色 彩・・・いろいろ日記

cochineal



2009年 秋物      マフラー
   
たっぷりとしたサイズのマフラー
ピンクや紫のミックスの具合がうまくできたね。
文句の言いようのない色。 好みは別として・・・
昨年の個展で、有名な画家のM氏 「きれいな赤だね」
の一言。とっても嬉しく忘れられない言葉。
何年経っても、いくつになっても褒められることって
嬉しいことなんだね。




2009年 1月25日

これは、染織をしている人なら誰でも知っているコチニール。
メキシコのサボテンに寄生する虫。染料の中ではとっても
高値ですが、その独特の強い赤は魅力的。

ずいぶん染めた。たくさんこの色のマフラー、ネックウェア
を作った。もうやりつくしたという感じでしばらく使っていな
かったけれど、2,3年前注文があり、染色していたのが
色の山の中にある。ものすごい存在感。

紫の次はこの色。懐かしいような感覚が、この虫を抽出する
時の匂いとともによみがえってくる・・・匂いの記憶・・・・

染色の仕事もまたこの体に刻まれているのね。




1月31日

コニチールは15パーセント、ミョウバン媒染でワイン系の赤
2番目の煎じ液でピンクに染色。ここに以前はこだわって
媒染剤を変えて紫に染め、コチニールだけとか言って
作っていたけれど、今回は染めてあった紫2色を使用。
(決して妥協ではない)

何回もやっているので、もうどうなるかは熟知している。
これ以上のこともこれ以下のこともない
繰り返ししてきた仕事。色合いはしっかり記憶されている。
ある意味私にとっては安心した色なのかもしれない。


染色する時、酸を加えるとワイン系の赤に染まる。

インカの織物にも使われてきた古くからの染料。
決して色あせない染料としての優秀さと、昔から伝えられて
きたその染色技術に敬服。

色として完成されているので、今まで教室の生徒さん達も
ずいぶん好んで使った。南米の物を輸入している方に
頼んで仕入れたこともあった。

羊毛を染色すると、ますます色に膨らみと温かさが加わって
いい感じになるのも好まれてきた理由かな。思い出が
フツフツ湧いてくるなーーー。
これは、コニニール専用の乳鉢。
粗くすりつぶしてから煎じると色がよく出ていい。
何せ「虫」。そのままだと煎じてふやけるとその形が現れ
独特の臭いと相まって、ちょっと気持ち悪い。

でも 「あー・・・メキシコあたりのサボテンにくっついていた
ものなんだねー」なんて・・・・・
アンデスの染織が少し身近に感じたりしてしまう。

異国の文化の中で育まれた素朴で素晴らしい織物を見ると
作ってみたい気持ちと同時に、なつかしい気持ちにもなって
しまう。きっと前世も絶対どこかで織りをしていたのよ。
また苦労の人生を選んだのねー。仕方ないか。




2月7日

染色した羊毛や毛糸は、スクラップブックに貼り、染料や
媒染剤のパーセントを記入して記録をとっておく。

ホームスパンの工程で染色は一番初めの仕事

経験が少ない頃はこうした色のサンプルがとっても頼りに
なった。コチニールは色の安定した染料。
裏切ることなくいい色に染まる。

いい色の条件の一つが、この安定ということ。
堅牢で美しい・・・・ありそうでなかなかないもんです。

糸の出来上がり。
迷うことなくマフラーを織ることに。

20代後半から30代前半にかけて、この色のネックウェア
をたくさん作った。冬場の注文もこの色が多く、1日8本
織った思い出がある。前日織り機にセットしておいて、
翌日の午前中4本織り、組織を変えて午後4本織った。
さすが織り終わって、顔をあげたら、目の前が一瞬
真っ暗になった記憶がある。当時師匠の工房ではちょっと
伝説的な話になっていた。
それもこれもこの色の思い出。

さてさて思い出が暖かいうちに織ってしまおう。




5月17日
ずい分時間が経ってしまったけれど、やっとマフラーの織りに
とりかかる。4月はアート・クラフトフリーマーケットという
イベントに参加するための準備に追われ、連休の開催で
忙しく、やっとまたこの仕事に戻ってきたという感じ。

きれいなマフラーに織れている。数年ぶりのコチニールの
マフラーは、懐かしいような新鮮なような、馴染み深いものに。