になることはない。
 某RCメーカーのおかげで、コンピュータの扱いかたがわかるようになり、スケール機のカラーリングの仕事も増えてきた。あらかじめ印刷したフィルムを機体にはり、スケール感を高めると同時に価格を押さえようという魂胆である。
 他のメーカー製の同様タイプ機は、お世辞にも格好が良いとは言えないものがほとんどで、つまり、「安ければこんなもん」の代名詞みたいな製品ばかりであった。
 某RCメーカーのオーダーは「可能な限りのスケール感」であった。機体の基本設計は近所のSさん。スケールマニアであり、当然のように機体のアウトラインは完璧に仕上げてくれる。
 しかし、問題はSさんの設計であった。スケールマニアが設計すると、当然スケール感の非常に高い機体になる。しかしそのときの私の仕事は、コンピュータで2次元平面のフィルムに、機体のディティールを書き込むことだったのである。
スケール機の表面は、特に胴体などはとんでもない3次元曲面なので、それに張るフィルムの伸び、縮み、ゆがみを想定する必要がある。つまり、何回かの試行錯誤が必要なのだが、しかし印刷用の版下製作にかけられる予算は1回分のみ。「ためし印刷はだめ」ってことである。
だいたい、ディティールっていったってカラーリングだけでなく、燃料タンクのハッチや注意書き、リベットラインまでさまざまである。胴体の左右や主翼の上下など、フィルムの合わせ目などどうしても矛盾が生じることがある。ましてや、スケール感が高いとはいえ、飛行しやすいように若干のデフォルメをしているので、ディティールまで正確に縮尺できない。
 と、言うわけで私が入手できる様々なフィルムに印刷し、いろいろ試してみたが、この印刷に関しては現在まで有効な試作方法はなく、しかし私の経験とカンで現在までトラブルは皆無だ。もちろん次回はわからないが。
 この他にもフィルム張り完成機に使用する「デカール」の作成も重要な仕事のひとつだ。デカールとは、機体の名前やメーカーロゴなどが入っている透明フィルムであり、特に某RCメーカーの場合は、機体のカラーリングの一部および全部をカバーすることもある。時として非常に良く伸びるデカールを使用し、胴体の曲面のカラーリングに使用することもあった。いずれも結構な経験とカンが必要で、あっさりと納品しているように見えるだろうが、実は私は影でとんでもない数の失敗をしている。もちろんこれは内緒だ。
 上の写真は、電動ダクトファン機のF−16の機首のアップです。おちゃめでこのデカールの中に、私のJPNナンバーをいれてあります。




苦労しても設計者の名前も開発者の名前も公にならないのが定めではあるが、2001年のようにいつ仕事がなくなるかわからないのがこの業界。3年間は企業秘密でしたが、もう関係無いな。以下に「担当者の証」がありますので、お暇でしたらご確認いただきたい。もちろん購入してくれなんて考えていません。
全てメーカーは京商です。
1、 SQSメッサーシュメット40の垂直尾翼の下側に私のJPNナンバーが書いてある。
2、 SQSムスタング40の胴体後部右側に、私のJPNナンバーが書いてある。さらに、「3A−SIG」(サンエーホビーのSIG)とも書いてある。これは友人SIGとの約束でしたあ。
3、 SQSカーチスP40-40の胴体に、私の氏名が書いてある。
4、 EP-DF F-16の胴体デカールに、私のJPNナンバーが書いてある。
5、 EP-DF F-16サンダーバーズの胴体デカールに、東京都のイチョウマークが書いてある。
6、 フロート40の取り説に書いてある機体に、私のJPNナンバーが書いてある。
7、 ソニックスポーツ1300の取り説に入っている胴体の写真は、上部は丸い試作機のそれだ。
8、 RCAWのRCスケールフェスティバルのビデオで、京商の製品紹介をしているのは、私だ。
9、 Gトリック90の取り説のベリーパンは市販と型がちがう。私の機体だ。
10、私のCAP232-60の裏に張っている黄色フィルムは、市販タイプより薄い色だ。
11、他にもなにかあったような気がするが、忘れた。

 2001年4月を境に、某RCメーカーからの仕事はさっぱり。スケール機担当の近所のSさんも同様。2人で、「なにか、まずい仕事しちまったかなあ」と反省しつつ、それとなく会社に聞いてみると、「いえ、2人にはまったく問題はなかったんですが、社長が飛行機の開発数を大幅に減らしまして、それで社内で充分まかなえてしまうんですよ。」とのこと。「反省」が「逆上」に変化した瞬間だった。はやく言わんかい。
 それでもイベントではデモ飛行や展示の手伝いなど、仕事をもらうための「営業活動」は欠かさない。でも、多分仕事はこないだろう。某RCメーカーって、いままでもこういうことを結構やってきたからな。したがって、以前開発用にメカやエンジンやコンピュータ関連製品を多数在庫しておいたが、赤字にならない範囲で留めておいたから、助かったな。銀行預金は無いが、ノートブックコンピュータと、その周辺機器等や、飛行機用品が財産として残ったから、まあ、良しとしよう。

 ちなみに、近所のSさんはというと、以前から小さい仕事をもらっていた
某U社の仕事を細々と続けながら、生活している。年寄りだから年金でももらっているのだろう。インターネットオークションでも骨董エンジンを出展し、わずかながら糧を得ている。
 そんな中でかなりガタガタになった自家用車を、Sさんは新調した。安価なシビックである。車両は130万円くらいで、賢明な選定だと思った。しかし、Sさんは何を思ったかエアロパーツを中心に70万円近いオプションをつけてしまい、さらに「あほ」なのは「うん、エアロパーツつけたらね、車高低くなってさ、で、飛行場に入れないんだ。どうしよう。」俺に聞くなよ、じいさん。
 ちなみにSさんとは、RCに留まらない模型業界の重鎮である。超有名人である。しかし私から見れば、ただのワイン好きのおじいさんである。失礼かな?まあ、いいか。

 その後、「あの」ムゲンのエアロ付FITは14000キロ走行で下取りに出し、こんどは純正エアロつきの1500Sになったそうです。(セミオートの7速つき)
 現在、まだ走行距離は400キロですが、こんどは飛行場に行けるそうです。(05年1月、本人から確認)

オーラムスポーツです。

 わかりにくいでしょうが、エルロンを始めとして動翼の面積は増やされ、脚は主翼の下まで後退し、主翼面積も若干増えています。
 つまり、「オーラムアクロ」に近い「オーラムスポーツ」というわけです。
 「アクロ」が開発中の時も、例に漏れず過密スケジュールだったので、中国の工場でフィルムを貼っている時間が無く、仕方無しに私が製作したのですが、開発費が制限されていたのでこの機体の製作費はもらえませんでした。
 設計者のところにしばらく行ってましたが、「必ず返してくださいよ!」と優しくお願いしましたら、1週間くらいで戻ってきました。めでたしめでたし。