最近値が上がってきてしまいました、ENYA15Dです。

 私が模型飛行機を始めた頃には姿を見ることがほとんどなかったエンジンです。ディーゼルエンジンと言えば師匠の荒木浩さんがENYA06で小型スタントをやっていたくらいでしょうか。

 その後ラットレースが盛んになり、一部のマニアがディーゼルエンジンを使用しだしました。海外のエンジンが多かったはずですが、そのうち何台かはこのエンジンでした。私も欲しかったのですが、そんな絶版エンジン、簡単に入手できるはずも無く。

 時は経て21世紀。「ディーゼルエンジンのつどい」に参加するようになり、それらしいエンジンも必要になりましてまたまた偶然100円で入手したのが15Dの1型。こちらはクランクシャフトが細くて、ヨーロッパでは良く折れるって不評だったそうな。Dの総帥いわく「圧縮あげすぎだに!」純粋長野弁でしょうか、かろうじて私にも理解できます。

 幸運にも2型まで入手することができ、いくつかのスペアパーツも保有できましたので、何回か飛行を楽しみました。

 パワーは無いし調整は難しい。暖機運転やらないとニードルが変わるしアクセルはもたつきます。とどめは「異臭」に近い燃料の臭い。わざわざ使用する必要のないエンジンであることは言うまでもありません。でも、面白いんです。使用する技術の差がはっきりと出ますしね。

 始動するだけで手こずることしばしば。しかし慣れてしまうとグローエンジンと同じ雰囲気で使用できます。特に最近のENYA−SS15Dクラスは簡単すぎって感じです・・・贅沢になりましたね。

 いずれにしても、私にとってタイムラグのある思い入れでして、友人達の15Dを含めると10台ちかく(もっとかな)オーバーホールやパーツの製作をしていますね。結構な縁になりました。

 写真は「ドローン’ズ」のTS総統閣下(McCOYクラブでもありましたね)からの依頼品です。代金として千疋屋のメロンをたかったら、本当に送ってくれました。今時奇特なお方です。

 15Dはよろしいのですが、オールドエンジンの分解では様々注意する点があります。簡単なこととおもわずに、「エンジンの構造をあらためて良く見る」ってことなのですが、これによって油分で固着していると勘違いして、「腕ずくで分解し、破損」って悲劇が防げますから。

 分解の順序も良く考えないと悲惨な結果となり得ますね。ベテランほど注意することが必要ではないでしょうか。お、我ながら謙虚だな。

 1型よりも一回り大きなヘッドは、シリンダー回りと一体です。中にシリンダーが入っているのですが、冷却フィン部とのクリアランスは大きく、接触していませんね。つまり、冷却効率はいまいちってはずです。

 クランクケースとの合わせ面も結構歪んでいることがあります。こうなると旋盤で切削し直してから、厚いガスケットをかませるしかありません。「旋盤で切削し直し」なんて簡単に言いますが、実際にはそのためにおおきなブロックから削りだしたやといが必要ですし、センタ出しという作業がこれまた面倒なんです。

 やったのはボールベアリングの交換、変形面の修正、取り付けラグ面のフライス加工、ピストンの製作、ヘッド部の再切削など、数え切れない程の種類です。そうそう、トミーバーまで作りましたね。

 こちらはD−1型のテストランです。スロットルがなかったので、2ニードルの穴を利用してバタフライバルブをつけました。これがあまり効かなくてねえ。

 使用しているプロップは、YOSHIOKAの9×5.5。このサイズだと元気な回転数になり、クランクシャフトの折損が怖いです。トミーバーは締め込んでいませんけどね。

 ENYA15Dは1型も2型も、シリンダー内面にハードクロームメッキがかけられています。耐久性と高性能はあたりまえなわけです。

  ついでにピストンの形状です。左写真の左側が純正品、一見肉厚が厚いように見えますが、スカート部の方は薄いので、切り欠きの分の重量バランスをとっているみたいですね。偏心切削って、手間がかかるのですががんばっていたのですね。

 右側の写真は私が製作したピストンです。動作振動を最小にとどめるために軽量化しました。もちろんピストンピンのホルダー部とピストントップの寸法は変えていません。ディーゼルの圧縮ってすごいですからね。

 

(2009年3月7日)