いいですよ、この飛行機!!
様々なメーカーからRCトレーナーが販売されていますが、それらはそれなりに個性を持った良い機体と言えます。後発機である「スカイメイト」はさらに何がしかの特徴を持たせる必要がありました。後に述べる「汎用性」が、それにあたります。
トレーナーの基本要素として、「飛ばし易さ」があります。この飛ばし易さとは「おとなしい舵の利き」であり、いざと言う時の「運動性」であり、低速飛行時の「空気への張り付き」でしょう。
機体が必要以上に姿勢を崩すことなく、しかし緊急時には充分舵が利き、危険を回避できること、つまり「舵のエクスポネンシャル効果」を有している必要があります。
さらにエンジンパワーが小さく、本来機体が不安定になっているはずの着陸進入時に、機体が落ち着いていることも重要です。
しかし、これらは空力的に見るとかなり解決が困難な事柄で、実機のデザイナーも苦労している点のようです。
高価なコンピュータ付きRC装置やジャイロ装置を用いれば、その機能でたやすく行えることも、安価が基本のトレーナーにはあてはまりません。
結果的に、スカイメイトでは後上部の曲率がやや小さく、前縁部半径が大きめの翼型を採用し、やや小さめのエルロンとのコンビネーションにより、ロール方向のエクスポネンシャル効果を引き出しています。
ピッチ方向では、水平尾翼容積を考慮したテールモーメントを設定しましたが、着陸時のヘッドアップが充分可能な長さに修正してあります。
高翼機の欠点として「アドバース・ヨー」がでやすいことが挙げられます。これは例えば、機体をエルロンで左に傾けると、機首は右を向こうとする現象です。非常に見苦しい飛行になるこの現象は、スカイメイトでは機首側面積の減少と垂直尾翼容積のバランスで解決しています。
そして一見小さく見える垂直尾翼ですが、じつは横風でも風見になりにくく、かつラダーのみによる旋回も可能な性能を持たせるべく、垂直尾翼面積が決定されました。
機体の基本性能は、その設計でクリヤできるはずでしたが、実際このクラスのサイズでは、やはり「ちょこまか」と飛行することが多く、対策として大型機にすることが有効ですが、エンジンのサイズが決まっている以上、そうもいかず、アスペクト比と翼厚を増して対処したところ、結構空気に張り付くように飛行してくれました。
トレーナー機として避けられないのが「墜落」です。胴体や主翼が2つに折れるような破損では、もはや全損ですので修理は考えないとし、しかし全損になる墜落を中破にとどめるような構造はないものかと模索した結果が、スカイメイトのウイングボルトマウントです。
一見弱そうに見えるというご指摘もありますが、接着面積を考慮した結果の構造です。主翼のゴム止め方式も候補にあがりましたが、スマートさに欠け、なにより毎回トリムが変わる可能性は否めません。しかし結果的には大成功で、何回かの墜落でもほとんどの場合この部分が「はがれ」、修理は1時間以内で終わりました。
ウイングボルトによる主翼の固定に加え、スカイメイトではエルロンを主翼中央まで伸ばし、トルクロッドを用いない操舵方式をとっています。F3A機の形式をトレーナー用に変形しただけですので、どうということの
ないアイデアですが、シングルサーボでありながらツインサーボと同じダイレクト感があり、結果的にスカイメイトの良好な操縦性能はここから生まれています。
さて、この程度では「ちょっとちがうトレーナー」で終わってしまいますが、実はスカイメイトにはいくつかの裏技がありまして、たとえば京商の25フロートが高さの調整無しでベストマッチです。
さらに4サイクルエンジンを搭載する場合、胴体メカエリアの後ろにあるスペースに受信機用バッテリーを載せると、重心位置が合うようになっています。エンジンの寸法に対応するための可変式エンジンマウントが標準装備なのは、この為でもあります。
そして主翼の上半角を少なめに設定することによって、スポーツマンクラスまでのスタント練習にも使えます。
この他にも後退角の強い水平尾翼の前縁や、垂直尾翼のヒンジライン、主翼の取り付け角など、それぞれ意味を持っているわけですが、話が長くなりますので、このへんにしておきます。
余談ですが、ある日私が別の機体をテストしていたとき、スカイメイトを持ってきていたマニアの方が「いいですよ、この機体。何機もトレーナーを作りましたが、こんなに性能の良い機体は初めてです。あなたもどうですか!」と、薦めてくれました。ありがとうございます。でも私、設計者なもんで…。(実話です。)
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