フライングマシン
 現存する貴重な写真ですね。左写真は友人のHELIDOGさんからの提供です。(その他の写真は、HINESS工場にて最近撮影したものです。)機体はHINESSがリリースした「フライングマシン」。日本における、初期のRCヘリコプターです。設計は真田彰さん、エンジンを含めた全てが彼の手作りになります。

 やぐらのように組まれたメインマストエリアの中に、ミッションユニットも入っているのですが、金属加工だけで強度と精度を確保しようとしています。

 ボディカウルは無く、「素材」の様な機体ですが、振動の少ない水平対向二気筒エンジンや始動用プルスターターの採用など、真田さんのアイデアはたくさん詰まっているようです。

 1973年頃に発売され、完成機として200機ほどが市場に流れました。

 エンジンはアルミブロックからの切削加工品で、純アルミに近い材質みたいですね、後にリリースされる飛行機用の44Tよりも柔らかい材質でした。
 放熱を考慮した結果とおぼしき、後付けの冷却フィン。「空冷用のファンでもあれば」と思うのは、当時としては贅沢かなあ。
 しかし、メカや燃料タンクはどこに配置されるのか、専用のエリアが見あたりません。当時開発に携わった方の証言では、エンジンの上に台を設けてタンクを載せ、サーボ類はやぐらの下に両面テープで固定していたそうです。

 HINESSを立ち上げるまで、真田さんは模型飛行機に携わったことがありませんでした。カルト社のヒューイコブラのミッションユニットの注文を受け、それをきっかけに生産されたのが、このフライングマシンです。

 ローターは可変ピッチと書いてありました、これはテールローターだけだと思っていましたが、HINESSの工場で現物を確認したらメインローターも可変でした。
 テールユニットと同様の可変ユニットなのですが、スリットの入ったボードと、そこを走るピンの位置によってローターがねじれます。
 TOPの写真は工場に現存する試作品です。
 製造業でなくても、始めて未知の分野に飛び込んだ場合、なにから手を付けて良いか分からないのが実際です。その部品の存在理由や特性・必要性能を把握し、他の部品との相互関係を模索し、構造や寸法・材質を検討しなければいけません。ビスの配置一つだって、「どんな大きさのビスをどの間隔で」と、考え出したらきりがありません。皆さんなら、強度計算しますか?設計図をきちんと引きますか?

 私なら・・・・すぐに謝りますね。

 やっぱり「ものづくり職人」って、すごいです。

 ちなみに、このフライングマシンはちゃんと飛行しているそうです。そして当時、お客様からのレポートも写真入りで届いていたと言うことです。

(2008年8月16日)