義兄と私 ―Introduction―

跡部景吾 

私立 氷帝学園中等部3年

200人はいるらしい男子テニス部(人数多すぎ)の部長
テニスの実力は全国レベル。

ご多分にもれず容姿端麗、成績優秀。

でも性格は最悪。

…これが私の義兄(アニキ)だ。



何故だかは知らんが義兄殿は放課後、私を待たせるのがお好きである。
今日も彼は私に「俺が部活を終えるまで待っていろ」と人の都合はお構いなしで命令した。

一応言っておくが私は断った。義兄の部活は滅茶苦茶遅く終わるのに
そんな長い時間待つなんて無駄なことはしたくない、と。
しかし義兄は言った。

「俺が待て、つってんだから待ってろ。いいな。」

そしてそのまま人の抗議なぞ聴こうともせずスタスタと去ってしまわれたのだ。

何て自分勝手な奴。
本当はすっぽかしてやりたいのだがそんなことをすると
家に帰ってからブツブツとうざったいくらいの文句を食らってしまう。

そればっかは御免こうむりたいので今、私はくそ広いテニスコートの
観客席の片隅で、膝に宿題のノートを広げて義兄を待っている。

その珍妙な姿に周りにいた女子生徒たちがコソコソと陰口を叩くが
一睨みしてやると一遍で静かになる。

…うるさい奴らめ。

私は宿題をしながらコートで野郎共が懸命に練習に励んでいる姿を眺めた。
するといきなり背後で殺されかかってんのか、と言いたくなるような凄い悲鳴が
上がった。
間違いなく75デジベル以上の騒音公害だ、環境庁に訴えてやりたい。

そして

「跡部様ーーーーーーーーーー☆☆☆!!」

彼女らの口からこう聞こえた時、私はノートとシャーペンを取り落としながら
ゆっくりと横にぶっ倒れていった。

……………。何も知らないって幸せだよな。



「行くぜ、樺地。」
「ウス。」

義兄は傍らの大柄…どころか巨大と言える後輩に声をかけた。
散々待たせておいて私には一言も言わない。
待っててくれて有り難うなんて言葉はおろか、行くぜとも言わない。

くそぉ、本当に勝手な奴だ。やかましく抗議してやる。人を振り回しやがって。
やいこら、聞いてっか、景吾!!

「あんだ、。さっきから膨れっ面でジロジロ人の顔見やがって。」
「別に、何でもあらへん。」
「見とれてたのか?」

どうやったらそんな都合のいい解釈が出来るんですか、お義兄様(おにいさま)…。

私が答えないでいると義兄は何を思ったのかニヤリ、と笑った。

「全くお前は幸せもんだな、。」

 どこが。

「何たって、この俺様の義妹(いもうと)なんだからな。」

たちまち私の目の前が真っ暗になり、足元がグラついた。

あぁ、こんなのが…こんなのが義兄だなんて…!!

切ねぇ。

皆さん、どーかこれから聞いてやってください。
私とこの素敵にうぬぼれの強い義兄の生活を…。

To be continued...




作者の後書き(戯言とも言う)

撃鉄シグ初の跡部夢小説です。 
しょっぱなから跡部少年、ボロクソです。しかも続きます。
でも大丈夫、だんだん変わってきます。

そもそも撃鉄は跡部少年に特に執着してなかったのですが
私が書いたらどうなるかなぁと思って挑戦してみました。

で、跡部少年を始めからプラスにとらえている作品は他所のサイトさんで
いっぱいいいものがあるので私は趣向を変えて少し批判的に、
でもどこか日常的でのんきな視点で彼をとらえようと始めたのがこのシリーズです。

しかし、跡部少年で「日常的」「のんき」ってのは難しい…(泣)

こんなヘボ作品でも読み続けていただければ幸いです。


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