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新星爆発のしくみ(作成中)

今村 和義

★ 新星爆発のしくみ
 1960年代に新星の正体が白色矮星と赤色星から成る近接連星であることが解明される一方で、新星がどのような仕組みで爆発するのかを解明するには、さらに十数年の時が必要でした。なぜ新星は突然1万〜10万倍も明るくなるのでしょう。その膨大なエネルギーは何が原因で放出されるのでしょうか。

 現代の天文学において新星爆発は、水素の核融合反応が "白色矮星の表面" で暴走すること(熱核暴走反応; thermonuclear runaway)によって生じると考えられています。こう言ってしまうと天文学に親しみがある方なら、少し違和感を覚えるかもしれません。白色矮星という天体は太陽のような星が核融合反応に必要な燃料(主に水素)を全て使い切り、地球くらいのサイズにまで収縮してしまった星です(つまり星の燃え尽きた芯のようなものです)。そのため白色矮星には核融合反応に必要な燃料が存在していないことになります。では新星爆発に必要な燃料(水素)はどこからやってくるのでしょう?

 新星は激変星の一種(近接連星系)です。このような系では主星の白色矮星に向かって伴星の赤色星から内部ラグランジュ点を通って水素ガスが流入していきます(これを質量移動あるいは質量輸送と言います)。しかし流れ込んだガスは白色矮星にいきなり供給されるわけではなく、 "降着円盤" というものが白色矮星の周囲に形成されます(土星の環をイメージすると良いですが、降着円盤は土星の環のように岩石などではなくガスで構成されています)。この降着円盤を通して少しずつ白色矮星の表面に新鮮な水素ガスが降り積もり、新星爆発に必要な燃料が供給されることになるわけです。

 ところで白色矮星は先にも述べたように、太陽のような星が進化して地球くらいのサイズにまで収縮した大変コンパクトな天体です。そのため表面重力は地球に比べて猛烈に強く (1cc の水が1トンに達するような重力)、電子は縮体し天体を形成する物質は縮退圧によって支えられています。このような環境下に降り積もるガスは強力な表面重力によってどんどん押し潰され、次第に温度も上昇していき核反応に必要な条件が作り出されます。

 ちなみに太陽のような星の中心でも水素の核融合反応が起こっているわけですが、どうして暴走せずに安定して燃え続けられるのでしょうか。もし星の中心で温度が上昇すると核反応によるエネルギー生成率が増大し、その結果として温度が上昇します。すると圧力が高くなるので、星内部の力の釣り合いが崩れてしまい内部が膨張します。この膨張によって圧力が低下して温度を下げる仕組みが働きます。こうして温度が一定に保たれ、核融合反応が安定して起こることが出来るわけです。しかし、白色矮星の環境下では縮退圧という特別な力で物質を支えているため、圧力は密度のみで決まってしまいます(つまり圧力が温度に依存しない)。そのため、ひとたび白色矮星の表面で核融合反応が起こると温度を下げるメカニズムが働かず、温度はみるみる上昇していくことになります。さらに核反応率は温度に敏感に依存するため、核融合反応は暴走の一途を辿ってしまうのです。

さて、この過程を最初にモデル化し数値計算を行ったのがドイツのGiannoneとWeigert(1967)でした。ところが当時はコンピューターによる計算技術の問題もあり、核反応が暴走的に起こる過程を途中段階までしか再現できませんでした。その後コンピューターの発展に伴い、1970年代後半にアメリカのスターフィールドたちによって、白色矮星表面における水素の熱核暴走反応が新星爆発に至るまでの過程を計算することに成功し、現在新星爆発の仕組みとして広く受け入れられています。

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