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新星の光度変化
新星の光度変化 (作成中)
今村 和義
★ 新星はどのような光度変化をするのだろう?
宇宙の激しい活動現象の一つである新星は、観測を行ってみると実に様々な特徴(個性)を示すことが知られています
(観測的な共通点は後の「新星の分類」で述べます)。極大光度からの減光が速かったり、
あるいは減光が遅かったり、さらに何回も再増光を示したり、
新星は明るくなった後いったいどのような変化を辿りもとの明るさに戻っていくのでしょうか。
これは天文学者であっても予測することは難しいのですが、言い換えれば明日、明後日、一週間後、一ヶ月後に
何が起こるかは観測してみないとわからないという大変エキサイティングな分野だとも言えます
(このことは新星に限らず変光星全般に言えることでもあります)。
ここでは主に新星の光度変化の特徴について解説していきます。
新星の光度変化は一般に下図のような変化を示すことが知られています。
(先にも述べたように、この模式図の通りに明るさが変化するとは限りません。
はたしているか座新星はどのような光度変化をするのでしょうか?極大の時期は過ぎていますが、
今後の光度変化も目が離せないと言えるでしょう。)
(1) 増光初期(initial rise):
数時間から数十時間程度という継続時間で急激に明るくなります。そのため新星として発見された時には
(特に変動が速い新星は)既にこの期間を過ぎていることが多く、合わせてスペクトルの観測例も少ないです。
これはいかに広く夜空を監視(サーベイ観測)していようとも、新星がいつどこで爆発するのかわからない点や、
サーベイ観測が季節や天候にも左右される点を踏まえれば仕方のないことだと言えます。
しかし近年、世界中でサーベイ観測を行う天文台(主な目的は新星を検出することではありませんが)、
加えて新天体捜索家が増えているので、今後は「増光初期」の観測例が増えていくことが期待されます。
さらに国際天文学連合(IAU)が運営している2011年にリニューアルされた
TOCP (Transient Objects Confirmation Page)
という新天体の発見情報をいち早く投稿・閲覧できるウェブページの存在も、増光初期を観測する上で大いに役立つでしょう。
(2) 極大前の停滞期(pre-maximum halt):
新星は先ほどの増光初期から一気に明るくなった後、極大光度に達する数時間から数日前に増光が停滞する期間があります。
この期間も増光初期と同じように、特に光度変化の速い新星で検出されることは珍しいです
(近年、太陽を監視している衛星が偶然にも変動の速い新星の停滞期を詳細に検出した例が幾つかあります;
Hounsell 他 2010 )。
一方で、光度変化の遅い新星だと停滞期の観測例が比較的多くあります
(V723 Cas や V5558 Sgr などが有名です)。
(3) 最後の増光期(final rise):
停滞期を経た新星は極大に向けて最後の増光を示します。
この度発見された “いるか座新星” の光度曲線を見てみると、
極大だと考えられる8月16〜17日より以前に「最後の増光期」と思われるような部分が観測されています。
この期間が観測されていれば極大日と極大等級を正確に求めることができます。
この二つの情報は新星の“距離” を推定する上で役立ちます。
(4) 減光初期 (early decline):
極大光度に達した新星はここから緩やかに減光していきます。
ただし極大からの減光スピードは冒頭でも述べたように新星によって異なります。
極大からわずか三日で3等暗くなるような速い新星もいれば、
極大から百日もかけてやっと3等暗くなる遅い新星もいます。
さらにこの時期が観測されていれば、新星の減光スピードを求めて「極大の絶対等級 vs. 減光スピード」(MMRD) という
経験的な法則をもちいて新星の絶対等級を推定することができ、先にも述べた距離を求める話に繋がります。
なお新星の減光スピードや MMRD については後の「新星の分類」、「新星の距離を求める」で解説します。
いるか座新星の場合、2013年8月下旬から9月初旬が正にこの「減光初期」にあたる時期だと言えるでしょう。
(5) トランジション・フェーズ (transition phase):
このトランジション・フェーズは必ずしも起こる現象ではなく、何事も無く滑らかに減光していく新星もいれば、
図の赤破線のように深い減光のあと復光したり、あるいは図の青破線のようにまるで正弦波のような振動を示す場合もあります。
まさにこの時期の振る舞いも新星の個性と言える様な要素の一つになるでしょう
(赤破線の振る舞いについては後程解説します)。
はたして、いるか座新星では赤破線や青破線のような変動が見られるでしょうか?!
こればかりは、この先観測を継続してみないとわかりませんね。
(6) 減光終期 (final decline):
この減光終期となると、間も無く新星はもとの明るさ(静穏期)に戻ります。
ところで、いるか座新星の観測位置にはガイド・スター・カタログ 2.3.2 という星表に約17等の星が記載されています。
この約17等の星がいるか座新星の爆発前の姿だとすれば、新星は新しい星が生まれたわけではなく、
普段は大変暗い星の大増光だということがおわかり頂けると思います。
いるか座新星の極大は約4等台にまで明るくなったわけですが、
もとの明るさに戻るにははたしてどれだけの時間を要するのでしょうか。
この減光終期まで観測を続けるには、口径の大きな望遠鏡やテクニック
(暗い星を見る秘訣)
も必要ですが、お手持ちの機材で何等まで見えるのかという限界 (性能をフルに活かすこと) に
挑戦するのも新星をはじめとする変光星観測の醍醐味と言えるでしょう。
★ 様々な光度変化をする新星たち
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